1.48話 南大陸到着
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――ビュオォォォ!!!
暫しの空の旅とはいっても。
さすがに海峡だけあって、風が強いようだ。
風切り音が凄い。
まぁ例の如く、風圧は感じてないんだけど。
フウカの風操術様々って感じ。
海面は、遥か下という程でもなく、キラキラ光を反射してて……綺麗だが、ちょっと眩しい。
強風に掻き乱されているんだろう水面は、複雑な模様を作っていて、絶えずその形を変えているのだ。
ふーむ。
しかし、これは飛行機の窓から見る風景とは大違いだなぁ。
臨場感というか……。
高速道路を大型バスに乗るか、ノーヘルのバイクで走るのかくらいには違うなぁ。
いや、ノーヘルのバイクで高速走ったことはないけどな。
イメージだ、イメージ。
そんな危険が危ないことしたら死んでるだろ。
あ、死んでたわ。
そうだわ。一回死んでた。原因は違うけど。
んで、謎世界に来ちゃったけど。まぁそこは今更だしいいか。
しっかし、龍の背に乗って空旅とか、浪漫ダクダクって感じだなぁ。
牛丼だったら、最早具も見えまいよ。汁の泉って感じ。
……ハッ!?牛丼食いたいな!?
一時期めちゃくちゃお世話になった、あのオレンジ色のチェーン店……。
そうか……もうあの味は、二度と味わう事が出来ないのか……。
牛丼自体は材料集めれば作れるだろうが、あの味を再現出来るかどうか……。
ま、いつか考えよう。今はもうちょっとやる事があるからな。
そうこうしている内に、進行方向には、確かに陸地が見えてきていた。
というか、山……いや、山脈が見える。
結構デカイな……。
折り重なる様にして連なる山々は、侵入者を阻む壁の様だ。
そりゃ、交流も無いわな、アレじゃあさ。
何か納得した。海越えて山越えてはキツいわ。
その山脈の中腹から下の方は、緑一色って感じで、どうやら森っぽい。麻雀だったら高得点だな。
山頂の方は、ちょいちょいハゲて地肌が見えてるけど、白くは無いから雪は無さそうだ。
まぁ、テイルヘイムは気候的に滅多に雪は降らないのかもなぁ。
ふーむ。
しかし……このまま飛んでもらうってのも、ちょっと難しい気がするな。
なんせアマネも長距離を飛ぶのは初だ。
一番近い所に降りてもらうのが安全だろうな。
このままあの壁に向かってくのは無謀な気がする。
うん。
山越えについては、対岸に着いてから考えよう。
アマネに飛んでもらうなら、一日は休んでもらった方がいいしな。
……アレ、どう見てもかなりデカいしなぁ。
まぁ、麓の森も、ルビィが走れる感じの森なら、いつも通りでいいしな。そのまま山にも行けるだろ。
「アマネ!対岸に着いたら降りてくれ!」
「かしこまりました。」
――
程なくして、眼下には白い砂浜が広がっていた。
どうやら南大陸の入口に着いたらしいな。
ここまではとりあえず無事に来れたな。なによりだ。
「アマネ!あの辺りにしよう!」
「かしこまりました。」
選んだのは、岩壁があり、日影が少し出来ている場所だった。
すいっと着陸!
皆が背から降りると、アマネは人型に戻った。
龍の姿も格好いいけど、人型はやっぱり可愛らしいな、この鬼娘。
「いやー。空の旅は中々爽快だったなぁー」
というオレに対して……
「きれーだったねー!」
と、ルビィは賛同するのだが……
「爽快……かえ。こなたは少々堪えたぞえ。」
「……ちょっともう嫌だニャ。怖いニャ。」
と、他の乗客達の反応はイマイチのようだった。
そして、アマネ機長もお疲れの様子だった。
「私も、少々神力を消耗したようです。」
「やっぱり羽も無いのに飛べるって、相当凄いんだな。」
「其の様です。」
どういう仕組みで空飛んでるんだろうなぁ。
重力なのか、風なのか……。
神力をどうしたら飛べるんだろ?
ふーむ。
いつか母神様に言ってみるかなぁ。
空を自由に飛びたいなって。
タケコ〇ターくれるかな?
さすがにこの神スマホにはそんな機能無いしなぁ。
てか、スマホでどう飛ぶんだって話だよな。
もしそんな事が出来るなら、身体の改造が必須だろう。
神スマホの画面を、コントローラーのように操作して飛ぶんだな。
……それはそれで、ゲームみたいで面白そうだな。
まぁそれはいいとして。
想定内だけど、皆疲れたみたいだし、休息タイムだなぁ。
「よし!ちょっと休憩!
ルビィは、疲れてるか?」
「んー?だいじょぶ!」
「じゃあ、オレとちょっと探索しようか。」
「はーい!」
ルビィは、嬉しそうに尻尾を振った。
散歩……ではないんだがな。
とりあえず狼になってもらって、周囲の状況を探りつつ、ついでに食える物も探すとしますかね。
――
ルビィの背に乗り森に入ると、樹々はそれなりに鬱蒼としていた。
どうやら、低木ばかりの様で、広がった枝葉がそう見せている感じだ。
キノコ類は……ちょっと見当たらない。
「ルビィ、もうちょっと奥に行ってみるか。ゆっくり慎重にな。」
「はーい!」
ルビィのデカい身体だと、時折ガサガサと音を立ててしまうくらいの間隔で茂る樹々は、当然ながら見通しは悪い。
不意打ちされたら、たまったもんじゃないからな。
慎重に進むのだ。
突如、ルビィの耳がピクりと動いた。
何かを察知したらしい。
「ボスー。なんか、たたかってるっぽい。」
「戦ってる……?」
てゆーと、色んなパターンがあると思うけど……
とりあえず確認はした方がいいな。
「ルビィ、そろーっと急げる?」
「えー?むずかしーよー。」
「ま、なるべくそんな感じで、そこ見に行こうか。」
「はーい!」
いつもよりは大分ゆっくりではあるが、注文通りに音も無く走るルビィ。
それでもオレが走るよりは大分速いな。
目的地に近付いて来たのか、確かに戦闘音がする。
木の枝が折れる音や、何かが落ちる音……。
結構激しくやり合ってる様だ。
「ハヌマぁー!しっかりするッキー!」
どうやら、誰かがやられたっぽいな。
声が聞き取れる距離まで来た。
「ルビィ、何と何が戦ってるか、分かる?」
「んー。しゃべってるのは、獣族?あいてはー……ブーンっておとがするよ!」
「獣族か。よし、助けよう!」
「はーい!」
ルビィは、返事と共に、全力で走った……というか、跳んだ。
そして、あっという間に、現着する。
戦っていたのは、デカい蜂と、デカい狒々人だった。
狒々人は、一人倒れてしまっていた。
「大丈夫か?加勢するぞ!」
「な、誰だッキ?!」
「話は後だ!
ルビィ!蜂を頼む!オレは負傷者を治す!」
「はーい!紅流ゥゥー!」
――ゴォーッ!!
と、地鳴りの様な音を立て、激しい焔の嵐を生み出す、ルビィの咆哮。
その焔は、襲い来る巨大蜂の群れに纒わり付く。
羽が燃え、ボトボトと地面に落ち、そのまま炭化していく巨大蜂を後目に、オレは倒れている狒々人に触れた。
すると、藍色が眩しい狒々人が、邪魔しようと割り込んで来た。
「な……、お前!ハヌマに何するッキ!」
「いや、治療しないとマズイだろ。あの蜂にやられたんじゃないのか?オレなら、まぁ治せるから。」
「ほ……ほんとッキか?」
「ああ。ホントホント。」
会話しながらも、神力を込めて状態を視ると……
藍色の狒々人を庇って、滅多刺しにされた様だった。
えぇー。マジでかぁ。それは、なんつーか、格好良いけど……。
死んだらダメだぞ。悲しむ人がいるならさ。
という事で、サクッと元気な時点にまで戻す事にした。
ありがとうございました!
またよろしくお願いします!