2.21話 お使いクエスト受領
巨人の長ガングから、ビヴロストを渡る条件を出されたオレたち。
いわゆる"お使いクエスト"的な感じっぽい。
しかも、噂の化物退治ときた。
「化物退治〜?」
そういえば、そんな存在がいたんだったな、この世界。
旧神大戦の負の遺産?だっけ?グエンさんが説明してくれたんだよな。アマネも退治した事あるんだっけ。
てことは、火の星にはいるんだよな。
てか、化物……アースガルズにもいるのか。
ネイドス全体にいる感じなのかな?
んー……エルヴァルドは……最初に目覚めた神殿しか知らないからなんともだが……。
多分、噂の最高神が放っておくわけはないと思うんだよな。いたとしても、配下か管理下だろうな。
グエンさんから聞く感じ、最高神とかいう奴、支配欲とか強そうだしなぁー。絶対ヤバい奴だわ。
まぁ……それはさておき。
どの道、帰るにはそれしかないってんなら、やるしかないな。リセットで無力化すればいいんだしな。
「おっけー。やってみるよ、化物退治。山に登れば化物がいるんだよな?」
やっと掴みかけてる帰還のチャンスだ。
良いように使われてるとしたって、乗らないわけにはいかないよな。
「ほっほっ。請けなさるか。重畳、重畳。とはいえ、小さき者の足じゃ。今から向かっては夜中ともなろう。今日は泊まっていきなされ。」
泊まっ……て……け……?だと……?!
いやそれだから野宿だっての!
え?なになに?ここまでの道中は岩と硬い土しかない荒野で野宿だったから、草のベッドに喜べばいいの?
そういうこと?!
……んー……ま、まぁ、そうだな。
ゴツゴツした岩肌に、石を枕に横になるよりはいいな。
格段にいい。
なんせ緑なんて最後に見たの3ヶ月近く前だ。
ニケなんて人生初だろう。
……ん?なんか楽園な気がしてきたかも?
「ん、じゃあそうするよ!フェニヤ!下ろしてくれ!」
「あいよ」
座るガングの目の前、地上50m付近から、高速昇降機のように一気に地面に運ばれるオレとニケ。
ニケさんや。そんなに怯えた顔しなくても、キミ、タラリアで飛べるよね。
必死に腕掴まなくってもいいんだぜ?アイギス硬いからな。
フェニヤによって地面に降ろされたオレたちは、中断されていたご飯の準備でもしようと思ったのだが……
「そういえばアンタたち、メシ……ひっくり返して悪かったね。代わりにこれ、やるよ。」
と、フェニヤが葡萄らしきものをひと房くれた。
それは、全長がオレの身体程あるものだった。
そして一粒がオレの握り拳よりもデカい。
「おお……。この世界で果物なんて、始めて見た……!ありがとうな、フェニヤ!」
「じゃ、アタイはメニヤと交代してくっから。」
フェニヤは、手を振りながら、元いた方向へドカンドカンと歩いていった。
もちろんその振動で、いちいちオレたちは浮かび上がったんだけどな!
「さてと、飯の準備するぜー?今日はデザート付きだー!あ!ニケ、果物って知ってるか?先に一つ味見すっか!」
「え、果物……?その大きい……丸がたくさんのやつ?」
まぁ知らんだろうな。
と、いうわけで!
二粒房からもぎ取る。そして、ヘタ穴から皮を少し剥く。
「ほい、これ。中身食べてみ?」
「う……うん。」
ニケに手渡し、そしてオレも一口……
……!?!?
酸っぱ!!!!
……さのなかに甘みがあるな。
なんというか、グレープフルーツの苦味がない感じというか?もう少し酸味が強いが。
匂い自体はほんのりフルーティーに香るという感じで、濃くはないが……甘そうなんだけどなぁ。
「……!なにコレ?!……あ、でも美味しいかも。」
チラりとニケを見れば、結構喜んでいるみたいだ。
まぁなぁー。ずっと酷い食生活だったろうからなぁ。
そらそうでしょうよ。
かく言うオレも、ここ3ヶ月近くは、あんまり食べてないんだよなぁ。口に合うものが少なくて。
神の粉時々舐めてるだけっての、多かったもんなぁ。
遭難者生活だろソレ。
テイルヘイムの自然の恵みたちは強烈に美味かったよなぁ……。はぁ……。
まぁいいさ。そこそこまともに楽しめるレベルの食べ物くれたんだ、フェニヤに感謝だよなぁ。
飯作ろ。
というわけで、傭兵生活で手に入れた鍋やらを取り出しまして。
あ、薪的なものがないな。
ここ、ちゃんと樹とか生えてるし、取りに行くかぁ。
「ニケー。オレ薪取りにいくわ。」
「んっ?!」
ニケはまだムシャムシャしていた。
ゴクンと音を立てて慌てて飲み込むニケ。
いやいや、しっかり味わってればいいのに。
「薪って、燃やすもの?レイがたまに使ってたやつだよね?いつもみたいに石じゃないの?」
「あー、ほら、その辺にありそうだしさ。」
「ふーん。石でいいのに……。じゃあアタシもいく。」
「え、いやいや、すぐ戻るし、ニケはその果物食っててくれよ」
「え、あ、レイ!……もう。」
ニケに果物をまるごと押し付け、歩き出す。
というわけで、森を探検だー!
……って程でもないんだが。
アースガルズは乾燥気味なんだろうなぁ。
森っぽいところに足を踏み入れるだけで、枯れ枝がそこかしこに落ちていた。
体感ものの5分。
「ただいまー。」
「あれ、レイ。早いね。」
「そりゃすぐそこだしな。たくさん落ちてたしな。」
「ふーん。そっか。じゃあいいや。」
何が"じゃあ"だかは知らないが、別に置いてったりはしないから、大丈夫だぞ?ニケさんや。
手に入れた薪を円状に組んで、鍋吊り用の棒を設置。
着火アプリで……と思ったんだが、少し前についに動かなくなったんだよな、神スマホ。
充電?なのかは知らんけど、動力の神力切れたのか、壊れたのか……。
多分、圏外的になってしばらく経つし、そこいら辺りが原因だろうな。
そんなわけで、煉華さんの出番です。
軽く神力込めるだけで、サッと燃え上がる薪。
うむ。便利である!
雪月花で水出して、鍋に張り、しなしなの根野菜的な何かを適当な大きさに切って、鍋にIN。
しょっぱくってがっちがちの謎の干し肉っぽいものを、焼肉サイズくらいにスライスしてIN。
コトコトするまで待ちまして……。
完成!なんだが、これあんまり美味くないんよなぁ。
と、いう事でね。
ワタクシ閃いちゃったザマスのよ。
さっきの果物、使えるんちゃう?ってね。
「ニケー。ご飯出来たぞー。」
「あ、はーい。」
レイリィクッキング終了だぜ。
出来上がったブツをさりげなくニケに渡す。
「ほい。」
「ありがとう。」
「ほら、冷めないウチに食べな」
くくく……。いつも通り素直に受け取りましたね?
さぁ、さぁ、そのスプーンを早く口に運ぶのだ……!
「……ん?なんか……いい匂い……?」
む、匂いで気付かれたか?!くっ……ニケめ、やるではないか……!
だがまだ、完全に見切ったわけではあるまい!
さぁ喰らうがよい!さぁ!
「え……?!なにコレ?!美味しい……。レイ!美味しいよ!」
「そうだろそうだろー?美味かろうよー。ははっ。たーくさん食えよー。」
「うん!」
ニケは嬉しそうにたくさん食べていた。
最近は出会った頃よりも血色良くなってきたし、いい傾向だ。
こんな地獄みたいな星、さっさと出たら、美味いもんいっぱい食わせてやるからな。
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