自分の名前の前に知略とかつけちゃうのは
明日の朝。王様に呼ばれたリュカのつきそいとしてついて行った。エクレアには部屋の外で隠れて待機してもらっていた。
玉座では、王と昨日見た兵士達が立っている。リュカと俺は取り囲まれているってわけだ。
でも俺達だって、無策でここに来たわけではない。ついでに、その辺を歩いていたハゲにも来てもらった。
もちろんだが、王様が魔物に入れ替わっている事を伝えた。
「馬鹿馬鹿しい!! また、貴様は意味のわからん事を」
と怒っていた。自分の親が世界を脅かしている魔王の手先と入れ替わってるなんて話信じないわな。
だが、リュカの説得により俺が王様を問い詰めるのを黙って見ていると言ってくれた。
なので、俺とリュカとハーゲンが王の座る玉座の前にいる。
「はて? 今日は勇者様にパーティーの相談の話をする予定だったはずでは」
「王様、その前に俺から話があります」
王様は俺の方を見る。まさか、俺から話があるなんて思いもしなかったのだろう。驚いていた。
「申してみよ」
「最近この国の聖女が行方不明になっているみたいじゃないっすか、王様も大変でしょう。聖女がいなくなったんですもんね」
「お、おう。そうじゃな、わしも気が気でないわ。兵士には聖女を探してもらってるんじゃが、一向に見つからなくてのぉ」
はい、嘘つきましたね。見つかるわけねえじゃん。城の地下に監禁していたんだからさ。まあ、黒ってわかったし切り札を切るか。
「俺見ちゃったんすよね。王様が夜に城の地下に行くところを」
すごいドキッとした表情をしたな。ちなみに別に見ていないがエクレアから聞いた話である。
「地下に何があるんですか?」
「地下には大罪人を捕らえていてな。気になって見に行っただけじゃ、大した事はしとらんよ」
何とかしらばっくれようとしているな。じゃ、そろそろ真打の登場をしてもらいましょうか。
俺は大罪人に合図を送る。扉の後ろからエクレアが現れた。今、行方不明だと言っていたはずのエクレアが目の前に現れてしまったら、ハーゲンも疑うしかないようだ。
王様と兵士達が動揺しているのを俺は見逃さない。
「こちらは城の地下に囚われていた大罪人です。せっかくなので、大罪人の話も聞いてみましょう」
「私は見てしまったんです。王様が魔物である事を!!」
ここまで状況証拠が揃ってからの聖女の発言である。言い逃れはできないだろう。
その発言の後にハーゲンも動き出す。黙って見てるんじゃなかったのかと言いたかったが、何やら背中の剣を取り出した。
「父上、この剣は私の出世祝いにと貰った物です。私はまだ父上が魔物でない事を信じています。どうか、この剣に誓っていただきたい!!」
ハーゲンは王様の息子だ。最後まで信じたい気持ちとせめぎあってんだろうな。
王様は何も言え無さそうだな。んっ? どうしたんだいリュカ君。何だか知らんがリュカが勝手に王様の前まで歩いて行く。
俺は何の命令していないが何をするつもりだ。聖剣を抜いて何をするつもりだ。聖剣を振りかぶって何をするつもりなんだ。
まさか振り下ろさないよなリュカ。
「待て」
リュカは一切の迷いなく聖剣を振り下ろした。
リュカの王様への改心の一撃。迷いのない聖剣の一撃が王様を切り裂いたのだ。
この場にいる誰もが何が起こったのかわからない顔である。
「何やってんだリュカ!!」
「僕の最も信頼するアリマが王様が偽物であると言ったんだ。王様が偽物なのは決まっている。こんな話し合いに意味なんてないよ」
「お、おま、違ったらどうする気だよ」
「大丈夫だよ。アリマは正しいからね」
リュカ君さそういうとこあるよね。俺怖いよ。俺が言った事全部正しい事になっちゃうじゃんか。
俺って大体適当な事しか言ってないのにさ。
斬られた王様は形を変えていく。どうやら魔物が化けていたのは正解だったようだ。
王様は巨大で真っ赤な悪魔になってしまった。だが、リュカがさっきの一撃で与えたダメージは大きいようだ。背中の羽の部分がボロボロだ。
「クソッ!! いつから、俺が魔物だとバレていたのだ。ここまで、長い間勇者を利用するために不快な人間に化けていたというのに、台無しではないか!!」
「アリマは最初から気づいていたみたいだけどね。ねっ、アリマ!!」
ねっ、じゃないんだが。最初から気づいてるわけねえだろ。
たまたま地下に行ったらエクレアが捕まっていて、それをたまたま助けたら王様が偽物だと言わたんだぞ。
んで、確認したら本当に偽物だっただけだ。まじで偶然の産物だろ。
「貴様のせいか!! 大した力も持っていない癖に勇者の友達だとか言って、図々しくも王城まで入り込んだただのガキだと思っていたのだがな。まさか、そのガキにここまでいいようにされるとはな。絶対に許さんぞ、アリマァ!!」
おいっ、リュカのせいで俺の方にヘイト向きまくりじゃねえか。隣に宿敵の勇者がいらっしゃるだろ。そっち見ろそっちを。
俺みたいな小物に殺意を向けた眼差しを向けるのは今すぐにやめるんだ。
「そんな事ないっすよ。俺はただの勇者の幼馴染っす」
「ただの幼馴染が俺の正体に気づいて聖女も救出できるかぁ!!」
こうやって聞くとごもっともな意見な気がする。
「えへへ、今頃気づいたのかい。アリマは最初から凄いんだよ」
「フンッ、まあいいお前の事は魔王様に報告するとしよう」
えっ、魔王に報告すんの。ふざけんな、魔王に俺の事が知られたら狙われちまう可能性が出てくるじゃねえか。
それだけは絶対に阻止しなくてはならない。俺は勇者のフォローしながら楽に魔王討伐したいんじゃい。
「改めて名乗らせて貰おう。俺は六魔将が一人『知略』のレッドデーモンだ!!」
「ぶほぉ!! おいおい、自分で知略のとか言ってるんだが!!」
俺は吹き出してしまった。
知略の癖に俺みたいな小物に見破られてるやないかい、とかそういう事抜きにしても、自分の名前の前に知略のとかつけちゃうのは面白すぎんだろ。
だって考えてみて欲しい。人に名乗る時にどうも知略の田中です、みたいに言ってきたら笑っちゃうだろ。
「それと、なんで六人いそうな流れなんだよ。そこは四天王でよくないか? あっ、四天王にするとお前が抜けちゃうもんな。だって、一番攻略楽勝そうだしな」
「アリマその辺にしてあげてはいかかですか。知略のレッドデーモンさんもかっこいいと思って名乗ってると思うんですよね」
「すまんが知略のって前につけるやめろエクレア。聞いただけで面白くなってきたから」
「絶対に許さないぞ、アリマ!! じわじわと殺してくれるわ!!」
おいおい、怒り心頭じゃないか。でも、怒っていても全身赤いおかげで顔が真っ赤なのかどうかはわからない。
体が真っ赤なのは便利だな。
「誰の前でアリマを殺すって?」
爽やかスマイルでドスの聞いた声を繰り出すリュカ。今のリュカと知略のレッドデーモンが戦えば間違えなくリュカが勝つだろう。
相手は明らかに手負いの状態だ。それを知略は理解しているのだろうか。
「やれっ、お前達!!」
兵士に化けていた魔物が俺達に襲い掛かる。その間に、知略のレッドデーモンは空高く飛び去って行こうとする。
「おいっ!! 逃げるのか!!」
「戦略的撤退という奴さ。お前の事を魔王様に報告するのが先だ!!」
そう言うと、窓を叩き割って逃げて行ってしまった。くそ、流石は知略のレッドデーモンだ。引き際を心得ているな。
てか、絶対に逃がさないぞ。俺の事を魔王に報告する前に奴の息の根を止めなくてはならない。
俺の安寧の為に!!
「ここは俺に任せて先に行け!!」
「ハーゲン、それって死亡フラグだぞ。もしかして、死ぬ気か?」
「死なん!! 最後までふざけた奴だ。だが、お前が奴の正体を暴いたのも事実。奴を追いかけるのには何か考えての事だろう」
「おうよ、んじゃ死なない程度に頑張れよハーゲン!!」
俺とリュカとエクレアが部屋から出ると、城の中で兵士達が魔物と戦っている。
どうやら、結構な数が魔物に化けていたようだ。
こうなってくると城の中を突っ切ってレッドデーモンを追いかけるのはどう考えても間に合わない。
「リュカ、お前はそのまま城の下まで降りてレッドデーモンを追いかけろ!!」
「アリマはって、聞かなくてもいいよね。うん、信じるよ!!」
そのまま、リュカは魔物と戦っている兵士を助けながら下へと降りていった。




