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俺は付き添いに来ただけ

 決着がついた。俺は腰が痛くなったのでゆっくりと腰を下ろした。こういう時にエクレアがいないんだから。お前の唯一の出番なんだよなぁ。


 それにしても、魔王城の前で結構騒いだのに誰も来ねえな。これは魔王は待っていると見て間違いないだろう。魔王城で待っているって言ってたしな。律儀に約束を守ってんだろう。


「そろそろ行こっか」


「そうだな。先に言っておくけど……」


「わかってるよ、魔王とは僕一人で戦う」


 俺が言わなくても、もうわかっているようだ。なら、これ以上は何も言わない。俺は腰が痛いが立ち上がった。まっ、カード使えば治るしな。


「アリマもついてくるの?」


「いや、お前の告白は聞きたいからついてく。聞いたら退散する」


「あっ……」


 どうやら、すっかりと忘れてしまっていた様子。おいおい、俺の中じゃ世界を救うよりも大きなイベントなんだから頼むぜ。しっかりやってくれよな。


「ど、どうしよう、どうするか全く考えてなかった。アリマ、どうしよう!?」


「ほらっ、ぶっつけ本番でいいだろう。お前が行こうって言ったんだぞ。魔王も待っているだろうし、これ以上待たせるのも悪いだろう」


「そ、そんな事言ったって」


 俺はリュカの背中を押しながら魔王城へと入って行く。特にトラップとかない様子。そのまま突き進むといかにもな扉。開けるとそこには玉座に座る魔王がいた。


 どういう方法を使ったのか知らんが、ちゃんと大きな姿に戻っている。まあ、俺達も魔王から受けた傷を完治させたし。お互い様といった所だろう。


「約束通り待っておったぞ。我はこの時をずっと待っていた。本気で最初から戦えるこの時をな!!」


『魔力』の王は玉座から立ち上がる。今すぐにでも戦いたい様子だ。ちょっと待ってくれ、やる気があるのはいいんだがな。まずは他の魔王のように、世界の半分をみたいな余裕を見せてくれ。


「すまん、少し待ってくれ、戦う前に勇者から魔王様に一言あるようなんで」


「確かに、こちらばかりが話をしていたな。世界を滅ぼそうとする因縁の相手だ。話をしたい事もあるのだろう。よかろう、我は待とう」


「ほらっ、話を聞いてくれるって」


 俺は出来るだけお膳立てをした。後はお前次第だぞ。


 リュカはおずおずと前に出た。さっきまで、勇敢に俺と戦っていた人物とは思えない程に狼狽している。だが、魔王様はリュカが喋り出すまで待ってくれている。行け!! そこだ、行け!!


「あ、あの、一目見た時から好きになってしまいました!! ぼ、僕がこの戦いに勝ったらけ、けつこん、結婚を前提にお付き合いをしてください!!」


 この空間に響き渡るような声でいった。


 魔王は言葉を聞いて、まるで時が止まったかのような顔をしている。そして、話の内容をようやく理解したのだろう。ゆっくりと真顔で俺の方を見てきた。


「いや、そんな顔で俺の方を見られても困るぞ。俺は野次馬しにきただけなんでな」


「す、すまん。我も耳が遠くなっていたようでな。勇者の口から結婚などという言葉聞こえて来たと思うてな。まさか、人類の敵に対して求婚をしてくるなどと、夢を見てしまったわ」


 どうやら、勘違いですまそうとしている様子。


「いえ、僕は本気です。答えを」


「えっ、本気とな。我はたくさんの人を殺したぞ? 勇者よ、そんな我と結婚とか正気の沙汰ではないぞ」


 そう言われると確かにそうだ。俺は面白いから何も考えていなかったが、倫理的にはおかしいのか。いや、そんんなの関係なくね。好きなもんは好きだし、嫌いなもんは嫌いなんだから。


「あっ、そういうのは後で考えます。どう認めさせるとか、細かい事はいいんです。僕はやりたいようにやる。そう決めたんです。それでは、答えをお願いします!!」


「どうやら本気のようだな。答えか、そうだな。好意という感情はまだ理解できておらぬが、伴侶の条件としては我よりも強くないとな」


 魔王の魔力の高まりを感じる。


 こいつもどっちかと言えば戦闘狂だからな。前の魔王との戦いも悪意ではなく、純粋に戦闘を楽しんでいただけのように見えた。殺してはいけないを知らなかっただけ。


「シンプルでわかりやくてよかった。ようは、僕が勝てばいいんですね」


 リュカは魔剣を抜いた。


「今回は我も本気。前に負けていた状態では勝負になりもせんぞ」


「前のままのつもりはありませんから」


 なるほど、話はちゃんと決着はついたようだ。それじゃあ、俺は帰ろうとしようかな。


「待て、うぬは何故帰ろうとする?」


 今度は俺が魔王に呼び止められた。えっ、なんでって、面白い所が終わったからだろう。こっからガチンコ勝負すんだから、俺は邪魔でしかない。だって、戦うつもりはないしな。


「魔王と勇者の一対一の勝負だからな」


「ハーーハッハッハッ、笑わせてくれるわ。前に二人がかりで負けたのを忘れてしまったのか?」


「じゃあ、お前がリュカに勝ったら俺が相手してやるよ」


「……いいだろう。すぐに引きづり出してやる」


『魔力』の王は俺に馬鹿にされていると思ったようだ。いや、そんなつもりは一切ない。リュカと戦い、実力を見た。俺は事実しか見ない。リュカが勝てないなら本気で手伝うぞ。


 だから、俺が手伝わないって事はそういう事だ。俺はゆっくりと魔王城から出た。

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