2.15話 輝け!?グリトニル宮殿!!
前回のお話:結構な大金をゲット!しなかった。
あれから二ヶ月程が過ぎた。
テイルヘイム……というか、神狐の郷で過ごした二ヶ月という時間は、結構スローなライフだったが……
アーサでの二ヶ月は……
まぁ、なんというか……
色々酷かった。
一応宿屋のオヤジが部屋に風呂桶作ってくれたりはしたけどさ。
まぁ、桶だけだが。
水は自分で汲みにいくやつだ。
普通の人間には、不便だろうな、あれ。
しかも、なんというか……
ああ……娼館用なんすねってやつだったしな。
まぁ、無いよりは全然よかったけど。
でも、宿屋の飯は相変わらずだった。
だからって街に出てみたって治安は最悪だし、どこに行ってもまともな飯はないし、食材すらも碌なもんがない。
テイルヘイムの絶品食材までとは言わないよ。
せめて……せめて普通だな。と思えるものは無いのかよ!
って感じだった。
傭兵家業の方はというと……
オレとニケは、オグマ傭兵団の一員として、幾度かの戦場へと赴き、その都度余裕で生き残った。
それはまぁ、当然ではあるんだが。
なんといっても、オレは人外だ。
矢の雨だろうが、槍の林だろうが、全く効かないから、お構い無しに突っ込めるワケさ。
と、言っても。
実はそんなシチュエーションになったこと、ほとんどなかったんだよな。
都合良く、と言ってしまえばそうなんだろうが、敵大将をどうにかしてしまえば済む戦場ばかりだった。
砦攻略の仕事が多かったな。
初仕事の結果が響いたのかも知れん。
とにかくまぁ、お陰で人死にも無く、戦の度に増える投降兵で、オグマ傭兵団はその規模を初期の十倍以上に増やすことになった。
のだが――
「貴様が、無殺のレイリィか?」
「そう、なのかな?まぁ、レイリィだね。」
オレは、アーシア正規軍本部に呼び出されていた。
今は、偉そうな口ヒゲ野郎が、目の前でふんぞり返っている。
「貴様、今日呼び出された件、理解しておるのか?」
あのしっかり手入れされたヒゲ……くるんとした所、引っ張ってみたいなぁ。
なんか、スポンと取れそうだよなぁー。
それか、ピヨンってなるんだろうか?バネみたいに。
バネかぁ。そういえば、まだ見かけてないな、バネ。
テイルヘイムには必要なさそうだけど、この世界は戦争ばっかりみたいだし、あると便利そう……だけど
まぁ兵器利用はなぁー。
「おい!聞いておるのか!」
「あー。はい。聞いてますよー。」
「チッ。貴様……敵将を捕え、全面降伏をさせる手口で、傭兵団を拡大しているそうだな?」
「……手口て。まぁ、そうなるのかなぁ?」
「貴様は!!マールズ様の教えをなんと心得る!!」
「マールズ様とは。」
「我らが軍神であろうが!!」
「へー。で、どんな教えなのかな。」
「このクソガキが!!戦いの内に潔く散れという、戦人の美学であろうが!!」
えぇー……。それを強制すんのー?
ふーむ。
エネーアの奴らもそんな事言ってたけど、マジで殺し合ってんだなぁ……。
いや、殺し合わされてるのか。強制なんだもんな。
アズリア神族だっけ。その教えの目的はなんなんだろうな。
神々の代理戦争なのかしら?領地争い、熾烈なのかな?
うーん。
まぁ、オレは脱出する方法が知りたいだけだし、その辺に積極的に関わるつもりは無いけどさ。
「おい!知らんとは言わせんぞ!!」
ヒゲ野郎は、かなり興奮気味に、肩で息をしながら、もうほぼ叫んでいる。声でけーな。うるさい。
「えー。知らんですわー。で、オレ、その件で呼び出されたの?」
「なっ……!?なんだ!貴様の!その態度はッ!!」
ヒゲ野郎は、顔を真っ赤……いや、青筋がすごいな。
物理的に切れそうだ。
ってかさ。
殺人したら怒られる世界観で生きてたオレにしてみたらさ、殺人しないと怒られる世界観って、ちょっと難しいのよ。
そんなに怒らんでもいいじゃないすかー。ね?
というワケで。ヒゲ野郎の怒りをリセットしてやった。
「……あー。何の話をしていたのだったか……?」
「軍神マールズが何処に居るかって話かな。」
うん。そんな話はしてなかったけどな!
やっと、軍の偉いさんの所まで来たんだ。
神族がいるってんなら、会いに行って情報を得たいのよ。
「おお、そうだったか。マールズ様は、このアーサより北に一日程歩いた辺りにあるグリトニル宮殿に居られる。だが、普通には会えぬぞ?」
「そうなんだ?」
「うむ。まぁ、貴様は戦功を挙げておると報告を受けておる。早馬で報せておこう。」
「おおー!そりゃありがたい!」
ちゃんと教えてくれたし、軍神に会えるようにしてくれるみたいだから、ヒゲは引っ張らないでおいてあげよー。
――
そして翌日。
「おおー。ここかぁ、グリトニル宮殿。」
「す……すごいね、これ……。」
オレとニケは、グリトニル宮殿まで来ていた。
グリトニル宮殿は、この暗澹たるこの世界には、かなり異質な佇まいをしていた。
てか、眩しい。
大した光量でもない中にあって、光り輝いていやがりますな。
それもそのはず。
総黄金造りでございました。金閣寺より黄金です。
なんてゆーか、趣味悪いですなぁー。
大きさとしては、めちゃくちゃ巨大という感じでは無いが……それでも、小さいアパートよりはデカいな。
黄金のブロックみたいなので組み上げられたらしき壁。
あのブロックが、1kgあるとしたら、相場8000円なら、800万円くらい?で、そのブロックが、数え切れないくらいあるのだが。
うーむ。
軽く兆円超えてるよなぁ……。
アズリア神族は金持ちなのか?民は飢えまくってたけど。
まぁ、この世界で、金がどんな価値なのかは知らんけどさ!石とあんまり変わらんかも知れんよな。
だって、たくさんあるし?
それに食えないしな!
「貴殿らが、アーサの傭兵か?」
ついつい黄金に圧倒されていたら、門番らしき人物が近づいてきた。
甲冑に身を包み、短めの槍を抱えた女性兵?戦乙女って感じだ。
「あ、どうも。レイリィ&ニケです。よろしく!」
すっと右手を上げて、にこやかに挨拶。
「ちょ……レイ、大丈夫?そんな感じで……」
何故かニケさんは不満そうだった。
何故だい?お笑いコンビみたいだからかい?
でも、名前だけでも覚えて帰って下さいね!って言ってないからセーフでしょうよー。
「レイリィと、ニケか。報告は聞いている。案内しよう。」
戦乙女は、なんともクールだった。
むう。すべったか?爽やかに、笑顔で軽く挨拶、ダメだったかー。
スタスタと前を行く、女のシリを追い掛け……もとい、戦乙女の後をついていく。
建物の中も、普通に黄金だ。廊下も黄金だ。
オレは今、黄金を踏みしだいている……。
やっぱコレ、石だよな?高いわけないよ。
そんな高いモンの上歩くとか、有り得るわけがない!
もしそうなら、オレは飛びたい、今すぐに。
ちらっとニケを見ると、微妙に浮いていた。
う、裏切り者ぉー!踏んでねぇじゃんよー!
……タラリア、使いこなしてるな。
まぁ、うん。それはいい事。
何だかんだニケも、度重なる戦場で、装備達にだいぶ慣れたよなぁ……。
ありがとうございました!
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