女はチャッカリ、男は愛嬌。しめて3500円、カードで
六本木のクラブを堪能したカップル。その帰りのタクシーで、どうも雲行きが……。
前の女性客が車を降りるのと同時に、若いカップルが乗り込んできた。
25、6歳のカップル。女性は、タレントの優香みたいでかわいいタイプ。
「運転手さん、戸越銀座と横浜」
と乗り込むと即座に、元気な女性の声。比べて男性は、
「横浜まで行こうかな」
と、タクシーが動き始めても考えている。
「ビーに来ているお客は、どうもね」
と男性。
「でも、お店に来ているお客の考え一つで、評価は違うんじゃない」
と女性。
「女の子も、もまれて、触られて、ごちゃごちゃで」
ネガティブな男性。それに比べ、ポジティブな女性。
「運転手さん、そこ右入って。ねぇ、ローカルな感じでしょ」
「そうだね。どうしようかな、横浜でなくて、五反田のインターネットカフェにしようなか。五反田にあるかな?」
と女性に聞く男性。
「五反田なら、あると思うよ。運転手さん、ここで一人降ります」
女性がさっさと一人でタクシーを降り、男性一人が後部座席に取り残された。
タクシードライバーが声をかけた。
「どうしますか? 横浜? それとも五反田?」
「五反田で」
「では、五反田へ。なんだねえ、お客さん。そのまま彼女の家に、上がり込んじゃえばよかったのに」
と、タクシードライバーが一言、感想を漏らした。
「ぼくも、そうしたかったんですけど。でも、僕、気が弱くて」
「押しの一手ですよ。」
「でも、あそこは彼女の実家だから」
「そうですか。ならホテルとか」
「そうですよね」
そんな話をしているうちに、タクシーは目的地に着いた。
「五反田の駅前です。色々ありますよ」
と、タクシードライバー。
「じゃあ、ここで。支払いはカードで大丈夫ですか?」
といって、男は一人で五反田の駅前に消えて行った。六本木、戸越銀座、五反田、占めて3500円。