1.54話 めっちゃピンチなんじゃない?
前回のあらすじ:バナナ大人気
クイクイと指で招く仕種をする、怪しい仮面の男。
どうやらコイツが、捜し求めてきた目的のルーキスナウロスらしい。
何故だか急に現われよって……。
つーか、やっぱり南大陸に来てたんだな。
どうやって海を越えたんだ?
ん?
でも、コイツ、この村には来た事無い筈なんだよな?
オレ達の通ってきたルートとは違うのか……?
ハヌマの話の神族がコイツだったなら、低地の村に居たはずだ。
あっちから登ってきたのか?
いや、山裾側は見てたんだ。
いつの間にか背後から来てた……?どうやってだ……?
まぁ、今それはいいとしてだ。
今ここに来たって事は、高地の民に何かするつもりだったのか?
まぁ……パターン的に、多分そうなんだろうけどさ。
今までは、コイツが掛けた呪いを解除したり、起こそうとした争いを止めたりって感じだったが……。
プラスに考えるなら、だ。
今ここで出会したのは、高地の民に何かするのは防げるって事だな。
コイツを何とか出来れば……ではあるが。
ただ……
この男、ただ雰囲気が怪しいというだけでなく、不気味な威圧感が凄まじい。
まぁ平たく言えば、強そうだ。
どんな能力を持ってるかも分からんしな。
迂闊な事は、命取りな気がするな。
強制的な冥土の旅編はごめんこうむるぜ!
「あはは!なんだィ?こないのかィ?あれェー?ビビっちゃったのかナ?あはははは!」
一々癇に障る様な言動が目立つ奴だ。
こんな感じで、相手のペースを乱すんだろうな。
まぁ、確かに多少イラッとはするけど。
生前受けた社内イジメとかに比べたらなぁ。
キレる様な事でも無い。
さて……。
どうしたもんか。
ハッキリ言って、オレは戦闘は不慣れだ。
もう少し言えば、虫しか斬った事がない。
ヤツは、まぁ……仮面を被ってはいるが、完全に人型なんだよなぁ。
人型を……ぶった斬るって……、ちょっとなぁ。
いやぁ、実に面倒臭い。
「おーい?聞いーてまーすかァー?あはは!
こないなら、こっちからいっちゃおーかナァー?あはははは!」
「聞いてるっちゃ聞いてるよ。構ってちゃんかよ。声もセリフも耳障りな感じだからさ。無駄話するのは面倒臭くってな。
オレの質問に答えてくれるんなら、ちゃんと話し相手してやるけど?」
「あはははは!なになに?!煽ってくれちゃう感じィ?あはははは!」
「いや、普通に素直な気持ちデスケド……。」
まぁでも、コイツの言う通り、下らない会話しながらお見合いしててもしゃーないわな。
いつまで見てても飽きないよ。ってな美女でもあるまいし。むしろ、キモい感じだわ。
ん……まぁ、汚物は消毒……と言いたい所だが、リーチの長い雪月花にするか。
オレ、チビッ子だしな。
背中の雪月花をスラッと抜く。
腰の二刀の様にはスパッと抜けないけど、まぁ幾分かこの動作もマシになったよ。
アマネ師匠のおかげだな。
……天弥流刀術とか名付けちゃう?
「お?ヤル気になったのかナ?あはは!中々キレイな神具だねェー!そんなので、ボクをヤレるかなァー?あはははは!」
「さーね。どーだろね。」
神力を、全身に循環させる。岩を砕いたあの感覚。
服にも、刀にも巡らせて……
――ビュッ!!
横薙ぎに一閃。
「おっ?中々速い振りじゃないかァー!あはは!避けちゃったけどォー!ごめんネェー?あはははは!」
ルーキスナウロスは、普通に素早い身のこなしだった。
オレの斬撃程度じゃあ当たらんのかね。
まぁ、想定内っす。
下段から、逆袈裟を放つ。
――ヒュッ!!
さっきよりも、空気抵抗の小さい音がした。
「おしいィ!ざーんねーん!あはははは!」
――ヒュッ!!ガシュッ!!
返す刀を振り下ろす。掠めた音がした。
「おっとォー!当たっちゃったァ!やったネ!おめでとォー!あはははは!」
余り効いてない様だった。
神力の身体強化か……。まぁ想定内っす。
「あはははは!よーし!今度はァ!こっちからいーくゾォー!」
ルーキスナウロスは、そう言うと、掌に黒い靄を創り出していく。
段々と大きくなる靄は、バスケットボール大に落ち着いた。
……波は打つなよ?ダメだぞ?フリじゃないぞ?
「あはは!ホイっ。」
オレの心の声が聞こえたのかどうなのかは知らないが、波では無かった。良かっ……ってねーよ!!
安心するには早かった。
黒い靄球は、ボチボチのスピードでこっちに目掛けて飛んで来た。
「っぶね!」
ドッヂボールの様に何とか避ける。と、黒い靄球は、すぐ後ろの地面に当たった。
――ミ゙ョ゙ン!!
という不気味な音がして、靄球が消えると……靄の当たった部分は、靄の形でキレイに無くなっていた。
バスケットボール大の半球状に地面が抉れてやがる。
……えぇー。マジでぇー。
それはちょっとヤバくないの……。
「あはははは!上手に避けれたネェー?あはははは!」
「まぁなんとかね。てか、これ何よ?」
「あはは。教えないヨ?自分で考えたらァ?あはははは!ホイっ。」
「いや……ホイっじゃねぇし!」
会話終わりに再度靄球を投げてきやがった!
次は、前に走りながら避けた。
近付き様に、逆袈裟を、神力を込めて放った。
――サァ……ピキィーン!!
冷気を帯びた雪月花の一振は、周囲の世界を白く染め上げる!
……筈なのだが。
「あはは!中々イイネェ!それ!」
ルーキスナウロスの周囲は、黒く覆われて、冷気は届いていなかった。
蜂の様にはいかないらしい。
まぁ……そりゃそうだろうけどさ!
一旦距離を取り、雪月花を納刀、淡墨を素早く抜く。
――ピシャーン!!
と、勢い良く雷光が迸り、白い世界で拡散する。
「あはは!そんなのもあるんだァー?すごいネー!」
超伝導空間にあっても、黒い靄に阻まれて、電撃が届かないようだ。
マジかぁ……。
オレ、最近割とチート野郎だと思ってたんだけどなぁ。
そんなでも無かったらしい。
仕方が無いので、煉華に変更。
高地の民の皆さん。すまん。
ここだと、櫓は吹っ飛びます。
一気に神力を込めて、超高熱の一閃を叩き込んだ。
靄に包まれたルーキスナウロスに向かって……では無く。
その周りの氷漬けの空間に向かって、だ。
――ゴォッ……ドッゴーーン!!!
予想通り、村の入口は、丸々吹き飛んだ。
が……
「あはは!面白い事するネェー?あはははは!」
ルーキスナウロスには、傷一つ無かった。
……えぇー。なにそれ?!
んー。どうしよ……。
これ、めっちゃピンチなんじゃない……?
ありがとうございました!
またよろしくお願いします!
少しずつですが、見て下さる方が増えた様で嬉しいです!




