2.25話 神殺し
前回の話:元女神……
殺せとか吐かしてきた、"元"河川の女神フルーデル。
川から離れてるからか、巨大化はしなくなったんだが……
代わりに、人っぽくなってきてんだよな。
透け透けの人型。
ちょっと不気味ではあるが、シルエット的には確かに女神なんだろうさ。
以前はスタイル良かったんすね。ずいぶんとセクシーなボディラインでいらっしゃる。
まぁ……神族ならそんなもんか。
絶対数は少ないが、今まで見た神族で、見た目が悪かった奴はいないしな。
神化してもそうだ。ウチの面子 (オレだけ迷子だが) も粒ぞろいだしなぁ。
地球にも伝わってた話に、人間は神の劣化コピー的な話があったけど、アレはどうなんだろうなぁ? 本当なんだろうか?
まぁ、魂をエネルギーにする為の家畜だから、似せて創る方が良さそうではあるのか。
オレが人間だった頃は、神なんてモンは人間の願望が生み出した幻想だとしか思ってなかったけどさ。
むしろ、現実に蓋をした感じだよな。笑える。
オレが豊穣の神とかだったなら、盛大に草を生やしているところだな。
「……は……やく……殺……」
あ、そうだわ。
目の前の女神モドキを何とかしなくてはなんだったわ……。
考えごとしてる場合じゃないっすね。そうっすね。
とはいえだ。
仮に、殺害に対する精神的負荷が無いものとして……
どうやって殺す?
とりあえず、爆散は意味なかったな。
で、リセットしても、すぐに戻った……
……ん? いや、待て。化物には戻ってはないな。
神族だったもの、くらいのところに戻ってるのか。
神族としての終わりの時点だな、あの感じ。
神族って……そういえば、どうやったら死ぬんだ?
オレもさっき腹に穴開けられたけど、神力がちょっとずつ漏れてんなぁーってくらいで、痛いってほどでもなかったしな……
あんなの人間なら動けないだろうし、今頃死んでても不思議はないよなぁ。
つーか、内臓的なもんはどうなってんだろ? 人間とは全然違うんだろうなぁってのは、分かるが……
んー……とりあえず今それは置いておくとして。まさか自らを解剖するわけにもいかんし。
母神様、神族でも死ぬことはあるから、神能・神力鍛えろって言ってたけど……
フウカもグエンさんもアマネも、神力切れたら死ぬから気をつけろって言ってたな。
まさか……神力切れないと死なない?
実体験だと、成層圏らしきところから隕石みたいに地表に落ちても、横方向に何kmも飛ばされて岩山にぶつかっても、傷一つない。
人間の武器で斬られようが刺されようが、傷一つ付かない。
となると、やはり神力が鍵だろ。神力枯渇で1ヶ月とか寝込んだしな。
んー……。
アマネが丸一日かけて岩の化物を斬り続けて、核を壊したとか言ってたか?
核ってなんだ?
それは、心臓的なことか?
神族の心臓って、血液じゃなくて、神力を循環してる?
神力使う時のあの感じ……それか?
んー……。
その仮説が正しいとするならば、あの水の塊は神力が枯渇してしまえば死ぬということだな。
むしろそうじゃないと死なないまである、と。
神力枯渇……か。
使い切らせるか、奪い取るか……どっちかという事か。
「……ぐっ……あ……ぁ……ィ……」
フルーデルは、胸を掻き毟るようにしながら、苦しそうな声を上げている。
「ねぇ……レイ……化物、なんだか苦しそう?」
「そうだな……。」
はぁ……クソっ!
前世では……無表情だとか、無感情だとか、リアクション薄いだとか、冷血人間だとか、何考えてんだか分からんだとか……
散々言われたオレだけどさ……
感情だとか、心だとか……ちゃんとあるんだっての! 他人に見せたくなかっただけだ!
「ニケ。オレはアイツにとどめを刺さないとだから、離れてくれ。また暴れると、大変だからな。」
「う……うん。わかった……。」
ニケはふよふよと、森の方へ飛んでいく。
オレはそれを見届け、そしてフルーデルに向き直る。
前世でいう所の、安楽死措置みたいな事かねぇ……コレ。
オレはタダの小市民、クソ庶民だったんだ。
でも……人間として生きていた以上、誰かが肩代わりしてくれてただけで、他の生命を奪って生き長らえていた事くらいは知ってる。
人間たちはそうして、魂を育て上げて……神々に喰われるということ……か。
家畜化現象とはよく言ったもんだぜ……。気付く人は気付くんだな。
で、そんな家畜から神になったオレは……?
"正しさ"なんて……そんなモンは無いのかもしれないな。
母神様の言ってた、"自由に生きたらいい、他の神々はそうしている"ってのは、そういう意味なのかもな。
人間の社会ですら、自身の正しさは自身の中にしかなかったわけだ。
いくら社会正義やら法やらを謳って、個々を制御しようとしたところで、それは正しさの抑圧でしかない。
アズリア神族の、"神こそが法"みたいな、このアースガルズのやり方だって、ヤツらの"正しさ"なんだろう。
はぁーあ……。
人生も難しかったけど、そんなオレにはこの神生も難しいみたいね。
わかったよ。フルーデル。
「……ぅ……ううぅぅぁ゙……」
しっかり折り合いつけて、割り切って……
無に帰してやるからさ……
神界大戦から2000年以上だっけ? 長く……苦しんだんだな。
お疲れさん。
そんな気持ちを込めて、オレはフルーデルに手を伸ばした。
水で出来ていると思しきフルーデルの身体。
その水は、粒子の集まり……だが、濃密な神力の塊でもある。
上手くすれば、自分の神力と同調させてしまうことも出来るかもしれないが……
質を合わせるという神力操作は、神様歴僅かなオレには簡単なことではない……が……
神々は人の魂を神力として喰らうことが出来るんだ。
今のフルーデルを神力の塊として捉えるならば、やってやれないことはないはず!
「……ああ……や……と……」
リセットの神能を使う一歩手前、読み取りの作業の感覚で、フルーデルを包み込む……
さっきのリセットでもそうだったが、フルーデルには神だった頃の記憶なんて無い。
この状態になったところが、根源だった。
少しずつ、少しずつ、互いの神力を合わせていく。
フルーデルは、時折苦しそうな声を上げるが、特に抵抗を見せなかった。
そんな"人型の水"は、ぽやっと淡く光り……
次第にオレの中に溶け込んでいった。
――パシャアッ!!
水の塊から全ての神力を吐き出させた時……
唯の水となったソレは、
地面に落ち……
霧散して……
そして虹を創った。
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