やってしまった
ベッドの上。鳥の鳴き声で目が覚めた。これが朝チュンって奴か。まじかよ、完全にやっちまったよ。
これから、ほんとの最終決戦だってのに勢いに身を任せてしまった。俺は自分の横を見ると、気持ちよさそうに裸で寝ているであろうエクレア。布団で裸かどうかは見えないが、不思議と裸かどうかは知っているのだ。
俺は黙って布団を出て顔を洗った。すげぇ、気持ちいい。
「昨夜はお楽しみだったね」
「うるせえ!! なんで知ってんだ!!」
振り向くとネストが立っていた。迎えに来ると言っていたが、来るのが早すぎやしないか。てか、俺のしてるとこ見て楽しむのは性格が悪くないか。俺の周りは性格が悪い女しかいないのか?
「ちなみに、見てはいないよ。想像で言っただけさ。それに、性格の悪い男には性格の悪い女が集まるもんだよ。よかったじゃないか、エクレア君が性格良くて」
「へいへい、こんな朝っぱらからお迎えご苦労さん。もう、行く必要性があるのか?」
「そうだね。色々あって、今が一番いいタイミングだと僕は思うよ」
お前がそう言うのならそうなんだろうな。なんだか、不思議な信頼感がある。決していい物ではないと思うがな。
「よし、んじゃ行くか」
「おいおい、エクレア君に挨拶ぐらいして言った方がいいんじゃないかい?」
ネストは宿の方を指差した。
「いや、いい。決心が鈍るかもしれん。次に会う時が来るのなら、本当に平和な世界になった後にでもするよ」
「アリマ君がそういうのなら僕は何も言うまい。さあ、一名様ご案内」
俺はネストが作り出した空間の歪に入って行く。ネストはついてこない。それは別にいい。ここまで長い間持たせてくれていた。感謝しかねえ。
目を開ける。
俺は円形の島に立っていた。周りにはこの島以外に何もない。本当に何もないのだ。俺の立っているこの島は浮いており、これ以外の島は存在しない。
空は様々な色に変化している。ふーん、これが別世界か。なんか住みにくそうだな。目の前に目をやると、一人の男が立っていた。
「おせぇ!! あの女はいつまで待たせりゃ気がすむんだ。それで、お前があいつの言っていた、イリステラの代わりって事でいいんだな」
「……以外だな」
「なにがだ?」
「ちゃんと言葉が通じるんだなって」
もっと高圧的で話にならない奴とか、とんでもねえ化物とかが相手かと思った。ちゃんと人型ってだけでも、少し驚いたくらいだ。
「イリステラも人の姿だっただろう」
「それもそうか、話が出来るのなら聞きたいんだが。ここはどこだ?」
「ここは次元の狭間。それぞれの世界を繋ぐ、通り道って所だな。ここはどこにも属さないから、俺達にとっては都合がいいのさ。お互いの持っている世界じゃ、持ち主が有利だからな」
「持っている世界?」
「おいおい、イリステラから何も聞いてねえのか」
なにも聞いていないに決まってんだろ。この力を急に渡されて、後は全部頼んだぞって投げつけられたんだぞ。それから、約束通り魔王を倒して。お前らの存在を知って、今ここにいるんだよ。
「俺は優男だから教えてやんよ。メイカーズはそれぞれの番号があり、一つの世界を持ってんだ。おっと、俺はお前を知っているが、お前は俺を知らなかったな。改めまして、俺はメイカーズⅦ『滅殺』の超越神ルシファーだ。短い間だがよろしく」
気楽挨拶してきた。最後の相手なのに軽いったらありゃしねえ。メイカーズは組織の名前で、Ⅶってのは数字。あー、こりゃ最大で何人いるのかなんて聞きたくねえな。
名前は物騒。そして、ルシファーという見た目じゃねえ。この男はどちらかというとラテン系な感じ。ルシファーって感じはしない。まあ、偽名だな。
「色々聞きてえ事はあるが、とりあえずイリステラは何番だ?」
「Ⅻ『転生』の超越神イリステラ。イリステラが最後に加入した。これが、最後の番号だ」
うげー、こんなのが十二人もいるってことかよ。めっちゃ吐きそうになってきた。じゃあ、俺がいる異世界イリステラみたいなの含めて、他に十一個存在するって事か。
「リーダー入れて十二人? てか、リーダーみたいな役割の奴いるのか?」
「いや、いれねえな。リーダーは格がちげえ。なんせ、俺達に力をくれたのがお前の言うリーダーだからな」
そういう感じか。まっ、細かい所はどうでもいいだろう。俺には関係がねえし。勝手によそでやってくれって感じだ。俺の目的はたった一つしかねえ。
「なあ、俺の世界にちょっかいかけねえって、約束するなら見逃してやってもいいぜ。このまま去るのなら、これ以上深追いもしねえし興味ねえんだ」
「そりゃ無理だな。俺達のリーダーは大層お怒りだ。イリステラを消せと言っているからな」
「イリステラはなにをしちまったんだか」
「そうだな、知る権利はあるか。まっ、細かな話をするのなら弔い合戦も含めている。ある男とイリステラに、マレニアというメンバーを消されてな。大層ご立腹なのよ」
なんか、理由が普通だな。もっと神様を名乗っているのだから、世界を浄化とか訳の分からない目的でもあるもんだと思っていた。凄い普通だ。
簡単に言えば、仲間を殺されたからやり返しに来ましたよって事だろ。
「いいね。俺にもわかりやすい理由で助かるよ。本当に良かった、俺でも理解できる理由でさ」
「だろ、だからお前が死んでくれると助かるんだがな」
俺はイリステラの力を引き継いでいる。今はイリステラ=俺の図式が成り立っている。つまり、俺が死ねば異世界イリステラは消える事になるわけだ。
それはちょっと駄目だよなぁ。
「そりゃ、無理な相談だな。俺は結構あの世界を気にいってるし」
「だよなぁ、俺も本当はこんな事をしたくないんだぜ。だが、上から言われたらやるしかねえのよ。んで、創世の箱は持ってきたか?」
「指定されたから持ってきてやったぞ」
ネストから事前に言われていたからな。俺は運命の塔に置かれていた創世の箱を取り出した。これが壊れても駄目なんだよな。駄目な事が多すぎやしねえか。
「よしよし、そんじゃあ勝敗は箱の破壊だな」
「後はどちらかの死って所か?」
「んっ、俺達は死んでも箱に戻るぞ。まあ、死んだら箱に戻って無防備だから死んだも同然だが……」
あのポンコツ女神!! どうして、いつもちょっと言葉が足らないんだよ。まあいい、条件は変わってない。俺が勝つには箱かこいつを殺すかのどっちかだ。
むしろ、俺が勝てた時の展開を考えれば、箱に戻せるという情報はアドでしかないはず。よし、大丈夫だ。勝利のリズムは変わらねえ。
「もう一回だけ聞くぞ。俺はお前らの組織には微塵も興味がねえ。この世界になにもしないなら追わないし、記憶からもどうでもいい事として消す」
「一番上が怒ってんだよ。それに、俺には恩義もある。戦いは避けられねえって事だ」
「あっ、ちなみに。俺みたいな事象は見た事があるか?」
「力を受け渡してみたいなケースか? そりゃ、お前が初めてだが……それがどうかしたのか?」
いや、それが聞ければいい。これで俺の勝ちは揺るぎのない物となった。
技名出しとくか。レンから技名の大事さは教わったからな。別に構えとかいらねえだろうけど、一応とっておくとするか。
俺は両手で四角を作る。
「無限転生」




