表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/58

夢の続きを、ご一緒に

 タクシーは、新宿から二人の男女を乗せた。男は途中で車を降りた。すると女は、タクシー・ドライバーを相手に、話始めた。夢の続きは、ご一緒に……。

 靖国通り、新宿の大ガードから「中野方面に」といって、乗り込んできた男女二人。乗り込むなり二人はすぐに話し始め、仕事の人間関係の話に花が咲いていた。

「田所さんは人間的に問題があるんですよ、どう見ても」

 女は40歳代半ばに思われる。こぎれいにしている。

「山田さんは2、3年前に生理があがったといってた。どうやらそれがもとで、精神的に崩れやすくなったんじゃないかな。やはり、生理があがるといろいろと支障が出てくるんだろう。君は、いつごろ生理があがったの」

 50歳代半ばと思われる男の質問に、それまで快活に話をしていた女は黙った。

「運転手さん、中野坂上で一人降りて、そのあと中野通りの南台へ」

 女は話題を変えるように、行き先を告げてきた。程なくして車は、中野坂上の交差点についた。男が降りて行った。車が動き出すと、女は話始めた。

「新宿で、歯医者の事務をしているんですけれどね」

「歯医者なら、この不景気は関係ないでしょ」

「そんなことないんです。多少の痛いのは、不景気でみなさん我慢するんでしょうね。患者は激減してます」

「そうですか」

「しかも、歯医者が馬鹿だから……」

「そうなんですか」

「どうせ、わたしは派遣だから、いいのよ」

「大変ですね。実は、私は小説家になりたくて。1年前まではライターの仕事をしていたんですが、不景気で食えなくなって。しかし、書くことは続けてるんです」

「頑張ってください。続けていれば、きっと夢が叶う時が来ますよ」

 程なくして、車は南台に着いた。料金を払って車から降りるとき、私は女性の顔を見た。彼女も私の顔を確認するように、笑みを浮かべながら私の目を見た。ルームライトのオレンジ色の光に照らし出された彼女は40歳代半ばとはいえ、きれいな人だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ