表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/58

赤いパンプス

 女の心理について、ある心理学者が言っていた。「女が“勝負”のとき、“赤”を身に付ける」と。

 深夜、零時過ぎ。黒っぽい上下のその女は、繁華街の裏通りからタクシーに乗った。運転手に行く先を告げると、すぐに携帯電話で誰かと話し始めた。

「今日は、早めに終わったの。そのまま家に帰ろうかと思ったんだけど、でも、そういえばあなたに話したいことがあることに気付いて。今から、そっちに行っていい?」

 女は、突然思いついた用事のために、電話の相手の都合を聞いている。その話し方には、一方的な強引さを感じるが、その実、相手の真意を探り出そうとしている慎重さが感じ取られた。運転手には、その女の、男への思いが伝わってきた。

「あなたと話したいことがあるの。ねえ、今から行っていい?」

 女の口調が、通達から徐々に懇願へと変わって行く。彼女はなんとかして、今日は、男に会いたいようだ。高ぶって行く“彼に会いたい!”という気持ちを、押さえ切れなくなっている。しかも、彼女の口ぶりから「話したいこと」というのは、あまり深い意味を持っていない様に感じられる。あくまで、それは、女が男の部屋に入るための口実でしかなさそうだ。二人の関係はまだ、男に会うために口実を必要とする間柄のようだ。運転手は、電話の会話から、微妙な二人の関係を感じ取った。

 程なくして、車は目的地に着いた。女は料金を払うと、車から降りた。ドアを開けてアスファルトに踏み出す女の足元は、“赤いパンプス”だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ