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1.2話 初めてのリセット

 

 転生して目覚めたその日に空から落とされたり……


 先んじて転生してたっぽい元愛犬ルビィに、空へ打ち上げられたりと……


 なんやかんやハプニングはあった気もしなくはないが……


 そのルビィの、やたら大きくなった背中にも慣れたところで、周囲を観察してみる。


 どうやらここは、森の中らしい。


 一つ一つの樹木が、やたら大きく、間隔も開いている。


 そのせいか、陽光が随所に降りてきているようで、普通に明るい。


 所々で小さな茂みを作っているのは、シダ植物のような形をしている。


 前世で森といえば、大体は暗く鬱蒼としていたイメージだが――

 ここは、空の蒼、木々の濃緑、木漏れ陽のカーテンが創り出すグラデーションが神秘的で、荘厳さすらある。


 これも異世界ならではなんだろうか。


 そういえば、この世界の気候事情とか、どうなってるんだろうな。


 この森は、爽やかな空気に、緑の香り……と、今の所、もの凄く快適なんだが……。


 やはり、地球みたいに、季節があったり、各地で違ったりするんだろうか?


 と、考え事をしていたら、白い岩肌が見えた。


「ここだよ!」


 岩肌の全貌は、どうやら小高い丘といった様相で、巨木群の織り成す森の中に、すっぽりと収まっている。


 岩肌には、裂け目があった。


「みんなー! かえったよー!」


 ルビィが裂け目に向かって声を掛けると、黒い犬? が姿を見せた。


 ルビィよりふた周り程小さいくらいだろうか。

 これまた中々のサイズ感だ。


 ……んー。牛くらいありそう。


「ルビィ。背中に何を乗せている。」


 黒い犬? は、少し牙を剥きながら此方(こちら)を見据えた。


「ボスだよ!」


 無邪気に応えるルビィを余所に、黒い犬? は前脚を拡げ、重心を下げた。


「背中の。何者だ。何用で来た! 答えねば……」


「待て!」


 黒い犬? は、びくりとして、その場にお座りする。


「オレは、レイリィ・セトリィアス・ミデニスティース。

 一応、神族だ。名前が長いからな、好きに呼んでくれ。

 このルビィとは、以前縁があってな。さっき再会したばかりではあるんだが。

 今どういう暮らしをしているか気になってな。連れて来てもらったんだ。敵意は無いんだ。穏便に話せないか?」


 直ぐにでも飛び掛からんばかりだった黒い犬? は、


「神族……。長老を呼ぶ。しばし待たれよ。」


 そう言い残し、裂け目の中へ消えて行く。


 神族って、やっぱりお偉いさんなんだろうか。


 他種族より丈夫みたいな事は聞いたけど、力関係だとか、勢力図的な話は、ちゃんと聞けてないな。


 あー、そういえば、種族の特徴だとかも、全っ然聞けてないや。

 大丈夫なんだろうか。

 やたら凶暴なのとか、居たりしないのかな。


 リセットで何とかしろって事なんだろうか。


「レイリィ・セトリィアス・ミデニスティース様……と申されましたかの。」


 考え事をしている間に、先程の黒い犬? と一緒に、灰色をした直立二足歩行の犬? が出て来た。

 oh......ファンタジー。


 てか、オレのクソ長い名前……良く覚えたね?


大狼(たいろう)族の族長、シンザーリルと申す。我らに何用ですかな。」


 犬じゃなかったのかー。と、思いつつ。族長に、母神様の依頼だと、事の経緯を掻い摘んで説明した。


「異変……。近頃、妙に暴れ回っておる一党がおりましてな。我等も難儀しておりましての……。

 ああ、このような所で長話も無礼ですな。

 どうぞ、こちらへ。」


 どうやら滞在許可? が下りたようだ。母神様の依頼の件が効いたかな?


「ボスー、ごめんねー。なんかおこられたねー。」


 しょぼくれたルビィを撫でつつ、裂け目の中へ。


「おお……!」


 中は暗いのだろうと想像していたが、壁面が仄かにブルーグリーンの光を放っている。光沢感の強い石。

 宝石? 鉱石? 自然発光してるのか?

 分からないが、そのあまりにも幻想的な光景に、ただ感動する。


 ちょっと触ってみたけど、少しひんやりしていた。光ってても熱はないみたいだ。不思議だなぁー。


「我等は、日々の糧を獲ながら、ここを護っておりましての。近頃攻められる事が増え、負傷者が絶えませぬ。」


 シンザーリルは、悲哀を浮かべる。

 なるほど。黒い狼がやたら警戒していたのは、そういう事か。


 うーん。


 今のオレは、そんなに怪しい風体をしてるのだろうか……。


 知りたい様な知りたくない様な……。


 いや、知らなきゃダメな事だけど。

 結局そこんとこすら母神様に聞く間もなかったしなぁ。


 ま、それはそれとして。


「よし。じゃあ先ずは負傷者を見せてくれないか? 何か力になれるかも。」


 もらった神能、まだ使った事ないけど、何かしら使える気がしている。なんせ"リセット"らしいからな。


 やれそうな事からやってく。これ割と大事よね。


「おお……。神族のお力をお貸し頂ける、と。では、こちらへ。」


 三叉路状に別れた通路を右に進むと、小部屋の様な造りになっていた。


 そこには、(うずくま)る巨狼や、横たわる狼人が十数名居た。


「本来我等は、傷の治りは早いのですがの。この者達が受けた傷は、何故か治りませぬ。」


「そうか。まぁ、任せてみてくれ。」


「では、よろしくお頼み申しましたぞ。」


 そう言い残してシンザーリルは部屋を出て行った。

 まぁ、狭いよね、ここ。

 怪我人? 怪我狼? でいっぱいだもんな。


 んじゃやってみますかね。

 と、一先(ひとま)ず、一番近くに横たわる狼人の頭に手を置く。


 目を閉じ、意識を集中する。


 ……掌が熱くなってきた。これが神力ってやつか。なるほど。

 なんというか、心臓? を中心に熱感が身体を巡ってる感じだな……。


 よし。


 いけそうな気がした、刹那。

 脳裏にギュルンっと色々な映像が一気に流れ込んできた。


 気持ち悪りぃ……


再起点(リセットポイント)を設定して下さい。」

 と、脳内で響く。


 うへぇ、何コレ。この能力、毎回こうなるんすか……?

 そのうち慣れるのかな……。


 脳裏に浮かんだ数々の映像の中から、一つ選んで、目を開けた。


 狼人は、傷一つ無くなっていた。


 というより、選んだ映像の状態になっているようだ。


 さっきまでの苦しそうな表情が一変、すやすやと穏やかな寝顔である。


 この力、使いこなせたら、かなり便利なのでは?


「すごいね! ボスー! なおってるよー!」


 ルビィがまたもテンション上がっている。シッポの風圧よ。


 よし、母神からも鍛えろって言われてるし。残りの負傷者でしっかり練習しますかね!


「……よーし! ラスト!」


 十数名終わる頃には、かなりスムーズにこなせる様になっていた。


 最初は一分くらい掛かっていたように思うが、最後は五秒程度に縮まった。効率化ってのは素晴らしい。

 と、だんだん楽しくなってきてたんだよな。


 ……だから気が付かなかったのかな。


「あぁー! ボスー! だいじょーぶー!?」


 グニャリと視界が歪んだと思った瞬間……


 またもやブラックアウトした。


 何回目よ……。

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― 新着の感想 ―
これから始まるという感じで興味をひかれますね!続きを追わせていただきます!
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