距離破壊は時間の問題
隣の神殿に行けと、母神様に言われ、神殿の外へと向かう。
思えば、神殿の中で目覚めてすぐ、気付いたらテイルヘイムの成層圏にいたからな……
徒歩でエルヴァルドを散策なんて初めてなのである。
「ふひひー。ボスとおさんぽー。ひっさしぶりー。」
ルビィは明らかに嬉しそうである。
うむ。オレも無事会えてよかった! 後で狼に戻ってくれ! めちゃくちゃにモフる!
今は人型っぽいからな。モフれなくていかん。
まぁ、美少女ではあるんだが……。
で……
「ああ……。ご主人様……。」
ほんと……アマネ……どうした?
いや……オレの右腕にしがみついて離さないんだが……?
どうなってんだこれ……? なんかうっとりした感じの顔だし……。
ま……いいか。久しぶりなわけだし、嬉しいんだろ、多分。
わざわざ水をさすこともあるまいよ。
「おー。これがエルヴァルドかぁ……。」
ソールフレイヤの神殿は、白! って感じなんだが……
外は外でとりあえず、白! だなぁー。
雲の上だわ。地面が雲。オレが寝てたベッドみたいなやつだなぁー。
――サクッ。
「おぉ……普通に固めだ。」
一歩踏み出してみたが、意外にもふわふわってわけでもない。
「ご主人様は、初めてですか。」
「あー、ほら。オレは目覚めてすぐテイルヘイム行きだったしな。」
「ねー! ルビィとあったんだよねー! あれ? ねーボスー! はやくー! なんでアマネにくっついてるのー! おーさーんーぽー!」
ルビィは飼い犬モード全開になってるようだ。
ちょっと距離が空いていたことに気付いたらしい。
お散歩の催促がきた。
ま、行きますかね!
――――
――
隣の神殿……
も、白! って感じだ。
石柱が立ち並んだ石造りっぽい神殿。
だが、屋根の上から滝みたいに川が流れてたり、花やら草やらがあって、少し自然の香りがする。
ううむ。オレは元日本人だし、和風が一番ではあるが……
これはこれでいいなぁ。
白と緑と青のコントラストに、赤や紫や黄色などの花々のアクセントが効いている。
控え目に言って、厳かなオシャレ感が半端ない。
「ご主人様、参りましょうか。」
「ボースー! おそいー!」
「おお、すまんすまん。てか、ここ、誰の神殿? 勝手に入って大丈夫なのか?」
「あ、それは……」
神殿に、一歩踏み入れた瞬間だった。
「やーっときたわね!」
「……えっ?!」
オレは、知らぬ間に神殿の内部らしき場所に立っていた。
腕にしがみついていたアマネも、はしゃいでいたルビィもいない……!
何が起こった?! さっきまで、オレは神殿の入口にいたはずだ……
いや……オレはわけがわからないが、今起こった事をありのままに振り返ってるだけだ……
そう、DI〇に初めて会った時のポル〇レフのようにな……
で、目の前の女……おそらくは女神……
コイツは一体……誰なんだ?!
母神様に伝言したくらいだ……敵ではないはず……
うーん、亜麻色のストレートヘア、ヘーゼルアイ……
なんかちょっとオレの見た目に被った美女だな。
18か19くらいに見えるが……
「もー。なによなによー。そーんなジロジロみちゃってさぁー。あ。わかったー! お姉ちゃんが魅力的すぎてぇ、見蕩れちゃった? あははっ」
うぉっ……! だいぶ濃いぞ、コイツ……! のっけから濃厚だ……! 何日煮込んだスープなんだ?!
「いや……ちょっと……初対面では……? ないかなぁーと……」
「あーっ。ひっどーい。やっぱ忘れてたー。もー。レイくんったらぁ。」
何やらくねりくねりと身体をひねるアクションをしておる……。
いやぁー? こんな濃いキャラ、ホントに会ったんなら忘れないがなぁ?
でも、オレの事知ってるっぽいし……
あー! わからん!
「もー。しかたないなぁ。」
そういうと、女神は歩み寄ってきて……
「んっ」
オレの頭を両手で持って、おでことおでこをコッツンコ!
ってなんでやねん!
……あ、あれ?
「あ、アイカフィアー……ねえさん……」
「んふふー。思い出した?」
生意気そうな美人顔の笑顔も、中々の破壊力だった。
そうだよ! 夢の世界で会った、"時の女神"だわ!
あー、そうだったー。会った事忘れるとかなんとか言ってたわー。
リセットのリセット……ロード、使えるようにしてくれてたわ! そういえば、この女神が! 再逆行……とか言ってたっけ。
「思い出したよ! ねぇさん! 色々……ほんとに助かった! ありがとう。」
「んふふー。いいのよいいのよー。可愛いお・と・う・とのためなんだからぁー!」
ふ……ホントは叔母なんだが……言うとキレるからな。禁句だ。
「あぁ、でもエルヴァルドに来たら会いに来る約束だったか……そうだった。」
「そそ。でもさぁー。多分忘れてるだろうなぁって思ってぇ……伝言しておいたんだよぉー。」
そう言いながら、オレの頭をつかんでた両手をするりと後ろまで回してきた……。
「ああん……もう! かわいぃーー!」
うわぁぁぁ! だ、ダメだコイツ! 敵じゃねぇけどヤバいヤツだ!
チョロい系女神だとは思ってたが……
もはやチョロを全力で振り切ってやがる!
距離感がおバグりなさっておる!
「んふふ〜! かわいぃーなぁーもぉー! んーっちゅっ」
「ご……ご主人様……!」
「あ……アマネ?!」
「あー! 鬼っ娘もう来ちゃったー。もっとレイくん独占したかったのにぃー。」
あ、アマネが……なんか怒ってる感じだ……空気がピリピリしてる……。
いや待て待て……ヤバいヤバい! 相手は創世十二神序列3位のバケモンだ!
現状オレたちが束になってもかなわねぇ……!
「あ! ボスいたー!」
「ルビィ!」
「もー。犬っ娘まで来ちゃった。あーあ。でも、さすがレイくんの選んだ娘たちね。優秀じゃなーい。」
選んだ……? いや……別に選んだワケでは……
なんか気付いたら集まってきてたというか……
「ご……ご主人様を! お離しください!」
「えー? もう? アタシだって久しぶりなんだけどなぁー。」
「ひっ……久しぶり……でも……そ……そのような……くっ口づけまで……うっ……うぅぅぅ……」
「あっ……泣いちゃった。」
あ……アマネ……なんか……めちゃくちゃ泣くぞ?
え……マジで情緒どうなってんの?!
いやコレ、ルビィに聞いても仕方ないし、早いとこフウカに聞かないとだ……!
マジで意味がわからん……!
「アマネー。かなしいのー?」
「うぅぅぅ……ルビィ様……」
おお。ルビィが時々見せるオレ意外に優しくするやつだ。
「あーあ。しかたないわねぇー。もー。レイくん、また力が欲しくなったらおいで? 今日はちょっとしか渡せなかったし。」
「あ……う、うん。」
あれは……そういう事だったの……か?
うーん……。
「じゃあね〜」
と、アイカフィアーが言ったと思ったら。
オレたち3人は、また神殿の入口に立っていた。
早送りでもしたんだろうか……?
それとも、時を止めた……?
時空移動とかいうやつ……?
まぁオレの能力とはまた違うから、よく分からんな……。
そもそもレベチすぎる。
「……ご主人様……。」
あら。まーたこのひと、しがみついてくるよ。
うーん。まぁいいかぁ。早く神狐の郷いこ。話はそれからだな。
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