メルカレ
カレに電話したくないんだけど、本当はしたいの。そんな時、メルカレにメール送るの……。
3人の女性が、タクシーに乗り込んだ。座席に着きタクシーが走りだすと、すぐに会話が弾んだ。
「マサル君って、どうだった?」
「あんまり話せなかったから……。それより、ルミは、どうだったの? 結構、話、弾んでたみたいだったじゃない!」
「なんていうか、それなりというか……」
と、どうやら、合コンの成果発表のようだ。話は、“イマカレ”の話へと、移行していった。
“しかし、イマカレがいても、女は合コンに行っちゃうのか。男も女も、変わらないね。変わっていると思っている男が、ウブなのかもしれないな”
と、タクシー・ドライバーは一人、自嘲した。
「エリは、カレとはどうなの?」
と、ルミ。そう問いかけられたエリはというと。
「カレに、電話したくないの。でも、したいんだけど」
「わかる、わかる。そういう時ってあるよね」
と、ルミ。そこに、アイが参戦。
「私はね、そういう時は、メルカレにメールするの」
「ああーっ!?」
ルミとエリがアイの話に対して、複雑な感情を込めた相槌を打った。
「カレに電話したいけど、したくないとき、メール専用の彼にメール送って気晴らし。これで、何とか切り抜けられる」
「なるほど、それって、ありね」
ルミとエリ、納得。程なくしてタクシーは、渋谷に着いた。料金を払って降りる3人を、タクシー・ドライバーは自分の想像が正しかったかを確認するために、3人の姿をもう一度、見た。彼の判断は、全く間違っていた。彼が想像していたのは多少“オミズ”の系統が入った、浮ついたところがある感じの女性たちだった。しかし、現実は、“全くもって、ジミといった方がいいくらいの女性たち” だった。
ここで再び、彼は思った。
“男も女も、考えることは一緒なんだな”
と。さらに、
“メルカレか、じゃあ、メルカノもありなんだろうな。そういえば、yahooパートナーは、それに近いかな。一歩進んでライブチャットDXかな”
と、独り身の生活環境を、あれやこれやと確認して、一人自嘲するタクシー・ドライバーだった。