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俺みたいになりたいってのは絶対にやめろ

 俺はエクレアを連れてはぐれの村に帰還して数日経った。俺が騎士の格好をして、魔王軍六魔将の一人である有限のドラキュラを倒し、エクレアを救出してきたのが信じられないと言った様子だった。


 だが、聖女エクレアの言葉を聞いて真実だと信じたみたいだ。一時は見捨ててた癖に手のひらを返したように喜んでいたよ。これで、村は救われたってな。よかったすねー。


 このままでははぐれの村に居づらくなった俺は、毎日のようにコボとマリカの方に避難している。エクレアは村の人とも仲良くやって体を休めている。そして、体調が戻ったので村を出て行く事になった。


「ふふっ、それで私の方まで毎日逃げてきているわけですか。アリマ君は思ったよりも小心者ですね」


「俺はどこ行っても煽られんのか?」


「私は素直な感想を言っただけですよ。アリマ君は自分の言った事を口先だけではなく、実行したわけですから。称賛は素直に受け取るべきですよ」


「そんなんじゃねーよ。俺はただ、村が救いたいとでかい事考えてやったわけじゃねえんだよ。俺は物も盗むしいい奴じゃねえ、人に褒めてもらえるような人生歩んでねえんだよ。ただ、こんな俺でも約束だけは破らねえように生きてるだけさ」


「なら、私の言葉を素直に受け取ってくださいね。私の願いを聞き入れて、聖女様を助けてくれてありがとうアリマ君」


「ほいほい、俺も助かったよマリカさん。んじゃーな」


 俺は子供達が集まってきたので、マリカの元を離れる。結構、前とは違って尊敬の眼差しを向けてくる。


 今なら、コボと仲良くしろよ差別すんなって言えば仲良くなるかもしれないな。だが、それは俺が解決する事じゃねえ。俺は適当に子供達と触れ合って、コボのいる場所へと向かった。


 コボは案の定、一人で俺と最初に出会った場所の付近にいた。前と違うのは逃げられるんじゃなくて、むしろ俺も見つけたら笑顔で寄ってくるって事かな。


「アリマーーーー、ちゃんと聖女様を助けたんだね!! うおわぁ!!」


 俺は我慢ができなかったので、コボを持ち上げた。エクレアの数倍ぐらい軽い。


「スゥーーーーーーーーーーーー、ハァーーーーーーーー、たまんねえな!!!!」


「ひぃ、アリマがまたおかしくなっちゃった」


 とりあえず、犬吸いをした。これからこの村を出る事になるだろう。そうなれば当分の間コボともお別れだ。めいいっぱい、吸う事にしておいたのだ。ある程度楽しんだら、降ろしてやった。川の近くでコボと仲良く座った。


「アリマはちゃんと聖女様と仲直りした?」


「おう、仲直りしたぞ」


「よかったね。僕がいなくても仲直りできたんだ」


「俺はそろそろ村を出て行こうと思ってな。だから、お前には言っておこうと思ってここに来たってわけだ」


 コボの感情は顔ではなく耳を見ればわかる。顔は悲しそうな表情を見せないが、耳は垂れてしまっている。凄く、悲しいようだな。俺はコボの頭を撫でる。


「お前はこれからどうするんだ」


「僕は今までと変わらないよ。マリカとみんなでここで暮らすよ」


「みんなはお前を受け入れてくれなくてもか?」


「うん、もういいんだ。アリマを見てて思ったんだ。僕はきっと助けたいから助けるんだ。僕はみんなから嫌われてても、僕が助けたいと思うから助ける」


 俺はそこまで聖人君子のような行動をしていたのだろうかと自分でも疑問に思ってしまったのだが、口にはしないでおいた。


「僕ね、将来はアリマみたいになりたいんだ!!」


「ブフゥ!!!!」


 吐いてしまった。俺みたいになりたいとか言う奴は絶対碌な大人にならないぞ。今すぐに辞めるんだコボ。


「エクレアかマリカを目指しなって、俺になるのは俺がショックだから勘弁な」


 俺みたいなのは世界に俺一人で十分だよ。分裂するように増えられても困るって。俺が困った顔をしていると、コボが笑顔で答える。


「ううん、アリマは僕の救世主なんだもん。僕もアリマみたいにしたい事をして、自由に生きるんだー」


「そっか、んじゃ俺から言える事はねえな。もし、大きくなっても人助けがしたいって思うなら、王都セイクリアを目指すといいぜ。そこで王城の騎士にでもなるといいさ」


「騎士は人の仕事でしょ。僕には……」


 なんでそういう所は詳しいんだよ。だが、コボの言う通りである。獣人に対しての偏見は無くなってきたとはいえ、まだ根強く残っているようだ。大きな仕事にはつきにくいと言えるだろう。


「俺みたいに生きるんだろ。ならお前が王都で初の獣人の騎士になればいいだけじゃねえか、やる前から諦めてんじゃねーぞ」


「うん!! なるよ、僕は絶対に獣人の騎士になるんだ!!」


「ああ、頑張れよ。おっと、迎えが来たみたいだな」


 俺の目線には元気に復活したエクレアが近づいてきた。俺も待たせるわけにはいかないのですぐに立ち上がった。


「村の人達との別れはすんだか?」


「ええっ、大量のご飯もいただきましたし旅の準備は万端です」


「んじゃ行くか。じゃーな、コボ元気でな」


「うん、バイバイ。アリマと聖女様」


 コボに見送られながら、俺達ははぐれの村を後にする。よく見ると、村人とマリカと子供達もこっちに手を振っているので最後だと思って適当に手を振った。


 やる気ないのがバレてエクレアに肘で小突かれた。俺達は今度こそ、魔導都市エンデュミオンに向かう。今思い出したけど、これって寄り道の寄り道だもん。まあ、六魔将を一人減らしただけよしとするか。

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