成長には痛みが伴うものなのかもしれない
いやぁー。宴会はなんだか散々だったわ……。
そして、その夜のことなんかはもう思い出すのもキツい……!
まさか風呂以外でずっと女神として過ごさねばならんとは……。
なんてこったい! オレは立派な男の子 (中年) なんだがなー。
「お、ここだ。」
宴会の翌朝。内心で文句を言いつつ、竜族の破壊跡に到着。
こっそり抜けだして来たんだ、オレは! あんなテンションでこられたら……
身が……もたねぇ……
「ボスー? なにするの?」
ああ、ルビィよ……。
お前だけだ。お前だけはいつまでも、純粋無垢なもふもふでいておくれ。
「いや、ちょっとな、空間全体に対するリセットを試そうかなってさ。」
「ふーん……?」
あ、これ分かってないな。首傾げとるわ。
「まぁ、いいや。とりあえず、オレがうっかり倒れたら運んでくれな?」
「はーい!」
ルビィを撫でり撫でりして……
さて。
確か前、大猫族襲来の時は、キレて無制御な感じでぶちかまして1ヶ月くらい昏睡したんだよなぁ……
あんまり覚えてないけど……ってかそりゃ覚えてる方が変だけどな!
んー。
神力を薄く空間に馴染ませるように伸ばしていく。
溶けて固まった地面、無くなってしまった木々……
アマネの神力の残滓……
竜族の神力の残滓……
冷静にゆっくりじっくり体感していくと、色々分かるもんだな……
んー。とはいえ……完全に無くなった木々はダメか……
死んでしまった……ということなんだろう。戻せそうにない。
地面は、いける。ギリ生きてる木々は、いける。
その前に、アマネの残滓は、吸収出来そうだ。再利用させてもらうか。
フルーデル戦でのアレ、結構応用出来そうだな……
で、呪い持ちとかいう竜族だが……
神力の残滓は、そこまで危なそう……
でもないが、竜族みたいにならないまでも、何か悪影響があってもよくないしな。
コイツもリセットしてしまおう。
うむ。環境保護は大事よね。
とりあえず練習だからな。
ひとつひとつ時間はかかるが、順番に再起点をゆっくりと設定していく。
中々に集中力のいる作業だな。そりゃ勢いだけでやれば、下手したら死ぬな。
いくらキレても無茶はいかんね。気をつけよ。冥土送りは嫌だかんなー。
さて、ポイント設定完了! 一気に神力を流して……
リセット!
やはりというかなんというか。
ゴソッと神力が抜けていく感覚。広範囲はキッツイね!
「あれ? ボス? だいじょうぶ? たくさんちからぬけた?」
「お、おう。なんとか大丈夫だ! 戻ろうかー。」
「はーい!」
さーて。後は竜族の残骸処分だなー。
――――
――
郷に戻り、館に入ると。
「……うぁあぁ……ご主人様……! どちらへ行ってらしたのですか……!」
ああ……またアマネが泣いておる……
マジで生まれたばかりの我が子を思い出すぞコレ……
ルビィはコレを察知してたのか、ウィトの朝練に参加しにさっさと行ってしまったしな……
いや、ルビィは真面目に訓練してんだよな。それはほんとに偉いと思うぜ……。
さて。オレはオレで……
泣く子を黙らせなければ……だな。
「おお、昨日のな、竜族が破壊した跡あっただろ?」
「……ぐずっ……はい……」
「アレをな、戻せるところだけでも戻そうと思ってな……?」
「……ぐずっ……私も……ご一緒に……行きとうございました……置いて……行かないでくださいませ……」
ふぁー! 泣くだけのちっちゃい赤子なら抱っこでもおんぶでも最悪連れていけるけど……
喋るでっかい赤ちゃんだコレ!
んーまぁ……
急激に感情が芽生えて、自我みたいなモンを作り替えてる最中って感じなんだろうな。
ちょっと不安定なのは仕方ないか。
「分かったよ。ごめんな。置いてかないから。」
「……ほんとうですか……?」
「おお、ほんとほんと。」
うん、いや、ほんと、気をつけるからさ!
そのうるうる上目遣いやめて? それヤバイんだって! 魂削れそうなんだわ! 寿命縮むわ! 寿命なんてないけどさ!
「……わかりました。」
そう言いながら、もはやとても自然にしがみついてくるアマネ。
今度は正面からなのね。
はぁ……。がんばろ。
あ、そうだ。
神スマホを取り出して、ポチリ。
「あら、レイリィさん。どうしました?」
相変わらず呼び出し音はないし、すぐ出る母神様だぜ。
「いや、昨日竜族倒したんすよ。で、処理してもらおうかなーって。今からエルヴァルド戻りますね。」
「ああ、竜族の残骸処分ですか。そういえばレイリィさん、火神と知り合いでしたよね。竜族の残骸なら、火の海にでも沈めたら大丈夫なので、頼みに行ってくださいね。」
うお、丸投げモードきたこれ。
「……そうすか。わかりました。んじゃまぁ、火神さんとこ行きますわ。」
「はい。お気をつけて。」
ふーむ。ほんとに大体は把握してやがんな、あの女神はよ!
「……ご主人様、グエン様のところに行かれるのですか?」
「ああ、そうだな。」
「……私も……」
「うんうん。そうね。アマネの故郷だしな。」
「……故郷……」
おー、無表情っぽいけど、前と違って硬さがないな。ちょっとぽへっとしてるわ。
はぁー。くそっ! 美少女が過ぎる!
「レイ殿や。火の星へゆくのかえ。」
あら、フウカさん……? 耳聰いですわね。聞いてましたか……。
どうせ……
「こなたも同行するぞえ。」
DA☆YO☆NE! 分かってた! 分かってたとも!
じゃあ、ウィトと……ルビィをお留守番させとくかぁ……。
アイツらグエンさんと面識ないし……
変な事して怒らせたらヤバイしな。
それに……ウィトひとり残してだと、ちょっとリンコが気の毒だしな……。
ま、一応伝えとこうかね。また騒がれるといやだしな。
さてと、準備準備ってね。
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