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 俺はネストに連れられて、水の大地へとやってきた。この異空間を繋いで移動するのクッソ便利だな。俺も出来るようにならねえかな。


「てか、その移動が出来るなら、俺と知り合ってから全部それで移動させてくれよ。そしたら、密航とかしなくてすんだんだけど」


「駄目だよアリマ君。一度楽を覚えてしまうと、次も楽に移動しようと思うだろう。僕は君にそんな人になって欲しくないんだ」


「俺のお母さんかよ」


 俺の事を考えています、みたいな感じを装っているけどさ。どうせ、面倒くさいからやらなかっただけだろ。こいつの性格もわかってきた。


 それっぽい事を言って誤魔化してくるんだよ。


「それにしても、この移動の仕方。俺もイリステラと同化する事で気づいたんだけどさ。ネストは魔力がないんだな。この移動の仕方も魔力を使ってないみたいだし」


「そりゃ、異世界イリステラで生まれた生物には魔力があるわけだろう。僕はこの世界で生まれてないからね。ないのは当たり前だとも言える」


「魔力がないのにこの移動か……」


 魔力を使わない仕組みはやっぱりわかんねんだよな。ちょっと上位の存在になれたからわかるが、見れば見るほどにネストの存在は規格外だなとわかる。


 そして、この移動の仕方をしていた大賢者リーン・ポートメントも凄かったんだなと改めて実感した。


「んで、こんななんもない場所に下ろしてどうすんだよ。魔術国家リーンの近くに移動した方がいいんじゃないか?」


 そう、俺達が移動したのは水の大地のどこか。俺も水の大地に向かったのだから、ここが水の大地なんだろうなって感じしかない。完全に知らない場所なんだよ。


 普通に水の大地の状況を調べるのなら、魔術国家リーンの近くに移動するが普通じゃねえのかな。


「その必要はないよ。僕が暇な時間に調べておいた。今は水の大地の遥か上空で、賢者ヴァイオレット君が四魔卿の一人、『時』のルドウィンと戦っているみたいだからね。一方で、魔術国家リーンの魔術師達は魔族と戦っているみたいだよ」


「そこまでわかってんなら、お前も手伝ってやったらどうだ?」


「いやだなぁ、わかっているだろう。僕は役割を持っていない。今は干渉できないんだ。君にも触れられないんだよ。ほらっ」


 ネストが俺に触れようとするとすり抜けてしまう。この状態は相手には触れられるがネストにダメージが無くて、ネスト側は触れられない状態なんだっけ。一種の無敵状態だな。


「で、俺達はこの後どうするつもりだ?」


「僕から出せるの二択だね。一つは魔術国家リーンへ向かって、魔族を蹴散らす。もう一つは、そのまま四魔卿の元へと向かって、賢者ヴァイオレット君と協力して敵を倒す。好きな方を選んでいいよ」


「そんなの考えるまでもねえ。さっさと四魔卿の元へと向かうだろ」


「なら、協力して倒すって感じだね」


「ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ようは、賢者ヴァイオレットに協力するかどうかはその場の空気次第って所だ。少なくとも、今の俺の気持ち的には協力するつもりは一切ない。


 別にヴァイオレットが嫌いとか、個人的な理由じゃないぞ。これにはちゃんと考えがある。


「ようし、それじゃあ上空に向かうとしようか」


「なあ、上空って言うけどさ。俺達飛べないからな。いきなり向かって、落下するのだけは勘弁だぞ」


「そんなわけないだろ。僕を信用できないのかい」


「今までの行動を胸に手を当ててみたらどうだ。あっ、胸がないから当てられないか。すまん」


「岩の中に連れて行ってあげようか?」


 岩の中で動けない状態にされるのは勘弁なんで、これ以上いじるのはやめにしよう。


 さっきの移動法で、もう一度移動する。目を開けるとそこは謎の空間が広がっていた。俺達の目の間に入って来たのは、既に辛そうにしている賢者ヴァイオレットと余裕そうな知らない男。


 知らない男の方が四魔卿の『時』のルドウィンって奴だろうか。俺達が現れた事に二人が大層驚いていた。俺は二人の事よりも、周りの空間の事が気になっていた。


 空間に魔力を感じる。これは、元賢者オービタル・デュランダルの魔力だろうか。そういや、アリシア・ポートメントがオービタルの魂の入った杖を渡したと言っていたな。


 四魔卿を逃がさないようにの配慮だろうか。


「なるほどな。別の空間を水の大地の上空に作って、そこで戦っているわけか。これなら、落下もしないし安心だな」


「だろ、僕はだから大丈夫だと言ったんだよ」


「ちゃんと説明してから移動しろよな。それで、状況はどうなっているんだ?」


 俺はヴァイオレットの方を見た。


「……み、見ればわかりますよね。私、手も足も出ないので負けてます。そもそも、この空間は出入りを禁じているのにどうやって入って来たんですか」


「だっさ。お前、口だけかよ。お得意の時を止める魔術でどうにかしろよ」


「どうにか出来るのならそうしてますよ。どうにか出来ないから、こんな無様な状態になっているんでしょ。状況をよく見てください類人猿」


「なんで、負けてんのにそんな偉そうなんだ?」


 相手の四魔卿の名前は『時』だっけ、つまり相手も時を操る力がありそうだ。で、純粋に時を止める勝負で負けたって感じか。状況を見ろって言われてもわかんねえんだけど。


「相手の方が魔力があって、時を止められるんですよ。かろうじて、対抗出来てはいますが時間の問題なんです。ちょうど良かったので、助けてくれませんか?」


 おおっ、珍しい。あの、性格の悪い賢者ヴァイオレットが俺に助けを求めているではないか。いやあ、いい物が見れましたね。


 ちらりとルドウィンの方を見る。俺達の出方を静かに伺っているようだ。自分が負けるとは微塵も思っていなさそうなその表情。よっぽど、自信があるみてえだな。


 しょうがないな。


「だが、断る!!」


 俺の言葉に、ルドウィン、ヴァイオレット、ついでネストも驚いていた。どうやら、ネストは俺が協力すると思っていたらしい。


 いやいや、駄目だよネスト。お前も言っていただろう、楽を覚えてはいけないんだ。このルドウィンとかいう奴は一人倒してもらわなくちゃな。


「私が類人猿に頭を下げたんですよ!? 頭を下げた分返してください!!」


「そもそも、お前俺に頭下げてないじゃん。下げたふりするなよ。まあ、土下座して俺の足を舐めながら、今まで馬鹿にしてすいませんでしたって、言ったら考えてやってもいいぞ」


「それするぐらいなら死にます」


「あっそ、じゃあ頑張って倒せよ。安心しろって、お前が負けたら俺が代わり倒してやるから」

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