郷帰りの温度差がひどすぎる件
「おー。これが火の神殿の転移石かぁー。」
白! ってイメージのエルヴァルドの中に、赤! って感じの建物があった。
立派なお社といった風体である。
うん。この漂う和風感。
周りと見比べれば和洋折衷が過ぎるが、不思議と違和感なく存在してる。
ま、神の御業ということでね。深く考えるのはやめよ。
多分築2000年くらいだろうし。
「んで、ルビィとアマネは、フウカに連れられて、ここに来た、と。」
「はい。」 「そうだよー!」
「なるほどなぁー。ま、じゃあ神狐の郷行きで頼むよーアマネ車掌ー」
「……車掌?」
頭の中に、はてなマークがたくさん浮かんでそうな顔をするアマネ。
前はほとんど表情変わらないかったんだが……。まぁこれはこれでいいか。
無表情でも美少女だったが、表情が変わる方が親しみがあるよな。うん。
赤い社の前に聳える巨石に手を当てるアマネ。
オレとルビィは、はぐれないようにアマネにくっついて……
というか、アマネがオレを掴まえたまま離さないんだが……
まぁソレはいいや。
「行きたるは、神狐の郷」
アマネがそう言った瞬間、一瞬意識が飛ぶような感覚がする。
あー、転移石、こんなだったわ。
そして再び意識が戻ると……
「うぁー。帰ってきた感あるなぁー……」
目の前には巨大な注連縄が巻かれた転移石、見渡せば、石畳の道と階段、赤い柱、和風の神社を思わせる建物、町並み……
――「グオオオオ!!!」
そして、ぐおおお。
……ん?
ぐおおお? って何?
「ボス!」 「ご主人様!」
「ルビィ! アマネ! なにこれ?! なんの声?!」
「もりのほうだよ!」 「強大な力を感じます……!」
「な、ま、また敵襲かよ……! くそっ! 行くか!」
「「はい!」」
感慨にふける間もなく3人で走る。
巨大な気配を撒き散らしている、デカい咆哮を上げている存在のいる場所へ。
幸いにも、方向的には郷の中ではない。
クコの森の中、少し遠くても……もうもうと黒煙を上げている場所が自己主張している。そこに違いない。
神力バフMAXで走ると、足の速いルビィやアマネにも、ちゃんとついていけた。
オレも……なんだかんだ成長したらしいや!
アースガルズの荒野を這いずり回ったかいがあったぜ!
「ニャー! ヤバいニャ! 呀音!」
「ウィトや……もうじき郷より援護が来るはずえ……! なんとか……! くっ……」
「あぁー! フウカさまぁー! しっかりしてニャ……! ウィトだけじゃ無理ニャ……! ニャみの力があんまり効かニャいニャ……! あぁ……うニャー! でもやるしかニャいニャー! 呀音!」
「グオオオオ!!!」
――ゴバァアアア!!
必死に走ってたどり着いた先の、その光景は……
地に倒れ伏した白銀の九尾美女と、慌てながら奮闘する白虎……
そして、炎を口から吐く……竜……だった。
「ご主人様! 竜族です!」
アマネが小さく叫んだ。
「うぅぅぅ……紅流ー!」
同時に淡く光を発して狼に戻り、木々を足場に跳躍しながら竜に神炎を吐くルビィ。
そしてアマネが刀の柄に手をかけた――その瞬時に、アマネの姿はオレの目の前から消える。
「ニャ! み……みんニャ……?!」
「うっ……応援かえ……」
身体を起こそうとするフウカに、オレは駆け寄った。
「フウカ! すぐ治す!」
「えっ……」
抱き起こしながら、頭の中で瞬時に過去映像処理。
よし! ここでいいな。リセット!
「ま……まさか……レイ殿かえ……?!」
「ああ……。ただいま。」
「やはり、無事だったかえ……。良かったえ……。」
フウカはそんな風に呟くようにしながら、オレに手を回してきた……。
あ、ちょ……まて……! アンタ……たわわがすぎて……やわらかすぎて……あ……
じゃねぇって! そんな場合じゃねぇから!
「フウカ! とりあえず先にこの場を片付けるぞ!」
「……そうえな。」
てっててっててっててって
「レイリィさまニャー!」
――ドンッ!
「レイリィ様! 生きてたニャ! よかったニャ!」
「お、おお、ウィト」
横からタックルかましてきたウィトが、ボロボロ泣いていた。
うぅむ……! 突き放しにくい……っ
くっ……そ、そんな場合じゃないんだが……!
「黒極!」 「紅流!」
「グオオオオ!!」
ほら、そこでアマネとルビィめっちゃ戦ってっからさ!
アマネなんて神具の奥義使ってんじゃん。
超重力の奥義で……足止め程度か……。
それ程の相手か……。神族にも迫る強さだという噂の竜族、ね……。
やっぱいつまでも任せきりじゃ不味い!
「すまん、2人とも! 感動の再会は後回しで! 先になんかあのヤバそうな奴、何とかしないと、な?」
「うニャぁ〜。じゃあ後でニャでニャでして欲しいニャ〜。そしたらウィトがんばるニャ〜。」
この場面で……コイツ……! オ、オレの足止めをするんじゃない……!
「ふふ……。この未曾有の火急的危機に颯爽と現れて……レイ殿……こなたを惚れさせたいのかえ?」
いや……ふ、普通に来ただけだ! 帰ってこれたからな!
ね、狙ってなんかナイモン!
フウカから手を離し、スっと立ち上がる。
「あん……もう終わりかえ……まだ……いけるであろ……?」
なっ……ばっ……! こ……! この……エロ狐がぁーー!!
「影喰!」
「グッ……グオッ……」
ほら! アマネがっ! めっちゃ奥義出してんの! アレは強制的に神力枯らす技だ! 色気出してんじゃねぇっての! オレの気力枯れるわ!
もはや答える気力を失ってきたオレ。無言でスタスタ竜の方へ。
「レイ殿……いたすだけいたして……すぐにゆくのは無作法ぞえ……?」
あははー? さっきから台詞が変じゃないですかねー?
「うニャあ〜。ウィトもまだ可愛がって欲しいニャ〜。」
はっはっは! お前を可愛がった覚えはないんだよ、ウィト!
あーっ! くそっ! コイツらパワーアップしてやがる! 僅か2ヶ月ちょっとで、色んな意味でな!
スっと背中から、蒼く輝く透明な野太刀"雪月花"を抜く。
すうっと神力を循環させ、刀に集めた。
「ルビィ! アマネ!」
「「はい!」」
オレの掛け声で飛び退く2人。いい連携だ!
よっし、いくぜ! 分子も凍る、絶対零度!
「うぅぅぅおぉぉお! 喰らえやぁあああ!」
――ビュアアアッ!!
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