2.31話 戦火の虹の端で
前回の話 : そぉい!!
――ビュォオオンッ!!
「うおおぉ……!」
「キャァアア……! レ……レイぃ……!」
とんでもない風切り音の中、舟は虹の橋を進む……
つーか! ジェットコースターより全然ジェットなんだが! 戦闘機かよ! コックピットはどうした!
ふざけんな! ガングめー! 最後の最後までやってくれるぜぇー!
永遠の別れみたいな話でしんみりしてたオレの気持ち……全部ぶっ飛んだわ!
あぁ! 物理でな!
SOYじゃねんだわ! 誰が大豆か! 全然JOYじゃねぇーっ!
巨人に比べたらオレたちなんか豆粒だってか?! うっせぇわ! 串外さすぞ!
視界に何も映らない程度の速度で「そぉい!」と、ぶっぱなされたっぽいオレたちの舟。
ニケは必死にオレにしがみついている。アイギスが硬い。
全く……優雅な舟旅はどこ行った?
……いや、そもそも波乱しかなかったわ。そうだった。
最初っから泥舟だったわ。何が虹を渡る舟か。くそう。
それにしても幸いコースアウトはしないっぽいが……
どうやって止まるんだ? これ……。 マジヤバない?
いや、オレだけなら問題はナシ! ……なんだが……
ニケがなぁ……アイギスで大丈夫か?
まぁ……大丈夫かもなぁ。
一応、レイリィ印の神具だしなぁ。
オレが軽く殴るくらいじゃあ全然平気だし、フルーデルの水レーザーも、距離あれば防げてたしなぁ。
よし!
「ニケー! 聞こえるかぁー?」
風の音が酷すぎるから、バイクのタンデム時よりデカイ声を出す。絶叫系かよ。
「……えッ? な……なに?」
ニケも必死の形相で聞き返してくる。
うん。今はその顔でも仕方ない。仕方ないさ。
「今から30数えたらぁ! アイギスを展開しろぉー!」
もうなんか、すっかり下降が始まってるようで、地面に吸い込まれるみたいに……
茶色っぽいモノが近づいて来ていた。
「わ……わかった……!」
「んで、オレが投げるから! 浮いたらタラリアで飛べ!」
「な、なげ……? う……うん!」
ああ……言ってる間に……もう……
5
4
3
2
1……
おぅらぁー!!
力任せに、ニケを上部後方へぶん投げた。
――チュドーン!!
「レ……レーイ!!」
――――――
――――
――
「痛っ……たくはないんだよな……。」
ついつい口癖みたいに出るだけで。
てか、ニケはどうなった?! おそらくは大丈夫だと思うが……
と、辺りを見渡してみた……
のだが……
「あれ……?」
感覚としては、転移石で移動してる最中に止まってる感じ、だった。
いく筋もの細い光が走ってる、謎空間……に、オレはいるようだ。
これは……そうか……。
……どうも、地面に突っ込んだ勢いのまま、光の道の中に入ってしまったようだった。
まぁ……あの勢いだったしなぁ……仕方ないわなぁ……。
フェニヤに空に打ち上げられた時より全然速かったしなぁ……。
多分最低でも300kmくらいは出てただろ。
なんせ、ひと山をものの数分……だったしな。
分単位かも怪しいが……。
まぁそれはいい。
外からは淡く光って見えた柱だったが、内部は意外にも暗い。
もう少し感覚に気を巡らせてみると……
どうにも落ちていってる感覚だった。
不味い! と思って、細い光に手を伸ばして……掴んだ。
つ、掴めるのか、コレ。
いや……それはいいんだ、今は。
ニケは……どこだ?
いや……無事は無事だろうが……。
光の道には入ったのだろうか?
それとも……アースガルズに残ったか……?
いや、ニケの事だ。
オレの姿が無い……
とか、柱に突っ込んだところを見たり……
とかなら、迷わず入るんじゃなかろうか……?
けど、さっきから……細い光を掴んでるわけだが……
この仕様……神力を消費して移動する感じだ……。
今のニケだと……おそらく操作が出来ないだろう。
そして、非常に不味い事に……
行き先が分からないとどうにもならない転移石を、もっと不親切にしたみたいな感じだぞ、コレ。
前、フウカが言ってたな。光の道の転移は、成功率が低いって。
こういう事か……。
どこに繋がってるのか、いや、繋がってるかすら分からない道のどれかを選んで行くしかない。
そりゃ狙った場所に出る方が難しいわ。
いやぁ、正解の分からない人生そのものって感じですね!
ってなんでやねん! ふざけんな!
はぁー。
つまり……オレは狙ってアースガルズの出口に行くことは、もう無理だ……という事だ。
……詰んだ。
クソっ……!!
ニケ……すまん。
アースガルズから出たら、いっぱい美味いモン……食わせてやろうと思ってたのに!
ニケは……ルビィたちと違って、時間的制約がデカイ……
ニケは……人間だ。
高々100年程度しか生きられない、人間なんだよ。
これは……もう二度と会えないかも……知れんな……。
はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ………………
どうしてオレはいつもこうなんだ……。
リセット出来る神ったって、世界時間遡行や転移みたいな真似は出来ねぇし。
あー! こんなんばっかだな! ちくしょう!
……ふぅ。
でも、ニケには、アイギス、タラリア、勝利の剣がある。
神族やら巨人やらみたいなのが相手じゃなければ……
生きるくらいは出来るだろう。
寿命まで、しっかり生きてくれるだろう。
それだけは、救い……かも知れんな。
ん。何も出来なかったわけじゃないな。
よし。
とりあえず、どれか選んで……行きますか!
お読みいただけまして、ありがとうございました!
今回のお話はいかがでしたか?
ここで第二章[完]です。
お付き合い頂きありがとうございました!
引き続きよろしくお願いいたします!
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