1.50話 知らんかった…
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蜂の巣……というか、巨大蜂量産施設を破壊したオレとルビィ、そして大猿族の二人ハヌマとクウは、オレ達の上陸地点の浜辺に戻る事にした。
まぁ、フウカとアマネとウィトが待ってるからね。
そもそもこの探索は、偵察と食料確保が目的だったんだが……
偵察ってこんな感じなんだっけ?
まぁ、偵察なんかした事は無いんだが……。
ついつい派手にやらかした気がしなくも無かったりしなかったり。
いや、アレは不可抗力というヤツだ。
あんな悍ましい光景をみたら誰だってそうする。オレもそうする。だからそうした。
まぁ、第一村人発見ならぬ、大猿族の二人を見つけたからな!偵察は成功だ!
後は食料だな。
ウチにはお腹を空かせた子が……
まぁ、いないんだけど。
皆食わなくても平気な身体なんだけど。
食に関しては気分の問題なんだけど、空旅で疲れた様子だったからな。何か持って帰ってやりたい。
なんかあるといいんだがなぁー。
「ねー、ボスー。あれなに? なんかいいにおいするよ?」
「ん?」
言われた方を見てみると……
ルビィさん、さすがです。ファインプレーです。
バナナだわ、あれ。
まだ緑の物もあるが、黄色く熟している物も、結構見て取れる。
「「おお! バーナッキ!!」」
バナナを見た大猿の二人はいきなりテンションが爆上がりした。
「オラ達は、バーナを探しに来たんだッキ!
村の子供たちに食わせてやるんだッキ! 約束したんだッキ!
でも、この辺りは初めて来たから、在処が分からなかったんだッキ……。」
「ああ、迷ってるうちに、さっきのヤツらに出会して……やられたんだッキ……。」
「そうだったのか。んじゃ、食えそうなのは、全部採ってくか!」
なんか、コイツら良い奴らっぽいな。
見た目はそこそこ厳つい感じだけど。
子供たちに食わせるって言われたらなぁ……。
そりゃ手伝うしかないわなぁ。
まぁ、オレたちの分は1人につき1本でもいいしな。
というわけで。
クウの持っていたリュックみたいな袋に、バナナをしこたま詰め込んでいく。
リュックはパンパンである。
こんな風にしたらバナナなんてすぐ傷みそうな気がしたけど、これは意外と大丈夫という話だった。
似た別物なのかもな。
まぁ、肉や魚もそんな感じだしな。
上位互換なんだろな。
「よし。こんなもんでいいだろ。まぁ、他にもなんか食えそうなものがあったら、ちょっと採って行こうか。」
「「わかったッキ!」」
「はーい!」
他にも食えそうな物無いかなーと、探しながら歩いていたら、今度はハヌマがファインプレー。
「お、これは食べれるッキ!」
と、もいでいたのは球形にギザギザの突起がたくさんある茶色っぽい木の実だった。
割ってみると、白い果肉が姿を顕にした。
試しにひと齧り。
「お、ライチかぁ。」
独特の香りと、食感、瑞々しさ、甘さ。
そのどれもが一級品質以上だった。
齧る前から誘惑してくる優美な香りは、ぷるんぷるんの果肉を一口齧ると、ジュースかな? ってくらい溢れ出す濃くも爽やかな甘い果汁に乗って、口の中から鼻腔内へと吹き抜けて、脳髄に幸せを運ぶんだ。
疲労回復にはもってこい過ぎるなぁー。
うむ。持ってこ。
というワケで、今度はライチを腰袋に入るだけ詰めた。
――
上陸地点の砂浜に戻ると、砂浜にある小さめの岩の上にアマネがぽつんと座っていた。
何だか……ちょっと哀愁が……。
黄昏感が凄い。まだお昼くらいなんだが……。
夕暮れ空を鴉が鳴きながら飛んでいく感じを連想してしまうな。
まぁ、なんか……似合うけど。
でも、今までにあんな所見た事無いな。
やっぱり、初フライトは相当疲れたんだなぁ……。
「ただいま。」「ただいまー!」
「ご主人様。ルビィ様。おかえりなさいまし。」
そう言って立ち上がろうとするアマネを、手で制す。
疲れてんだからゆっくり座ってておくれよ。
みんなにいいもの取ってきたしさ! と、思ったが。
「フウカとウィトは……居ないみたいだけど、どこ行ったの?」
「お二人は、気分も持ち直したと申され、ウィト様の神能の訓練をと、少し離れた場所に行かれました。」
「ああ、なるほど……。
ウィトは、ちょっと危なっかしいもんなぁ。」
「はい。
其れよりも、あちらの御二方は?」
「ああ、そうそう。大猿族の、ハヌマとクウ。金色がハヌマで、藍色がクウね。悪い奴らじゃないから大丈夫!
ま、詳しくは皆揃ったら話すよ。」
「畏まりました。」
よし、ウィトを呼ぶか。ちょっとの距離ならいけるだろ。
というワケで。
(ウィトー! ご飯だぞー!)
と、脳内で叫ぶ。
すると、やはり目論見通り、直ぐに反応があった。
(ニャ! ご飯?!)
(おうよ。フウカにも戻るように伝えてくれ!)
(わかったニャ!
……はニャぁー!? 失敗したニャぁー!! しまったニャ……また怒られるニャ……)
何か最後余計な事が聞こえたのは……
まぁ……気のせいだな。うん。オレ悪くない。
――
数分後、フウカとウィトが戻ってきた。
いや、正確には、フウカがウィトを抱えて戻ってきた。
「お待たせしたかえ。」
「いや、オレ達のほうこそ……だけど……
ソレ……どしたの?」
「なに。仕置きぞえ。」
「ニャ……」
フウカに抱えられたウィトは、また海藻でぐるぐる巻きだった。
が、よく見ればしっぽを蟹が挟んでいた。
なるほど、仕置きね。
まぁ、それはそれとして。
良いお土産持ってるじゃないですかぁー!
アマネに斬ってもらうのはちょっと憚られる気分だったので、ウィトの海藻はオレが切りました。
もちろん普通にな!
――
「な、マジでか!!」
蟹鍋を皆で仲良くつつきながら、ルーキスナウロスの情報でも無いかと思って、大猿族の話を聞いていたのだが……
「ああ、オラ達大猿族は、低地の民の方が圧倒的に数が多いんだッキ。
それが、おそらく戦える者は全員……」
「大馬族を攻めに行ったというのかえ。」
「そうだッキ。」
ハヌマがとんでもない事を言い出したのだ。
「なんでそんな事に?!」
そんなガチ戦争みたいな話は求めて無いんだよォー!
オレはさぁ! 平和に! 暮らしたいの!!!
「詳しくは分からんッキ。オラ達は、止めに行ったんだッキ。だが、殺されかけたッキ……。」
なんだそりゃ……。
仮にも同族だろ? 同盟相手攻めるだけじゃなくて、同族まで殺すってか?!
これ、またアレか? 呪いの力か?
ルーキスナウロス……だろうか?
「……ルーキスナウロスって、知ってるか?」
「いや、聞いた事無いッキ。
あ……だが、族長の横に、恐ろしく不気味な……神様とか言ってたヤツが居たッキ。」
「ああ、そうだッキ。だから、オラ達はアンタが神族っていうから驚いたッキ。随分違う感じがするッキ。」
「む、詳しく。」
「詳しくも何も……一言二言言葉を交わしただけだッキが……。物凄く不気味だったとしか……。
ただ、オラではどうしたって勝てそうもないとは感じたッキ。
……レイリィさん。アンタのあの、めちゃくちゃな力でも、どうなるか……オラには分からんッキ。」
「ふーむ。まぁ、それは予想の範疇ではある。そもそも……オレ自身は、大して強くはないからなぁ……。」
「レイ殿や。」
「ん?」
「そなたは、いつもそう言っておるがな、其も神族であれば、他種に比すれば相当に強靭であるのえ?
何故其の様に思っておるのかは知らぬがな。
道中屠ってきた虫共も、素手で縊り殺せるはずぞえ。」
え……?
虫を素手で潰す?
ヤダよ。普通にヤダよ。キモいよ。何言ってんのさ。
嫌に決まってんじゃん。そんなん蚊サイズでギリだよ。
ミリ単位超えたら無理ゲーだっての。
「試しに、軽く神力を込めて、そこな木でも握ってみるがよいぞえ。岩でも良いが……。」
「ほう?」
まぁ、フウカ先生がやれというならやりますが。
木……は、やめといて。岩にしてみるか。
軽く神力を込めて……と。
「ふんっ」
――ゴシャアッ!!
と、派手な音を立て、さっきまでアマネが座っていた岩は、石と砂になった。
……
…………
……は?!
なんだって?!
オレ……こんな事、出来たん?!
知らんかった……
ありがとうございました!
またよろしくお願いします!