魔の大地に到着
結果だけ言おう。俺達は無事に魔の大地に足を踏み入れる事が出来た。だが、無理をした代償として飛行船は壊れてしまった。これは、魔の大地で魔王を倒したら修復作業をする必要がありそうだ。
ただ、衝撃で何人かの船に乗っていた面子がいなくなってしまった。多分、障壁を抜けた時に外に投げ出されたんだと思う。すげえ衝撃だったからな。
ドラとジークの相棒も、驚いてどっか飛んでいっちまったよ。なんで、最終決戦前に散り散りにならなくちゃいけないんだ。
今はリュカと俺しかいない。飛行船で落とされた俺を上手くキャッチしてくれたのリュカだった。俺はお姫様抱っこで魔の大地に侵入したってわけだ。
「他のみんなは大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。あいつらもガキじゃねえんだし、俺達は魔王城を目指そうぜ」
「そうだよね。大きな目印になりそうな建物は魔王城しかなさそうだし、きっと魔王城に向かうはずだよね」
「それは、どうだろうな?」
魔の大地は植物が生きていない。荒れ果てた荒野となっている。それに、雲に覆われていてずっと暗い。今が朝か夜かもわからん。
見晴らしだけはいい。ただ、リュカの言った通りだ。見える範囲の大きな建物は魔王城しか存在しない。普通の思考なら魔王城を目指そうってなるんだが。
ナハトとかは手当たり次第に魔族を襲っていそうだ。
「しっかし、本当に魔王城以外はなにもないな。魔族達はどうやって暮らしてんだ?」
「なにもないから、僕達が住んでいる大地を侵略しようとしているのかもしれないね」
「自分の住んでいる所が荒れ果てているから。じゃあ、近くの大地を奪っちゃおうって発想な」
ないとは言い切れない。ここ、生き物が住むような環境じゃない。暗いし、野生生物いないし、食べれそうな物もない。村とか集落もない。
あるのは魔王城だけ。
魔王城に近づいてい行くと、俺達の行く手を遮るように魔族が現れる。苦戦するような相手ではもう無い。リュカと適当にあしらいながら進む。
それよりも戦っている時に、もっと気になった事があった。それは、リュカの新しい聖剣だ。もう、なんて言えばいいのだろうか。水の大地で遠くから見ていた時から思っていた。
凄い、邪悪なんだよな。見た目はもう魔剣って感じだ。光というよりも闇の力を使っている感じがするもん。刀身がうねうね動いて気持ち悪いし。
「リュカの新しい聖剣、聖剣なのかそれは?」
「エンマさんに作り直してもらった聖剣だね。なんでも、全ての大地の技術、属性を詰め込んで作ったらこうなったらしいよ」
「全ての大地を合わせると闇になるって事か?」
「エンマさん曰く、たくさんの色を合わせると黒になる。そういう事らしいよ」
ああ、確かに色を混ぜすぎると最後は黒くなるよな。前世の子供の時にやった記憶がある。二色ぐらいだとちゃんとした色に変化するんだけど、五色ぐらい混ぜると黒に近しい色になるんだよな。
この世界だと、全属性混ぜると闇になるって事なのか? じゃあ、光属性はなにも混ざっていない状態なのか? ここにきて謎が深まったんだが。
「まっ、闇でも光でもいいか。使い手が善であれば、闇も光も変わらねえよ。使い心地はどうなんだ?」
「魔力を斬る事が出来るみたい。だから、魔力での防御は出来ないと思う。ただ、勝手に魔力がある方へと向かうから使いづらいよね」
「生き物みてえだもんな。そりゃ、振りづらいだろうさ」
勝手に刀身だけ移動しようとするもん。今も俺の方に来ようとしているしな。どうやら、鞘にしまうと大人しくなるらしい。
とりあえず俺から言えることは勇者の装備じゃない。それだけは確かだった。リュカの伝承が残ったら、この邪悪な見た目の剣が聖剣として語り継がれるのか。
それにしても、敵の数が明らかに少ない。こっちに向かってくる人数が極端に少ないのだ。ここには勇者がいるんだがな。
「他の奴ら。さては結構暴れているな?」
「グランとか、聖女様とか、ナハトちゃんは我慢できなさそうだもんね。敵がいたら、即排除の思考をしていそうだもん」
「ある意味で分散したのはよかったのかもしれないな」
あいつらは勝手に大暴れするから、囮としては最高かもしれん。魔族達のそれぞれが好き勝手に暴れているから、対応が遅れているのかもしれないな。
まあ、ジークとアリシアがなんとかしてくれるだろう。なんとかしろ。
「てっきり、もっと魔族がいるものだと思っていたんだけどね。ちょっと拍子抜けかも」
「それは俺も思ったな。もしかすると、攻めの方に多くの人数を使っていたのかもしれん。防衛は手薄なのかもな」
警戒しながら進んで行く。徒歩でゆっくりと魔王のいる城まで近づいていく。
「なんだかんだで、アリマと旅をちゃんとするのは初めてかもしれないね」
「今にして思えば、王都セイクリアで別れてからたまに会ってはいたが、こうやって一緒にどこかを目指して旅をするのはした事がなかったかもな」
「不謹慎だけど、ちょっと楽しいかもしれない」
リュカは朗らかに笑った。俺もつられて笑っちまう。
その後、休憩をしながら万全の態勢で魔王の城へと進んで行く。魔王城まで目と鼻の先までとなった。なんだか、近づけば近づくほどに防衛が薄い気がする。
結局、連れて来たメンバーは誰一人として追いついてこなかった。まじで何してんだろう。
「少し休憩しよう。休憩次第、魔王城へと入ろうじゃねえか」
「そうしよっか」
最後の戦い。その前のしばしの休憩。リュカと楽しかった事やこれからしたい事など話した。ただ、俺は最終決戦の前にしたい事があった。
俺はそれを実行しようと思う。




