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人ってのは性格が悪くなると魔物になるんだな

 村を出た俺は後ろから誰かに後をつけられているのにすぐに気づいた。悪いんだが、俺は前世の時から夜であれ、誰か後ろにいるような気がするって後ろを何度も振り返るタイプの人間だから、本物の人間が後ろにいるかどうかなんてすぐにわかるんだよ。


 だが、俺はあえて泳がせておくことにした。会話を試みるにしても、はぐれの村から離れた所であり、古城からも少し離れた距離がいいだろうと思ったからだ。


 俺の気持ちなどは知らずにコボの奴は呑気に俺の頭の上で鼻歌を歌っている。どうやら、普段背の小さいコボの見る景色と違って俺の頭の上は見晴らしがよくていいようだな。


「お前は楽しそうでいいな。これから、危ない所へ行くんだぞ」


「うん、でも大丈夫だもん。だって、アリマが守ってくれるだもん」


 コボもマリカも、そしてエクレアにリュカ。全員に共通して言えることがあるんだが、なんで俺なんかの信頼度がこんなにもバリ高って感じなんすかね。


 俺は誠実とは程遠い位置で生きてきた事を自分でも認めるよ。だから、こんなに信頼してもらえるような人間ではないんだがな。コボの指示の元で、古城に近づいて来た。


 そろそろ、村からずっとついてきている奴に話でも聞いてみるか。


「おいっ!! そろそろ、姿を現したらどうなんだ?」


「えっ!! 何かいるの!!」


 俺の声が聞こえているとは思う、沈黙の時間が流れる。少しして、木の木陰から少女が出て来た。


 見た目だけで言うなら、普通にどこにでもいる村娘と言った所だ。だが、態度が凄い強気だ。ふふんって顔をしている。


「気づいていたようね……」


「んで、何か用か。俺は忙しいんだよ、これから聖女様を迎えに行かなくちゃいけなくてな」


「はぁ……貴方もあのクソ女の事ばかりなのね。ここにも、永遠の命を手にいれた美少女がいるのにね」


「永遠の命?」


 永遠の命とは何なのだろうか。だが、これだけははっきりと言える。お前は別に美少女でも何でもないと思うぞ。エクレアを見すぎたせいで、美少女の基準が上がってしまったのかもしれんな。


 昔の俺だったら、このレベルでもまあまあ可愛いんじゃね、くらいの勢いはあっただろうな。エクレアは顔だけはいいんだからさ。


「そうよ!! ドラキュラ様に忠誠を誓う事で、私は老いる事のない体を手にいれたの。つまり、年をとる事はないの。私はこの美しいままを維持できるってわけよ」


「なるほどな。村で俺達の動向をドラキュラにチクっていたのはお前だったわけか……」


 村の中に最初から裏切り者がいたわけだ。こいつの役割は抵抗戦力が村に到着した時にドラキュラに伝える係といった所だろうな。村もどうかと思うレベルであったが、こいつはクズ中のクズだな。


「貴方も見たでしょ、あんな村なんて無くなった方がマシよ。私の為の犠牲になれるのだから、感謝してほしいくらいだわ。あの、マリカとかいう女も早く生贄になればよかったのにね。説教がうるさくてたまらなかったわ」


「マリカの事を馬鹿にするな!!」


 俺の頭の上でコボが怒鳴っている。


「あんな村なくなっていいってのは同意見だな。お前も顔だけなら、エクレアぐらいはあるかもしれねえな……」


「ふふん、話が分かるじゃない」


 ちなみに、エレクアぐらいあるねっていうのはお世辞だ。こいつの顔はクラスで四番目くらに可愛いってレベルだ。本物が隣いればかすんで見えるだろう。


 まあ、最後ぐらいは褒めてやってもいいじゃねえかなと思ってお世辞を言ったわけだが。


「私がドラキュラ様に言って、貴方だけ助けてあげてもいいわよ」


「ふーん、魅力的な相談だが断る!! 顔面がどれだけ美少女でも、魂の汚さが透けて見えてんだよ。汚ねえからさっさとどっかに行ってくれないか。見るに堪えられなくなってきたよ。……おっと、危ねえ」


 俺の言葉に明らかに激怒した様子で、爪で引き裂こうとしてきやがった。どうやら、完全に人間を辞めて魔物となってしまったようだな。


 ただ、俺はそこまで運動神経がよくないので子供達から貰った袋を落としてしまった。袋はあの裏切りクソ女の元へと行ってしまった。


「これって、アンタが報酬で貰っていた奴よね。どんないい物が入ってんだか……ハハハハハハハ、何これ!! ゴミしか入ってないじゃないの!! アンタ、こんなのが報酬でドラキュラ様に逆らおうとしてんの!! 本当に馬鹿ね!!」


「それは、村のみんなが大事にしていた……」


「コボもういい、喋るな!! あんな奴と口きくな。汚さがうつっちまうぞ!!」


「はっ?」


「耳まで遠いのか、人間って奴は心が醜くなっちまうとアンタみてぇな魔物になっちまうんだな。お前には、その袋に入っている物の価値が理解できないようだな」


 俺みたいなどうしようもねえ奴にだって、わかっちまう輝きが見えていないようだな。こいつは救いようがないな。だが、何らかの方法でドラキュラの力を分け与えられているのだろう。


 力は本物のようだ。最初は逃げる隙を見つけて、上手く逃げるつもりでいたがやめだ。こいつはここでぶっ倒していく!!


「舐めた口聞いてんじゃねえぞ、雑魚分際でさ!! 私知ってるのよ、アンタが聖女後ろでコソコソしてるだけのたいしたことない奴って事をね……ぶべらっ!!」


 俺は偉そうに話している最中のクソ女に本気のドロップキックをかましてやった。俺の今の状態の本気なんざ、たかが知れているがな。


「私の顔によくも傷をぉ!!!!」


「よかったじゃねえか、そっちの方が美人だぜ」


「アリマ!! 見て見て、傷が治っていくよ」


 コボの言う通りであった。女の傷が少しずつだが治っていく、なるほどな永遠の命って奴の正体がその治癒力ってわけか。俺はすぐにスマホの職業ガチャのアプリを起動した。


 残金は五連を一回だけ、つまり今使ってしまえば、ドラキュラの時には職業ガチャが使えない事になる。だが、ここを切り抜けなきゃどうせドラキュラの元まで行けねえんだ。なら、もう使うしかねえよな。


「あーあ、とっておきたかったんだけどな。そろそろ、当たりを頼むぜ職業ガチャ!!」


 俺はアプリのガチャボタンを押すと、もうそろそろ見慣れたガチャ演出であった。そう、見慣れたガチャ演出であった。なんかさ、この青い背景以外が出てるところを見た事ねえんだけど。


 これって、当たりの時は背景の色が変わるとかそういう演出があるんだろ。絶対そうだろ、見た事ねえから知らねえけどさ。これって、ナンパ―セントの確率で最高レアが当たんだよ。


 いや、まだカードの色を見るまではわかんねえぞ。俺の願いとは関係なく、目の前に現れたのは青、青、青、青、青のカード。内容は戦士、弓使い、神官、魔法使い、戦士。戦士の被りが減っただけでもマシかな。


 俺は戦士のカードを手にとった、理由は一つ弓使いと戦士だけは使った事があり、経験がある。そして、相手のパワーに対抗するなら戦士だろう。


「クラスチェンジ、戦士!!」


 俺は光包まれて、一瞬のうちに戦士の装備を身にまとった。戦士は斧を使った攻撃が得意な近距離専門のパワーファイターだ。一回だけ、故郷の村にいた時に使ったから覚えている。


 外れ扱いであるが、五万エンも使っているのだからそれなりのパワーはある。まっ、当たりがどんなもんなのか知らねえから比べられないんですけどね。そろそろ、当たり欲しいですよ女神様。


「何よその姿……多少、姿が変わったぐらいでさ!!」


 女は俺に怪力と爪で攻撃しようとしてきたが、俺は難なくその一撃を受け止めた。そして、掴んで逃がさないようにして、斧の一撃を叩きこんでやった。


「グヒャーーーーーー!!」


「おいおい、心が汚ねえと断末魔も汚くなるのか?」


「舐めるなよ、こんな傷すぐに治してやる。私は無限に再生できるのよ!! アンタに勝ち目はないわ!!」


 確かに彼女の言う通り、傷が話している間にもドンドンと治っていくのがわかる。だが、お前が再生するのと俺がお前に勝てるかどうかは別に結びつかねえだろう。


 敵の目の前で再生が明らかに遅すぎんだよなあ。俺は逃がさないように斧を再生中の女に振り下ろした。


「無駄よ……グヒョ!! 無駄って言って、グヒョ!! 話をき……ゴヒャ!!」


 俺は話を聞く意味などないので、ただひたすらに斧で女を攻撃し続ける。女は当然再生を続けるので、死なないようだが。それでも、俺は斧を振り続ける。


「どっちでもいいけどさ、俺はお前が死ぬまで斧を振り続けるよ。断末魔が聞こえるって事は、痛みはあるんだよな。なら、お前の汚い断末魔が聞こえなくなるまで永遠に斧を振り続けてやるよ。さあ、永遠VS永遠どっちが諦めるか勝負しようぜ!!」


 そこからはただひたすらに斧を振り続けていた。女が何か言っていたが、俺には関係ないのでひたすら振った回数だけを数え続けた。千回を超えたあたりだろうか、俺の頭の上にいるコボの声が聞こえたので手を止めた。


「アリマ……もう死んじゃったよ。悪い人だったけど、死んじゃうと悲しいね」


 コボは何とも言えないような顔をしていた。優しいなコボは、俺は特に何も思わねえ。どうやら、痛みが凄すぎて体の再生を諦めたらしい。


「エクレアやリュカだったら、どんな痛みでも諦めなかっただろうな。まあ、お前は永遠ではなかったようだな」


 俺は戦士のクラスチェンジを解いた。俺は子供達から貰った袋を拾って、古城へと足を進めるのだった。だが、俺の脳裏が行くなと叫んでいる。職業ガチャがない今の俺にエクレアが救えるのだろうか。


 答えが出ている、助けられる可能性なんて万に一つないって事だ。だが、俺の足は古城へと進む。もうやめだ、行ってから考える事にする。

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