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思い返してみれば

 俺は魔王城から少し離れた所で腰を下ろした。そして、ゆっくりと目を閉じた。せっかくだから、今までの事を思い出そうと思ってな。いいじゃねえか、俺は最終決戦には参加する気がないけれど、最終決戦前みたいな気分でも。


 思い出すのは前世の事だ。


 と言っても、そんなに思い返せるような思い出なんて持っていないんだけどな。異世界イリステラに来る前。ようは、女神イリステラに転生させられる前だな。


 俺は普通の大学生だった。卒業を近くに控えて、就職は適当に妥協に妥協を重ねて、決めたとこに行くつもりだった。する事がなくなった俺は狂ったのようにある物にはまった。


 そう、所謂ソーシャルゲームって奴だ。今までは賭け麻雀とかはしていたが、こういったスマートフォンでやれる無料ゲームはした事がなかった。


 どうしてそこまでガチャに執着したのか。バイト代もなにもかもをガチャにつぎ込んでいく。今にして思えば正気な沙汰じゃねえ。


「我ながら狂ってるな。ただ……」


 一つわかった事がある。それはこの世界に来なくちゃわからなかった事だ。俺はきっと、刺激が欲しかったんだと思う。


 あの世界にいたら、適当に過ごして、それらしく働いて、ほどほどに金がない日々を過ごしていたと思う。目標とかそういうのは全くない。同じ時間に起きて、同じ時間に家を出て、同じ時間に仕事して、家に同じ時間に帰る日々。


 嫌いではないが、好きでもない日々。だから、ちょっとした刺激が欲しかっただけなんだと思う。異世界イリステラに来てから、刺激が無くなったことはない。どっちかというと楽しかった。


 別に前世がよくなかったわけじゃないぞ。


 ただ、今はこっちの方が守る物があったり、楽しい事が多い。そんだけなんだ。俺が異世界イリステラの方が良い理由なんてそんなもん。


 前世の世界で良い経験をしていたら、元の世界の方がいいなって思って終わりだ。ちょっとした事で、どっちがいいかなんて転んじまうもんだ。


「今はこっちの世界の方が好きだ。俺はイリステラに力を貰ってから、ずっとイリステラが俺に何を求めているのか考えていた。多分だが、俺の役割を大方理解できたと思う。()()()()()()()()()()()()()


 目を開ける。目の前に誰かが迫ってきているのは、魔力の流れで理解していた。だけど、あえて気づいていないふりをしていた。正直、気づいても気づかなくてもどっちでもよさそうだったからな。


 敵意を全く感じなかったから。


 魔王の姿をきちんと見ると随分とボロボロだ。こりゃ、リュカに派手にやられたのがわかる。


「お前のその姿見て、おおよそどっちが勝っているかはすぐにわかった。だが、俺の元に来たのはなにが目的だ?」


「聞きたい事がある」


「気分がいいから聞いてやるよ」


「……力量は我の方がある。それは間違いないと今も考えている。一度攻撃を当てればそれだけ優勢になるはずだ。しかし、勇者には攻撃が当たらない。それ程、前と実力が変わったようには見えん。これは一体どういう事だ?」


「精神的な問題だな。人間てのは不思議な生き物で、気持ちの問題で能力が上がり下がりが凄いんだよ。今の勇者は俺との戦い、そしてお前に好きだという気持ちを伝えた事でのってるからな。そうそう負けないと思うぞ」


 どれだけ実力があっても、気持ちの問題で負けたり勝ったりする。これは心があるから起きる現象だ。心がなければ、平均的な実力を常に発揮することが出来るだろう。


 そしてそれは魔族にも、魔王にも言える事だ。


「お前とリュカは実力差はそうない。だが、リュカは気持ちで能力が上がっている。それにたいして、お前は前に戦った時よりも弱体化している」


「弱体化などしておらん!! 我は常に本気だ!!」


 そんな声を荒げられてもな。そう見えるんだからしょうがねえだろう。


「俺はお前を見て、魔族を見て思った事がある。同じなんだ、人間も魔族も考えることが出来て、誰かを助けようとしたり、自分勝手な事したりする」


「それと我になんの関係が……」


「お前、迷ってるだろ。最初は戦う事と自分の快楽しか考えていなったはず。なんとなく心の中で、人間を滅ぼすのは正しいのかどうか迷ってるんじゃないか?」


「……我もよくわからないのだ。間違いなく人間のへの憎しみはある。あるはずなのだが、それと同時に人間という種への興味もある。人間への憎しみは生まれた際に植え付けられたものだ。では、残りはどうだ? 残りの我の心も植え付けられたものなのか? わからん、どうすれば自分の物であるといえるのか。それを、ずっと一人、魔王城で考えておったわ……」


 なるほど、そんな心の状態ではいい結果は出ないだろう。俺は別に魔王なんざどうなっても構わない。ぶっちゃけ討伐されて終わりでもいいんだ、だが、俺の親友であるリュカが魔王の事を気にしている。


 なら、俺の答えは一つしかない。リュカがそうしたいなら手伝ってやらなくちゃな。


「ようは、気持ちをちゃんと吐き出しきれてねえんだ。吐き出して、吐き出して、吐き出しきって、最後に残った物がお前の心だ」


「だが、心のままに我が力を振るえば。間違えなく、植え付けられた人間への憎しみが大きくなるだろう。今までの我とは比較にならんほどの力で世界を飲み込むぞ」


「あっそ。なら、やってみればいいんじゃねえか。第二形態があるのは魔王の特権だろ。本当に本気を出して、この世界を憎しみで飲み込めるか。負けねえよ、勇者パーティー負けねえ」


「なら、見せてくれんか? 我が暴れてもよい形。世界の神の代理がうぬというのなら、ほんの少しぐらい見せて欲しい。我が自我を失ってもよい所をな」


 えー、なんでこの流れで戦闘態勢なんだよ。俺はやる気ないって言ってんだけどな。しゃあない、やる気はねえけど、相手して欲しいってんなら相手してやるよ。


 俺は職業ガチャを使った。

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