眠らない街、東京で働く若者を救え
取材班は、とある店で一人の青年に声をかけた。
「え? テレビ? ……まあ、いいですけど」
青年の名前は沢村太郎さん。今年で24歳、今は西麻布にある中華料理店でアルバイトをしているそうだ。
家を訪ねても良いかと聞くと、青年は明るい声で了承してくれた。
「どうぞ。何もないですけど」
そう言って見せてくれたのは、1LK程のアパート。家賃は6万と一人暮らしではやや辛いが、気ままに暮らしているという。
三年前に上京し、専門学校に通いながらアルバイトを続けるも、生活が苦しくなり中退。そのまま現在勤めるアルバイト先一本に絞り、暮らしている。
──実家に戻らないんですか?
「……辞めた手前、戻り辛いってのもありますね」
青年は少し苦い笑みを見せた。
部屋の中には資格の本が数多く積まれており、青年の夢や希望が詰まっていた。
──将来は?
「店をやりたいですね」
そう言って、アルバイト先で学んだレシピが書かれたメモを見せてくれた。びっしりと事細かに書かれており、熱が見える。
──その箱は?
無造作に置かれた段ボール。中には実家の母親から送られてきた野菜とカップラーメン、そして青年が長年推しているグラビアアイドルの写真集が入っていた。
「田舎のお袋が、たまに送ってくれるんですよ。手紙なんか入ってたりして……恥ずかしいですね」
同封されていた手紙を読み、ふと目頭が熱くなる。
「風邪ひくなって、書いてありました」
田舎の母親からの心遣いが、身に浸みる。
「じゃあ、もう寝ます」
スタッフは青年に別れを告げ、明日、また会う約束をした。
翌日。
「……ゴホッ! すみません……体調が」
どうやら昨夜はパンツを脱いだまま寝てしまったようだ。夜風が身に染みたのだろう。お袋さんの気遣いが裏目に出たようだ。
「お袋、ごめん……ゴホッ!」
青年はそっと涙を流した。