1.53話 せっかく良い気分に浸ってたのに、それはマジ面倒臭い。
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山頂でウィトとルビィに揉みくちゃにされた後、オレはクウと二人、先んじて高地の民の村に来ていた。
アマネの消耗が激しかったので、もう少し回復するまでゆっくり休んでもらっておく事にしたのだ。
皆も休憩とか、アマネが回復するまで自由にしてもらう事にした。
まぁ、皆の方にはハヌマも居るし、勝手に変な所に行かなければ、道に迷う事は無いだろうしな。
ま、アマネが動ける様になったら、そのうちここに来るだろう、という事だ。
オレも一緒に待ってても良かったんだが、クウがバナナを届けたそうにソワソワしていたのが、凄く気になったし、修行場から村までは、そこまで険しい道程というワケでもなかったというのもあって、クウについてきた。
現に、道中の山道は、普通のハイキングコースみたいな感じだった。
まぁ、自分でも……特に意味無く、何だか急いで来た感じはする。
高地の民に怪我人がいるワケじゃないし、おそらくは呪いにも掛かっては無いと思う。
今後どうするか決め切れなかったから、ちょっと気分を変えたかっただけなのかも知れない。
村の光景を間近に見れば、思い付ける事もあるかも知れないしな。
だが……
「あ!クウだッキ!」
「ただいまッキ!バーナ、あったッキよ!」
「えぇー!!ほんとッキかー!」
「うわぁー!たくさんあるッキ!!すごいッキ!!」
クウの帰還……というか、バナナと聞き付けて集まって来た村の子供たちは、大喜びだった。
子供が無邪気に喜んでるのは、なんかいいな。
このシーンが見れただけでも、良かった気がした。
そうだな、オレはこれが見たかったんだよ。
そういえば、大猿族の子供は、半二足歩行って感じなんだな。
てかまぁ、普通の猿が喋ってる感じか。
まぁ何にせよ、子供はカワイイもんだ。
子供と言えば……。
ウィトも、そこそこ子供って感じではあるが……
なーんか違うんだよなぁー。
虎の時は中型犬か小さ目の大型犬かってサイズ感だが、変身すると、アマネくらいの見た目なんだよなぁ。
普通に今のオレの姿の方が、子供感強め。
ってか、ティグリも落ち着きない感じだったが……
実は兄妹だったりしないよな……?
ま、そりゃ無いか。
しかし、おかしいな。
ハールマーさんは、あんなに戦士!って感じだったのに。
何故娘はあんな感じなんだろう……。
不思議だ。
とか考え込んでいたら、歓喜の表情でクウが話しかけてきた。
「レイリィさん、本当に助かったッキ!ありがとうッキ!」
「まぁ、偶然ってヤツだよ。オレは偶々居合わせただけだからなぁ。大した事はしてないし。
バナナ……バーナ?見付けたのもルビィだしな。
てか、ハヌマやクウが頑張って山越えてまで探した結果だろ。
ま、ありがとうって言われるのは、普通に嬉しいけどな!」
「えっ……?メヒライネの巣……壊滅させてたッキ……」
「ん?」
メヒラ……?蜂かな?まぁ蜂だろ。
憶えれねーっての。メヒなんだって?
デカい蜂、でいいじゃん。または巨大蜂。
「いや、何でもないッキ!
まぁ、皆が来るまで、オラん家でゆっくりして欲しいッキ!」
んー、ゆっくりか。
まぁそれも良いけど……
「村を一周見回ってからにするよ。」
「分かったッキ!オラはここで、バーナを配ってるッキ!」
ひらひらとクウに手を振り、村の入口の方へ向かう。
周りを見渡せば、この村の建物は、結構しっかり造ってある感じだった。
石と木で出来た建物で、木製の扉っぽいものまであるな。
窓も、木製の蓋がある感じだ。
今は開け放ってあるから、風雨避けなのかもなぁ。
まぁ、いくら気候の穏やかなテイルヘイムとはいえ、山だしなぁ。
そこそこ標高もありそうだし。
天気が崩れる事は、地表よりはあるんだろう。
村はそんなに広くなかった。
そんなワケで、入口にはすぐ着いた。
村の入口の両脇には、やっぱり物見櫓みたいなのがあった。
でも、上に誰かが立っている様子は無い。
ここまで歩くのに、数名の大猿族とすれ違ったが、クウみたいにフレンドリーな感じでも無く、かといって敵対的視線でも無く、何かあんまり気にされ無かった。
都会の人かよ。
そういえば、建物の件数に対して、すれ違った大人が少なかった気がするが、基本的に大猿族も、狩猟採集生活らしいから、どっかで狩りとかしてるんだろうな。
道が塞いであるのは、結構下の方らしいし。
見た感じ、ちょっと下辺りからは、森が広がってる様だしな。
――「ボースーーー!!!」
遠くから声がした。
ルビィ達が降りて来たみたいだな。
と、山頂側を見ると、ルビィが皆を乗せて走っていた。
……やっぱ、あいつ、運動能力凄いな。
下り坂、転ぶなよ?
その時、突然――背後から物凄く気持ちの悪い気配がした。
咄嗟に振り返る。
「あれェ?キミ、神族かィ?こーんなとこで、なーにしてんのサー?」
「は……?」
全身に纒わり付くような、怖気の走る気持ちの悪い感覚。
あの、呪いの様な……
突如として背後に現れた、怪しい仮面の……男。
何かが符合した気がした。
「お前……ルーキスナウロスか?」
「えー?なーに?いきなりさァー?って、なーんで知ってンの?その名前。」
のらりくらりとした――人をおちょくっているような、揶揄う様な口調で話す――おそらくは神族。
こうして対面しているだけで、かなりの威圧感を感じる。
「でェ?キミは誰なのかなァー?」
「オレは、レイリィ。レイリィ・セトリィアス・ミデニスティース。一応神族だ。
で?お前が、ルーキスナウロスなのか?」
「あはは!まーぁ、そうだネー!で……?それがどうかしたのかナ?あははは!」
マジか。
ここでかよ。いきなりだな。
何の準備もして無いぞ……。
はぁ……。
ま、出会ったもんは、仕方ない。
「お前、何のつもりで呪いの道具バラ撒いてるんだ?」
「えェー?心外だなァー!呪いだってェ?キミらの言う所の、神力だヨ?神力。神具っていうのかナ?」
「はぁ?いや、まぁいいや。
目的はなんだよ?わざわざ争いを起こす目的は、なんだよ?」
さっきまで揶揄う調子だった仮面の男は、急に溜息を吐いた。
溜息を吐きたいのはこっちの方である。
「はぁ~。キミ、ちょっと面倒臭いって言われなィ?」
「いや、あんまり。」
「あははは!あんまり!言われないのかィ!あはははは!」
「いや、なにウケてんのよ。
どっちかっていうと、オレは面倒臭いって言う方だよ。
今、非常に面倒臭い気分だわ。」
「あはは!そうかァ!ボクは面倒臭いタイプなのかナ?あはははは!」
「そーゆーとこ!
……さっさと答えてくれ。」
「……答える義理は無いネェ。
どーしても知りたいなら……ホラ?
力づくで来るかィ?あはははは!」
そう言って、クイクイと指で招くように挑発してくる。
Go Fight!カーン!って感じだ。
やっぱこうなるのかぁ……。マジ面倒臭い。
ありがとうございました!
またよろしくお願いします!