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魔の大地に向かう途中③

 なんか、お互いに凄い疲弊した。冷静に戻った俺達はお互いになかった事にしたのだ。それよりも明らかにあの部屋は暑すぎる。あそこには遺物が置かれていて、それが熱を持っているんだと思うだけどな。


 だが、俺も遺物は素人だ。ここはココロに聞いてみるしかないだろう。という事で、燃料役のエクレアにはもう少し耐えてもらうとして、俺は一人ココロ所へと向かう。


「おえーー、気持ち悪いぃ。目が覚めたら船が空飛んでるし、どうなってるのよ。ここは一体どこなの、そして私は何の為にこの船に乗っているの!?」


『魔王討伐の手伝いをする為に……汚い手で俺様に触れるんじゃない!?』


 賢者アリシアと杖オービタルがいた。アリシアは陸地で、酔うぐらいに酒を飲んでいた。そこに乗り物酔いがヒットした様子。魔の大地に着く前からボロボロなんだけど。


「大丈夫か、アリシア。随分と荒れた様子だな」


「えっ、あっ、あー、アンタの顔を見てたら思い出してきたかも。私はアリシア、魔王討伐に来た賢者で、今は飛行船に乗って移動中。うぷっ、気持ち悪い!!」


「こりゃ、着くまでの間はずっと外を見てるしかねえな」


 中で吐かれても困るし。目的はちゃんと確認できたようだし、後は時間が解決してくれるだろう。


「杖よ。ちゃんとアリシアを見ているんだぞ」


『お前、俺様にこの酔っぱらいを押し付けるつもりか!?』


「幼馴染なんだし、介抱ぐらいしてやれよな」


『ま、待て!? アリシア、俺様の体に汚い手で触れるなと……』


 俺は無視して移動を開始した。いや、付き合ってられないし。そのまま進んで行くと、今度はアリシアをあんな風にした張本人がいた。


 ジークはまだ飲み足りない様子で酒を飲んでいる。


「おいおい、魔の大地に着いて、酔って戦えませんはやめてくれよ」


「もうな。おじさんはヤケ酒よ、この歳でまだ最前線かと思うと泣けてくるね」


「妖精族と比べるとまだ若いんだから頑張れって」


「そういう長命な種族と比べられちゃってもねぇ……」


 人間の歳だったら、ジークは四十ぐらいだろうか。兵士としては老兵って扱いでもいいのかもしれない。ただ、俺はこの世界の兵士がどのくらいまで仕事してるか知らねえからな。


「まっ、ほどほどにやるよ。死なない程度に戦って、また酒を飲みたいからな。お前も付き合ってくれよ」


「そうだな、この戦いが終わったら付き合ってやってもいい。それはそうと、アリシアにお酒を進めるのはよしてくれ」


「いやぁ、進めれば進めるほど飲んでくれるからさ。進めたくなっちまうよな」


 この酒飲みとの話を切り上げて、俺はココロがいる部屋へと着いた。今日のココロの体は、飛行船に取り付けられた四角い物体だ。


「ココロ、エクレアの部屋にある装置についてなんだけど。すげえ発熱してんだけど大丈夫か?」


『えっと、数値上は大丈夫だと思うんだけど。どれぐらい発熱してるの?』


「部屋に入ったら扉を閉めたくなるぐらいには発熱してる」


『それは発熱しすぎかも、お母さんに聞いてみるね』


「おう、頼むぞ。エクレアが干からびそうになってるからな」


 暇なのでココロの部屋で待っていると飛行船が揺れた。俺の体感だが、結構な揺れだったぞ。音は下の方から聞こえて来た気がする。


 俺は最悪の想定をした。もしかして、敵が襲ってきたりとかしたんじゃないのか。魔族の中で飛べる奴がいたりしてな。


「ココロ、なにがあった!! 敵襲か!?」


『あわわ、そういうのじゃないんだけど。急にエネルギーが供給されなくなっちゃったんだ。遺物が置いてある部屋で異変が起きたんだと思うけど。こっちからじゃよくわかんないや』


「行ってみるしかねえか」


 俺が部屋を出ようとするとエクレアが大急ぎで入って来た。流石に服はちゃんと着ている様子。


「どうした!?」


「な、なにもしていないのに遺物が壊れました!!」


「こ、壊れたぁ!? ま、まあ、あの発熱だし壊れても仕方がないのか?」


『いや、そんな事はあり得ない。遺物は耐久性だけはバッチリだ。耐久実験だけはちゃんとやっているからな。どれだけ熱を持っても壊れない事は確認している』


 通信石と呼ばれる石から、リューネ博士の声が聞こえた。


「飛行船の試運転はしてないって話だよな。それが原因じゃないか?」


『そんな時間はなかったからな。確かにそうかもしれない。だが、遺物が壊れるというというのは、よっぽどの衝撃ではないと壊れないぞ』


「よっぽどの衝撃か」


 俺はエクレアの方を見た。一番近くにいたのはエクレアだからな。なにか心当たりあるかもしれない、そう思ったからだ。エクレアの方を見た。


 大粒の汗を流して、目を逸らしているエクレアの姿がそこにはあった。一瞬、あの部屋から出てきたわけだし、暑くて汗を流していると思った。だが、そういうわけでもないらしい。


「エクレア、一応お前の事は信じている。もう一回だけ聞かせてくれ、本当に何もしないで壊れんたんだよな? お前は触れてもいない。そうだよな?」


「えっ、その、あの、ご、ごめんなさい!! 暑くてぼーっとしていて、思わず殴ってしまいました!!」


「馬鹿野郎!! 原因はそれじゃねえか!!」


 なんで壊したことがばれないと思ったんだよ。子供か!! 騙しておけるわけがないだろう。殴ったって、あの発熱している遺物を殴ったのか。


 いや、今はエクレアを怒っても仕方がない。


「これって、魔の大地まで着くのか!?」


『ココロ、距離を算出してくれ』


『距離を考えるとギリギリ行けるかもしれないけど、魔の大地にある風の障壁を突破するのは厳しいかも……』


 あっ、そう言えば風の障壁を突破する方法は聞いていなかったな。


『なるほど、これはまいったね。手遅れかもしれん』


 リューネは他人事のようにそう言った。そんなやれやれみたいな感じで言われても困るんだが。お前はここにいないからそんな事言えんだぞ。


 海に落ちて全員死亡とかしゃれにならねえからな!?


「最初はどうやって風の障壁を突破するつもりだったんだ?」


『この短時間で、風の障壁を突破する方法なんて思いつくわけがないだろう。常識で考えてくれたたまえ』


「はっ?」


『ありったけの素材で船を防護し、無理矢理突破するつもりだったんだ。だから、特別な仕掛けなんて存在しない』


「えっ、つまり、最初からエクレアが壊したの関係なく、体当たりで行くつもりだったのか!?」


『そうとも言えるし、そうでないとも言える』


「そうとしか言えねえだろうが!!」


 とんでもない事実が発覚した。最初から行きの事しか考えられていなかったようだ。あの時の出張していた火の大地の騎士達は、船を補強していたわけだ。


 なるほど、それなら合点がいく。力仕事なら特別な知識とかいらないからな。


「どうすんのこれ?」


『私からはこのまま行けとしか言えないが?』


「帰りとか考えているのか?」


『なぁに、なるようになるさ』


「しばくぞ!!」


 俺は通信石の機能を停止させた。あいつ、生きていたら覚えていろよ。


「ココロ、どうにかならんか!?」


『ど、どうにかするよ。えっと、突撃にある程度の速度が必要で、予備の動力があるから、障壁を突撃で突破できるかなぁ……』


 不穏すぎるワードが飛び交う。


「全く、リューネさんには困ったもんですね」


「なんで他人事のような反応が出来るんだよ。一応言っておくけど、お前が遺物を壊した罪は消えないからな。帰ったらお仕置きするから」


「そんなーーーー!!!!」


 魔の大地が見えてきた。不穏な感じを漂わせながらも、俺達の飛行船は障壁に突撃していく。これで、失敗したらリューネの枕元に化けて出てやるからな。

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