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勇者VS魔王 最後の戦い

 俺は肩の埃を払う。ちょっと運動したから服に汚れがついちまった。目の前を見る。さっきよりもさらにボロボロで、力なく倒れている魔王の姿そこにはあった。


 えっ、魔王との戦い? こんな一方的な虐殺を見せてもしゃあないだろう。適当に戦って、適当に俺があしらっただけだ。それ以上でも、それ以下でもない。


 血だらけの体で魔王は起き上がった。


「わかった。ようやく理解した。我は魔王。この人を滅ぼす役割を持つ。全て吐き出し、全てを解放する。それが今の我の役割よ……」


 魔王は大きな翼で帰って行く。たくっ、勝手に理解して俺には目もくれず帰って行きやがった。なんだよ、ちょっとぐらいお礼を言ってもいいんだぞ。


 魔王城へと移動して行くのを見守りながら、俺は魔王の城の前で静かに待つ。誰を待っているのかと言われたら、今ここにいない全員だ。


 ようは、リュカ以外のどこにいるのかわからない奴らだ。ちゃんと来るのか不安になる何人かがいるけど、今さら俺が移動して探すわけにはいかない。


 入れ違いになったら余計に面倒だ。暇な時間はとにかく職業ガチャをまわす。ちょっとしたい事があるからな。


 そうして待っていると、杖を地面に突き刺しながらこちらへと向かってくるアリシア・ポートメントの姿見えた。手に持っている杖にはオービタル・デュランダルの精神が入っている。


「な、なんとか、魔王城までついたわ……」


「よお、アリシア。お前が一番乗りだな。他の奴らはどうした?」


「どうしたもこうしたもないわよ!! あいつらと付き合ってると、全然目的地に移動できないのよ!! 特にナハトとグラン!! もぉーっ!! 私はすぐにでも、勇者の手伝いをしに魔王城に向かった方がいいと言ったのに!!」


 なんか、苦労していたのがすぐにわかる。アリシアはこの旅で随分と老けたように見えた。根が真面目だから可哀想だ。


「そいつは大変だったな。うーん、お前は魔法使いって扱いだな。合格だ。今から、勇者パーティーとして魔王城へ行くんだ」


「どういう事よ!?」


「喋る杖のマスコットもいるしな」


『マスコットではない!! 貴様はどうするつもりだ?』


「俺はお前たちのような奴らを導く役目があるからな」


 俺の言葉はを聞くと、アリシアは息を整えて魔王城へと向かっていく。はい、魔術師だけど魔法使い様一名ご案内です。


 その後、次にやってきたのはドラに乗ってきたエクレアだ。どうやら、ドラと合流してそのままこの城まで移動してきた様子。俺を見つけて地面へと降りてくる。


「アリマ、こんな所で何をしているのですか?」


「お前、普通に最終決戦に遅刻だから。えっと、僧侶だな」


「聖女です」


「細かい事はいいんだよ!! お前は僧侶の扱いなんだ!! ほらっ、このカードをやるから、勇者パーティーに合流してこい」


 俺は大聖女のカードを手渡した。


「これさえあれば、魔王から受けた傷を回復する事が出来ます。私も頑張っちゃいますよ!!」


 一個の事しか考えられないエクレアは、魔王城へと突撃していく。まあ、魔王城の玉座へは一本道だし大丈夫だろ。


「お前は俺と一緒にみんなを待つか」


「グルッ!!」


 ドラの頭を撫でつつ残りの数人を待つ。すると、グランがこちらへと向かってくるのがわかる。


(わに)頭!! お前、遅刻にもほどがあるぞ!!」


「いやぁ、わりぃな。ナハトに付き合っていたら、だいぶ遅れちまったよ。オレよりも数倍バーサーカーで驚いちまった。それで、魔王様との戦いはどうなっている?」


「お前は絵面的にいなくちゃいけねえ存在なんだよ。ダッシュで魔王城に進め」


「よくわかんねえが、よっしゃ!! オレに任せておきな!!」


 グランは魔王城へと向かっていく。これで、勇者、魔法使い、僧侶、戦士。かなり見栄えはいいんじゃないだろうか。パーティーメンバーに魔族であるグランがいるのもいい。


 魔王を倒した勇者パーティーとして、魔族が一緒に戦ったという結果が残るのは今後にも大事になってくるだろう。グラン、お前は何も考えてないかもしれんけど、大事な役割があるんだからな。


 さてさて、少し遅れてナハトがやってきた。なにやら、武器を両手に抱えて走ってきた様子。


「ナハトさんは運び屋じゃないんだけど、エンマって人から預かっていた武器を持ってきたよ」


 エンマは風の大地にいた鬼で鍛冶師の男。どうやら、魔王討伐に必要な武器を作ってくれていたようだな。ナハトが持ってきた武器を見た。


 どうやら、斧、僧侶の杖、そして折れたはずの聖剣がもう一本あった。どうやら、魔剣と一緒に聖剣も直していたようだ。


「ふぅ、では早速ナハトさんも楽しませてもらうよ。魔王ってどれだけ強いんだろう。わくわくするね」


「あっ、お前は駄目。勇者、僧侶、魔法使い、戦士で勇者パーティーは揃ったからお前はお留守番な」


「そんな事あるの!? もしかして、四人しか入れない呪いとかが魔王城にあるの!? ナハトさん、驚きなんだけど!!」


 いや、そういうのはないけど。俺の気分でバランスのいいパーティーを作っているだけだぞ。剣士と戦士は似てるから駄目。お前はバランスを壊すから、外で魔族狩りでもしていてくれ。


「残った魔族と遊んでいろ」


「えー、この大地に来てから魔族はほとんど見かけてないよ。見つけ次第、追いかけて斬ってはいるんだけどね。最後の砦にしては、随分と守りは薄いと感じるね」


 どうやら、俺とリュカが道中で魔族と会わなかったのは単純に数が少ないからな様子。これは、魔王が意図的に数を減らしていたのだろうか。


 てか、見つけ次第斬ってるって辻斬りかな。


「そういや、ジークはどうしたんだ?」


「えっと、飛行船を守るから魔王城へは来ないって言ってた」


 あの野郎、最後の最後で上手くさぼりやがった。まあ、来ても竜騎士は戦士と被るから、俺の独断と偏見で魔王城前でお断りだったけどな。


「じゃあ、魔王が死ぬまで暇だし、ナハトさんと戦おうよ」


「思考が人斬りのそれなんだよなぁ。誰がお前と戦うか馬鹿。命がいくつあっても足りねえよ。それにしても意外だな。ナハトは今いる勇者パーティーが魔王に勝てると思ってんだな」


「うーん、ナハトさんの場合どっちでもいいが正解かな。駄目ならナハトさんが倒すから」


 実にナハトらしい思考である。その後、ナハトは武器だけ置いて、魔族を探しに来た道を戻って行った。魔族の諸君は頑張ってナハトから逃げてくれ。


 俺はそこまで面倒見切れんぞ。


 さて、残った武器を見る。実はエンマが武器を作っているのは知っていた。エンマと会った時に魔剣以外にも背負っていたからな。


 だから、俺も用意して来たんだ。


「ハイクラスチェンジ、鍛冶師」


 俺の姿はエンマと瓜二つになる。


 なるほどな、エンマの姿になってわかるがこれはいい武器だ。だが、ちょっと足りないんだよなぁ。その足りないはエンマのせいではない。


 彼は魔王の事は興味もないし、知らないのだろう。ただ、自分が出来る最高の武器を作ったに違いない。ついでに勇者パーティーにあげちゃおうって感じだろうな。


 足りないのは魔力を吸ったり、斬ったりする機能だ。魔王と戦うのなら、最低限欲しい機能である。これぐらいなら俺でも追加出来るだろう。


 エンマが持っている鍛冶師のハンマーで能力を追加。よしっ、出来栄えは知らんけど追加は出来た気がする。初めてにしてはいい出来だと思うんだよな。


「じゃあ、俺の最後の仕事をしますか。魔王城が見える丘の上まで連れて行ってくれよな」


 露骨に嫌そうにするドラ。武器が相当重いらしい。最後ぐらいは主人の命令に従ってくれてもいいんじゃないか。俺も重い物を運ぶの嫌いだけどさ。


 ドラの背中に積んで移動した。


 そして、丘の上で時が来るのを待つ。その時はすぐにやってきた。大きな魔力のうねりを魔王城内部から感じる。魔王城は絶大な魔力の大きさに耐えきれずに崩壊していく。


 中から現れたのは、異形の姿へと変化した魔王だった。あれが第二形態って奴か。最早、人の形など保っていない。完全に異形の化物へとなり果ててしまっている。


 戦っているのは、リュカ、アリシア、エクレア、グラン。うーん、なんてバランスのいいパーティーなんだ。


 魔王は声にならない咆哮をあげる。


「我は『魔力』の王。人を憎み、人を殺す為に生まれた。この憎しみを受け入れる余裕が、お前達にはあるのか。滅びよ、滅びよ、全て灰燼(かいじん)と化すがよい!!」


「大丈夫、僕が貴方の憎しみを削ぎ落します!!」


 リュカと魔王が会話している。何を話しているのかは俺にはわからん。だが、チャンスは今しかないだろう。俺は持ってきた武器を投げ込んだ。


 地面に綺麗に突き刺さる聖剣。リュカは俺の方を見た。見えていないはず、距離としては相当離れている。だが、俺の方を見て笑うと聖剣を引き抜いた。


 おおっ、聖剣と魔剣の二刀流か。エクレアもようやく聖女らしく杖を使う様子だ。グランも斧で二刀流。アリシアは幼馴染の杖があるからいいだろう。


 さて、俺の仕事は終わったし帰るとしますか。ドラの背中へと乗る。だが、ドラは一向に飛び立とうとしない。


「なんだよ、お前も俺に駆けつけて欲しい感じか? いいんだよ、これでさ。みんな役割があるんだ。俺は勇者の幼馴染で、今は女神の代理だ。これが俺の役割なんだよ」


 そうだろ、イリステラ。ちゃんと見ているか? これで、お前が最初に言った目的は達成したぞ。俺はドラの背中から魔王と勇者の戦いを見守る。


 リュカが光と闇を合わせた柱を出現させる。それと同時に俺は見るのもやめた。最初にも言ったはずだ。


「どうせリュカが勝つ。結果が見えてんのにわざわざ見る必要はねえだろ」


 帰る俺の背中からは、魔王の声にもならない咆哮が聞こえる。俺は振り返りもせずに飛行船の方へと向かう。帰る用意しなくちゃいけねえもんな。

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