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俺が出会った中で一番の人格者

 リューネの研究部屋を片付け終えた俺とエクレアは改めて、俺が何故ここに来たのかを思い出した。そう言えば、中央広場に入る許可をもらうためにリューネのお願いを聞くんだったな。


 部屋が奇麗になって、ひと段落したところで本題に入る。


「それで、リューネのお願いってのは?」


「ああ、まずはこれを見てくれ」


 リューネは何かを探すしぐさをするが、どうやら見つからないようだ。俺とエクレアは仕分けしたゴミ袋を見る。あの中に入ってそうな予感がするのだ。


 リューネはゴミ袋を漁り始めて、袋から四角い箱のようなものを取り出した。てか、いらない物を仕分けしたのに必要な物がまだ入ってんじゃねえか。


「これは、何でしょうか?」


「ふふっ、そいつは私が今研究している中で最も熱い物だ。その名も魔導知能だ。そいつは無機物なんだが、人間のような心を持った人格が入っているんだ」


「えっ、それってすげえ事じゃねえか」


 だって、俗に言う人口知能みたいなもんだろ。それの異世界版みたいなもんじゃねえか。ここまで来たか、異世界イリステラ。エクレアはいまいちピンと来ていない様子だ。


「そうだ、これは凄い事なんだよ。こいつは考えて行動する事が出来るんだ。それで、こっからが君達にお願いしたい事なんだが、こいつの名前はココロと言うんだが」


「可愛い名前ですね。リューネさんが考えたんですか?」


「う、うるさいな。いいだろ別に、この子は心があるんだよ。いつもみたいに数字だけで呼ぶのは可哀想じゃないか」


「いえ、いい名前だと思いますよ。私には魔導知能というのが何なのかはわかりませんが、人間のように心があるのならきちんとした名前をつけるべきだと思いますし」


 リューネは真っ直ぐ褒めるエクレアの言動に少し照れくさそうにしていた。心があるから、ココロって名前にしたって所だろうか。安直ですねなんて言えば、話が進みそうにないので俺は黙っておく事にした。


「それで、ココロがどうしたんだ?」


「そう、ココロ何だが元人格というのが最低限必要みたいでね。どちらかの人格をまずは入れてみて欲しいんだ」


「いや、リューネの人格を入れてみればいいじゃねえか」


「自分と喋る相手が自分の口調をしていたら誰だって嫌じゃないかい?」


 元人格ってのはそういう事か。知能の部分は後で学習するようになっていて、喋り方とかを先に入れておくってわけか。まあ、親みたいなもんか。子供も親の喋り方を真似するとこから始めるしな。


「はいっ、私にしましょう。私の人格を入れてください!!」


「はぁ、お前のような奴が二人になるとか悪夢かよ。飯の話しかしなくなっちまうだろうが。ここは間をとって俺にしようぜ」


「えっ、私を虐めるために生まれてきたような、性格がひん曲がっているアリマの性格を入れるなんて可哀想ですよ。ココロにも心があるんですよ、自分の元がアリマだと知ったら耐えられない可能性があります」


「そこまで言うか!?!?」


「いや、私としてはどっちでも構わないのだが、別に君達二人のどちらかではなくとも記憶の中にいる人物にも出来るみたいだよ」


 歪みあっている俺とエクレアは顔を見合わせた。記憶の中の人物か、リュカは何か俺に対して特別な感情を向けてきそうだからやだし。マリカとかも何だかんだで腹黒そうなんだよなぁ。エクレアが最適って事になるのか、もうちょっと可愛らしさが欲しいよな。うーん、あっ!!


「コボでいいんじゃね」


「それが一番マシですかね」


 と言う事でコボを元人格に満場一致で入れる事に決まった。とりあえず、俺の頭の中でその人物を浮かべて置いた状態で箱を起動してくれと言われたので、コボを思い浮かべて。起動すると、箱が宙に浮いた。真ん中の宝石のような場所が光輝いている。


「こんにちわ。僕の名前はココロって言うんだ、よろしくね!!」


「うん、少し子供っぽい気がするがこれぐらいの方が愛嬌があっていいかもしれないね」


 リューネも起動まで不安がっていたが、満足してくれた様子であった。エクレアが箱を抱えながら、ココロに話しかけている。どうやら、コボを元人格にしたおかげで好奇心が旺盛なようだ。


「うんうん、それでそのまま申し訳ないんだ。ココロに外の世界を見せてきてあげてくれないか?」


「いいのか、俺が言うのも何だが結構やばい情報じゃないか? あんまり外に持ち出さない方がいいんじゃねえの」


 もし、リューネがこの魔導知能を作り上げたのだとしたら、確実に大きな成果となるだろう。


「本来ならそうかもしれないが、今はこの研究所の方がココロにとって危険かもしれないんだ」


「危険ってのはあんまり深く聞かない方が良さそうか?」


「そうだね。そっちの身の安全を確保する為にも聞かない方がいいかもしれないね」


「んじゃ、細かくは聞かねえ。とにかく、ココロに学習させてくればいいわけだな」


「ああ、話が早くて助かるよ。許可証は君達が帰ってくるまでに作っておくよ。ココロと魔導都市を一周してきてくれたまえ」


「りょーかい」


 俺がリューネと話を終えて、ずっとココロと会話をしているエクレアに近づく。


「あ、来ましたよ。さあ、ココロあの人はなんて言うんですか?」


「ロクデナシ!!」


「無垢な子供に何を教えてんだ!!」


 こいつ、俺がいない間にココロにしょうもない教育を施してやがった。なんかにこやかにお喋りしてるなって思ったらこれだよ。


「ココロ、あのお姉ちゃんはなんて言うんだ?」


「エクレア!!」


「違う違う、あれはねデブって言うんだよ。人が太ったって言ってるのに、バクバク食べるのをやめない愚か者の姿だぞ」


「うん、わかった。デブ!!」


「ぶっとばしますよ!?!?」


 当然だが、矛先はココロではなく俺である。俺は机を盾にして、ぐるぐると回り続けて、エクレアの猛攻を止める。


「じゃあ、二人の意見を足してデブレアでどうかな、どうかな」


「コボの感じで暴言吐かれるのは思ったより心に来ます」


「ココロだけに?」


「うるさいですよ!!」


「おーい、痴話喧嘩してないで早く行ってくれたまえ」


「「してない!!」」


 とりあえず、ココロに自分達の教えた名前を矯正させる所からスタートした。しかし、魔導知能に一度覚えた言葉を直させるのは中々に難しかった。俺とエクレアはきちんとした言葉を教える事を心に誓うのであった。

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