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何もしないのに態度がでかい奴っているよな

 俺は自分の残金を確認していた。この職業ガチャのアプリなのだが、お金を直接消費して引いてるわけではない。五万エン分のポイントを買って、そのポイントを使っているのだ。


 いわゆる、お金で課金用のアイテムを買っているわけだ。ここで、少し面白いのがポイントを買う際に持っている物であれば何でもポイントに変換できる所だ。


 例に出すと、俺が一万エンを持っていたらきちんと一万エン分のポイントになる。だが、ここで先程盗賊から巻き上げた宝石をポイントに変換するとどうなるか。


 宝石はこの辺では一万エン以上の価値があるとされているが、答えは。職業ガチャに表示された文字を見る。


『三千エンポイントになりました』


「嘘つけ、このぼったくりアプリが!! 責任者呼んで来いよ、どうなってんだ。宝石なんて、普通はこの大きさなら一万越えは確実だろうが!!」


 責任者である、ピンク頭である女神イリステラに通話をしたいが、残念だが忙しいのか出ない。俺が子供の頃は毎日のように電話してきた癖にな。


 とにかく、変換機能がなんかおかしいのだ。当然だが、女神イリステラに一度言ったことがあるが、イリステラはこんな感じの返答をくれました。


『うーん、一定の法則はあるわよ。ただ、教えるのは……アリマには自分で気づいて欲しいなって』


 とか意味わかんねえこと抜かしておったわ。こっちは命かかってるんだが、クレイジーピンク頭と言いたかった。てか、言った。


 俺が変換した事あるのは、王都の備品とか盗んだ骨董品とかだが明らかに値段が下げられてポイントに変換されている気がする。金になりそうな物はとにかく入れて見てもいいのだが、課金制限があるので慎重に選ばなくてはならない。


 これがさらに面倒で、いつもう一度課金できるようになるのかがまったくわからないのだ。今回の宝石で何とか、五万エン分のポイントが貯まった。これで、一回分のガチャが引けるってわけだ。


 だが、こうも貯まりにくいとなるとできるだけ使いたくないのが現状だ。なので、できればエクレアがかなわない敵とかはマジで勘弁して欲しい。その時点で、職業ガチャを引かなきゃいけないだろう。


「頼むぜエクレア、お前だけが頼りなんだよ」


「ふふーん、お任せください。大丈夫です、村の人達も私が助けてみせますよ」


 やる気満々のエクレア。喋る魔物というのが、どの程度の存在なのかはわからない。少し不安を覚えながらもエクレアは俺の命令なんて聞かないので、進んで行く。


 村が見えた、そこには俺が住んでいた村なんかよりもボロボロであった。俺の村よりも下があったなんてと驚愕する勢いであるが、よく見ると誰かに壊された後のように見える。


 災害とかそういうのではなく、窓や扉などの出入り口が壊されているので誰かが侵入する為に壊したようにしか見えない。エクレアが村へ入ると、やせ細った村人の男がエクレアを指さした。


「聖女だ……聖女様が来てくださったぞ」

「やった、これで救われるのね」

「という事は王都からの討伐隊も来てくれるんだ……」


 エクレアの存在というのは、どうやら王都だけではなく周辺にも知れ渡っているようだ。おいおい、このままじゃ知らなかった俺がおかしいみたいじゃないか。


「はいっ、私が来たからにはもう安心です!!」


 優しそうな笑みを浮かべた、王都で見た聖女モードだ。傷ついた村人達が大量にいる。その様子を見たエクレアは傷の手当をすぐ始めた。すると、村人のリーダー的な人が近づいて来た。


 年のとった髭の生えた老人だ、いかにも村長って感じの風貌。この人が村長じゃないなら、誰が村長なんだってレベルだ。


「私ははぐれ村の村長です。それで、王都からの討伐隊はいつ来るのですかな?」


「ああ、すまんが俺達は旅の途中にたまたま話を聞いて、寄っただけだ。王都の討伐隊ってのは知らんぞ」


 そもそも、今の王都にこんな辺境の場所に討伐隊を出す余裕なんてねえだろう。


 ハーゲンがいくら民に優しい王様だったとしても、魔物とか六魔将の事とか考えば、こんな村見捨てるのが正解だろう。俺の言葉を聞いた村長と村人達は明らかに落胆した様子だ。


「大丈夫です。私が何とかしますから……」


 傷を負った村人の治療にあたりながら、根拠のない言葉をエクレアが言った。それでも、その言葉を聞いて悪態をついたり、舌打ちする者まで現れる始末だ。何だこの村、感じ悪!! 


 せっかく、何のメリットもねえ聖女のエクレアが来てくれたのにこの態度よ。すげー、むかつくなこいつら。エクレアにも聞こえているはずなのに、笑顔を崩さずに懸命に治療をしている。


 俺は元々どうでもよかったこの村の事がさらにどうでもよさが天元突破しそうな勢いだったが、喋る魔物というのが気になるので聞く事にした。


「それで、この惨状は一体何があったんだ」


 俺が聞くと、村長が話してくれる。どうやら、俺の事を聖女のお付きの人のような感じで見ているようだ。


 なんだこいつら、それだと俺が下でエクレアが上みたいだろうが、俺が上でエクレアが勝手についてきてるから下なんだぞ。


「このはぐれ村は行くあてのない者達が集まってできた村です。少し前まではそれなりに平和に暮らしていましたが、ある夜に恐ろしい怪物が襲ってきたのです。その怪物は村を壊してまわり、最後に夜に一人ずつ若い女性を生贄捧げれば皆殺しにするのはやめてやろうと言い残して去って行きました」


 盗賊達の報告の通り、喋る魔物と見て間違えないだろう。若い女性を魔物がどうしているのか、知らないがもう少し情報が欲しい。


「そいつは、どんな姿をしていたか覚えているか?」


「蝙蝠のような羽に長い牙、人間とは思えない力でした。自分の事を魔王軍の六魔将の一人、無限のドラキュラだと言っておりました」


「ぶふぉ!!!!」


「ど、どうかされましたか……」


「あ、すみません。大丈夫です、こっちの話なので」


 もしかして、六魔将は全員が変な二つ名をつけてるんか。知略の次は、無限か……そっすか、言葉だけならグレードアップしたな。


 だが、前回のレッドデーモンはリュカがいたし、リュカが全力の先制攻撃をしたおかげ余裕だったわけだ。


 今回は名前負けしない戦いになる可能が十分あるな。まあ、ドラキュラってのが強いのか弱いのかなんてどっちでもいいか、俺は今回そいつとは戦うつもりは一切ないし。


「まあ、その……六魔将の件は俺達にはどうする事もできんので、勇者が到着するのを待ってればいいと思いますよ」


「そんな!! 村の若い女性なんて、そんなに数がいないんですよ!!」


 おいおい、自分が助かる為に村の若い女性を犠牲にする気満々かよ。俺は周りを見ると、村長だけでなく村全員の総意のようだ。俺は何もしない割に、態度だけ悪いこの村にもう胸糞悪さを通り越して呆れが出てしまった。


 エクレアが頑張っている所悪いんだが、俺は何かしてやる気が全然起きない。まあ、俺が出来る事なんてないからやる気があるもクソもないわけだが、エクレアみたいに誰かを傷を癒したりできるわけじゃねえしな。


 俺はエクレアにだけ、ここを離れる事を言って村の中を散策する事にした。

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