最後の日になにをする?
したい事があるとか言った。すまんが、あれは嘘なんだ。嫌な事に対する引き延ばし行為みたいなもん。ちょっと休憩すれば気持ちが切り替わるかなと思った。
まあ、救世主なんだから一日ぐらい休みを貰ってもいいよな?
それで、最後の日で何をすればいいのか。特に何も考えずに歩いていたら、火の大地にある王都まで戻ってきてしまった。実家じゃなくて何でここなんだと自分でも思った。
でも、不思議と足は止まらない。俺はイリステラ教の教会へとたどり着いた。普段だったら絶対に中まで入らないのだが、ここにはとある人物がいるのを知っていた。
きっと、そいつに会いたかったから教会まで歩いてきたんだと思った。今は昼過ぎくらいだ。まだ、明日までは時間がある。
「よお、エクレア」
「……魔王と戦っていた時にいなかった人ではありませんか」
「すまんな。途中で飽きて帰ったわ」
「嘘ですって!! 武器を届けに来たのをちゃんと気づいてましたから。拗ねないでくださいね」
「拗ねとらんわ!!」
そう、どうやら俺はエクレアに会いに来たみたいなんだよな。エクレアの顔を見てわかった。俺が今一番したい事をな。
「それで、どうかしましたか? アリマから会いに来るのって珍しくありませんか」
「いや、そんな事はねえだろ。……あるわ。まあ、そんな事はどうでもいいんだよ。エクレア、よかったら、今から俺とデート行くか」
「ほえっ!?」
鳩が豆鉄砲を食ったかのような顔をするエクレア。どうやら、俺からこんな事を言い出すのが珍しいと感じたようだな。そうだな、だいぶ珍しい事を自分がしている自覚はある。
「ああ、でも、お前は忙しいか。なら、いいが……」
「ちょ、ちょっと待ってください!! す、すぐに、すぐに戻りますから!!」
エクレアは今まで見た事がない速度で移動を開始。待っていろと言われたから待っていると、少ししてエクレアが戻ってきた。
「いや、忙しいならいいんだぞ」
「いえ、今日は完全に暇になりました」
「無理矢理暇にしてないか?」
「最初からずっと今日は暇でした。ささっ、どこに行きましょうか? どこでもいいですよ。ささっ、どこに行きましょうか?」
二回も同じことを言った。どうやら、俺から誘った事が嬉しかった様子。そんなに喜ばれるとこちらも嬉しくなるな。
「夜はしたい事があるから、昼は適当でもいいんだけど。とりあえず、飯食っていくか。どうせ、食べてないんだろう」
「はい!!」
聖女活動で碌に飯を食べていないだろう。飯屋へと移動中。俺は死ぬ程見たくない建造物を見つけた。それは王都に新しく建てられる銅像だ。
勇者パーティー。まあ、ここまではわかる。世界を救ったわけだし、未来にまで語り継いで言った方がいいと思うしな。俺も賛成だ。
その隣に見覚えのある憎たらしい顔の銅像を建てようとしてのだ。今まさに、建てていると言った様子だ。
「おおっ、アリマの銅像も建ちますよ。見てください、あのやる気のなさそうな顔を。アリマにそっくりでびっくりですよね」
「俺だと思わないようにしていたんだけど、やっぱ俺かぁ。いやぁ、自分の銅像とか寒気がするわ。てか、今現在進行形でしてる」
エクレアと飯を食べる為に向かっている場所。この銅像の広場が通り道なのだ。なので、仕方なく通るわけだが。下を通り抜けようとした時だ。
いつものモブ騎士達が俺の銅像を引っ張っている。
「絶対駄目っすよ。ここで力を抜いたら、兄貴の銅像が壊れちまう。ここは騎士団全員の力を使う時!!」
「「「「「オッス!!!!」」」」」
騎士団は暇なのか? こんなしょうもない銅像作って。てか、著作権侵害で訴えてやろうか。まあ、そんな法律この世界にはねえけどさ。
あっ、いい事思いついた。
俺は元盗賊の騎士を転ばせてやった。当然、銅像はバランスを崩して地面に倒れる。ぶっ壊れてしまった。いやぁ、丁度立たせようとしている時にこれてよかったわ。
「「「「「兄貴!! なんてことするんすか!!」」」」」
「人の銅像を勝手に建てようとしてっからだろ」
俺とエクレアはそのまま離れる。
「もう、アリマは照れ屋なんですから。銅像くらい、いいじゃないですか」
「これから王都に入るたびに自分の顔があるとか罰ゲームだろ。あっ、罰ゲームで思い出したけど、お前にお仕置きしなくちゃ」
「お腹がすきすぎて倒れてしまいそうです。早く行きましょう!!」
「調子がいいな」
という事で腹ごしらえをした。王都でする事と言えば、王都でする事と言えばぁ、ないんですねえこれが。この世界の娯楽はほとんど発展していない。カジノとかは裏営業みたいな扱いだし。
店を見てまわるか、外で景色見るかのどっちかしかないのだ。そして、どっちをしても時間が余るんですねえ。そんなに時間のかかる事じゃねえからな。
という事で雑貨屋。女は店を見るのが好きだと、俺の中で勝手に想像していたが、エクレアもやはり女性なので好きな様子。
「なんかお揃いの物を買いましょうよ」
「持ってなかったか?」
「持ってないですよ!! 記憶を改ざんしないでください!!」
そういやお揃いの物とか持ってなかったか。
「じゃじゃーーん、これなんてどうでしょうか?」
エクレアが持ってきたのはよーわからん人形だ。これはなんて生物なんだろうか。四足歩行というのはわかるんだが、なんか顔がだるそうだ。
俺の知らない生物がこの世界にはまだいるようだな。
「随分と前衛的な生物だな。これはなんて生き物なんだ?」
「犬ですよ!! どう見ても犬じゃないですか!!」
「犬!? この、生物は犬だったのか!?」
「失礼ですね!! これは、なんとなくで私が書いた犬です!! イリステラ教会のマスコットとして、商品化してもらったんですよ!!」
「凄い、玄関に置いておいたら魔除けとかになりそう」
「馬鹿にしてますよね?」
という事で、お揃いの犬の人形を買った。買ったというか押し付けられたともいう。さて、お次は景色だが王都の中を見てもしょうがないので、外へ少し出て散策をする事にした。
「うーーん、空気が美味しいですね」
「ついに空気まで食べるようになっちまったか」
「たとえですよ!? た・と・え!! いくら私でも空気は食べませんて!!」
「わかってるよ」
ちょっと沈黙。今は体感で三時くらいだろうか。うーん、もう少しだけ時間を潰さないと誘うにも誘えないんだが。この風が気持ちい草原で時間を潰すしかないんか。
「それで、急にデート何て誘ってどうしたんですか?」
「いや、たまにはそういう気分になる事もあるんだよ」
「いえ、ありえませんね。アリマが決まっておかしな行動をとる時は、私に後ろめたい事がある時でしょう」
「彼女をデートに誘うのが、そんなにおかしな行動なのか?」
まあ、エクレアに後ろめたい事があるのは合ってるけどさ。最近、俺の様子の変化にいだけは敏感になりやがってよ。
「ささ、早く話した方がいいですよ。わざわざ人のいない場所に移動してあげたんですから」
「……ちょっと明日からここを離れる事になると思う」
「ふーん、どれぐらいですか?」
「それがわかんねんだよな。早く帰るなら帰ってくるつもり」
いつものエクレアの傾向だと、離れたくないと言うのだろうか。
「まあ、いいでしょう。許します。ちゃんと帰ってくるのなら、それ以上は何も言いません」
「ちゃんと帰ってくるって。ここが俺の世界だからな」
「ならよし。おや、そろそろ暗くなってきましたか」
「ほんとだー、暗くなってきたし近くの宿を取るしかないなー」
「なんで棒読みなんですか?」
「偶然、近くの宿を知ってるから行こうぜー」
「なんで棒読みなんですか?」
夜が近くなったので、エクレアを連れてやってきたのは森の奥の小さな宿。わざわざこんな場所まで移動したのには理由があるぞ。
「人がいませんね」
「今日は貸し切りにしておいたからな」
「おおっ、高かったのではないですか」
「俺が持っている金を全て使った」
「全額使ってもする事ですか?」
する事なんだよな。俺は今から一世一代の勝負を仕掛ける。これぐらいの出費は安いもんだよ。
「エクレア、今日は一緒に寝るか」
「はい、今日も一緒に寝ましょうね」
「いや、確かに一緒に寝ていたけど。今日はそういうのじゃねえんだ」
俺はするつもりでここに来たんだよ。まあ、中に入ったら嫌でもわかるだろう。俺とエクレアは夜の静かな宿へと入って行く。




