ジャニーズA+B'=天職 (二部構成“下の巻”)
宴会の2次会を友達のアパートでやろうという女性4人組が、タクシーに乗った。一人の女性は、元熱烈なジャニーズ・ファンだった。タクシー・ドライバーが、「昨日乗せたお客さんは元女優で、ジャニーズのメンバーと付き合ってた」と語り始めたが……。
宴会も、そろそろお開きの時間帯。繁華街のタクシー乗り場から4人の女性がタクシーに乗った。女性たちは、宴会の一次会をお開きにして、次の場所へ。2次会の場所とは、4人の中の一人のアパートのようだ。
「もう、宮崎なんて嫌い! なんなのよ、アイツ!」
「まあまあ、そういわずに、彼だって、一生懸命やってるんだから」
「最低よ、あんな奴!」
タクシーの後部座席の中央と左の座席の女性が、男性社員のことで言い合っている。右端は、かなり“酔いツブレ”ているようで、会話には乗って来ない。いたって静か。しかし、時折、
「おエッ! 気持ちワリーッ」
と、搾り出すように声を発するのが、タクシードライバーを不安にする。
すると助手席の女性が、後ろの二人に向かって言う。
「誰かビニール袋とか持ってない?」
すると、酔いつぶれた女性が、
「大丈夫ッス……」
と、小声で答える。
助手席の女性が、タクシードライバーにいう。
「どうもすみません。お騒がせしちゃって」
タクシー・ドライバーは一応、
「大丈夫です……」
と応えはするものの、内心は不安。
そのうち、後部座席の左側のドアの元気な女性が言い出した。
「私、ジャニーズのファンだったの!」
「ファンレターとか、出したの?」
中央の女性が聞く。
「ファンレターなんて、出さない!」
「ファンなんだから、ファンレターぐらい出すでしょ」
「本物のファンは、ファンレターなんて出さないの!」
「どうして!」
「だって、“私は彼にとっては特別な存在”だから。だから、出さなくても心は通じてるの!」
「ファンの心理って、つまり、恋愛してるみたいな感じなの?」
「そう。彼と恋愛してるの。私は、彼にとって特別な存在だって思ってるから。だから、ファンレターは出さないの!」
タクシー・ドライバーは、ポツリと助手席の女性に言った。
「昨日、元女優で、“以前、ジャニーズのメンバーと付き合ってた”と言う女性が乗って来ましたけれどもね。世の中には、本当にいるんですね」
助手席の女性は、あまり興味なさそうに、
「そうですか。本当にいるんですね。あっ、そろそろコンビニの前よっ! 運転手さん、ここで止めてください」
と、一同に下車を促す。後ろのメンバーも元気に、
「そうだ。コンビニで、つまみとビール買ってかなくちゃ。あっ、それから、化粧もしっかり落とさないと。この間なんか、マンマで朝まで寝ちゃったからね」
「私もよう。今日はしっかり落としてから」
後部座席中央と左の女性。右側の女性は、降りるときに、
「お世話になりました」
と、タクシー・ドライバーに丁寧にお礼を言って降りて行った。
深夜の車内に、静寂が蘇った。