神狐の郷で祝勝の饗宴!おかわりは所望していない件
神狐の郷を襲っていた? 竜族をなんとか退治した後。
しばらくすると、郷の神狐たちが次第に戻ってきていた。
どうやら、大狼族のところに行ってたらしい。避難、そういうことね。納得。
「レイリィ様、ご無事でなによりぞえ。此度の事も感謝いたすぞえ。」
「おー! リンコ! 久しぶりだなぁー! 元気そうでよかった!」
金色の毛並みの美しい狐。ふさふさのしっぽがモフりヘブンだろうリンコである。
ちなみに、神化 (人型化) 出来る。姿的には美少女だ。いつも全裸だがな。
「……久しぶり? 郷を出られてから……まだ僅か2ヶ月ほどではないかえ?」
おん? まさかコイツらの時間感覚も……ちょっと神寄りなのか……?
そういえば……
リンコって三十路オーバーで、まだ少し若い扱いだったっけ……。
ま、うん。人間的には、2週間とかそんな感覚かもな。
それくらいだと久しいとはならんか。
「ひとまずお茶でも出すゆえな、ごゆるりとしておればよいぞえ。フウカ様より、今宵は宴会と申し付けられておるえな。準備いたすえ。」
「おお……そうなのか。」
まぁ、天災と称される竜族の犠牲者無しの撃退、どころか退治成功! だもんなぁ。そりゃそうなるか。
「んじゃまぁお言葉に甘えようかなー。」
「うむ。是非そうして欲しいぞえ。さ、案内いたそうかえ。」
てちてちと歩きだす金色の狐。神々しく美しく、そしてモフりヘブン。
うーん。よき!
別に勝手知ったる2ヶ月暮らした郷である。案内なんか今更されなくても大丈夫なんだが、揺れるしっぽの先導はとても魅力的なのである。
誘蛾灯のように、惹き付けられるものがあるなーと、素直に後を追う。いや誰が蛾か!
――――
――
「さ、レイ殿や。次はこちらを食すがよいぞえ。」
「ご主人様……こちらなどいかがでしょう。とても美味にございますよ。」
「ハフハフ……おいしー」
「ニャふふー。 ついにウィトの時代がきたニャ!」
ヤバい何これカオス。
いや、ルビィはいいんだ、ルビィは。
オレの左隣で、目の前のご馳走を夢中で貪ってる。嬉しそうで何よりだ!
だが、右手に座るアマネ……は、何故か腕を絡めてて……
膝の上にはウィトがいて……
オレの頭の上には、フウカのやわらかくて重たいものが乗せられつつ、左手でそっとホールドされておる!
なんなのこれ。なんのカオス?
え……せっかくのご馳走の味が……全然わかんない……
「どうしたのえ? レイ殿。動きが止まっておるえ。森の恵みをふんだんに使ったレイ殿発案の料理ぞえ。好きであったろ? さぁ……存分に……」
なんだろう。もうこのエロ狐に何を食わされそうになってるのか分からないぞ……?
ぽよぽよと、思考力がどんどん奪われていってる。
頭が回らねえ! 思考回路はショート寸前! 今すぐ帰りたいよ!
「ご主人様……私も……食べてくださいませ……」
ア……アマネちゃーん? 私、"の"だろ!? そうだろ!? 小声で接続詞抜くな! 魂抜かれるわ! 自分の顔面偏差値考えてくれ!
「ゴロゴロゴロゴロ……うニャー。」
ウィト! お前は白虎だろ! なにをノド鳴らしてんだ!
鳴らすなら鳴らすで人型はやめろ!
あ?! 今、頬擦りしたな?! 大人しく飯食ってろよ!
お前性格はアレだが、見た目は美少女なんだぞ! バーカ!
「おや、レイリィ様。お楽しみ頂けておるご様子でなによりぞえ。」
「リンコ……」
た、助けに来てくれたのか……? 頼む、なんとかしてくれ!
「リンコ。そなたもレイ殿に申したき旨、ありようたえな。」
「はい。フウカ様。こなたもレイ殿より死の淵より救ってもろうた身ぞえ。以前は御礼の時もなく旅立たれてしもうたぞえ。」
ん……? 大猫族襲撃の時の話か?
「こなたも精一杯御奉仕させてもらうぞえ。」
いやお前まで何言ってんだ……
いらない……いらないから……これ以上……
「しかして、四方が塞がれてしもうておるぞえ……。リンコは困っておるぞえ。」
「んむ? リンコこまったのー?」
その言葉に、ルビィが反応した。
ルビィ、仲間に結構優しいんだな。
多頭飼いしてなかったからなー。知らんかった。
てか多分、転生してからの群れ生活で自然と培われたんだろなー。
やっぱいい育て方をされたんだな。シンザーリルさんよ、感謝だぜ! また挨拶行くか。
「ルビィ殿。リンコは困っておるぞえ。」
「たいへんだー。どうしたのー?」
「うむ。とても美味しい料理があちらにあったのであるがの、持ってこれなんだのえ。ルビィ殿にも食して欲しかったのであるがの……。リンコは困っておるのえ。」
アレ……ちょっと……流れが……
「え〜! まだおいしいのあるの〜?」
ルビィはすくっと立つと、リンコの指差す方へ行ってしまった……
ルビィ……オレの……最後の希望が……っ!! くうっ……! 策士め……!
「場所が空き申したぞえ。さ、レイリィ様……」
スっと腕を絡めてくるリンコ。
や、やめるんだリンコ! お前今……全裸! 全裸美少女だから!
く……くっそー!!
かくなる上は……性別リセットだ!!
「む……?」 「あ……」 「ニャ?」 「なんと……」
4人とも驚きの声を上げていたが、オレは知らん!
くそー。風呂以外でこのワザを使う時がくるとは……
過去映像の再設定ではない、オレ自身の存在の再定義とでもいうこの性別リセット。
そこそこ神力使うんだよぅ。
まぁでもこれなら、必要以上動揺しなくて済むぜ!
さぁ、存分に来るがよい!
受けて立つ、この美食の饗宴をな!
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