1.1話 意外な出会い
ここから冒険が始まります。
レイリィとルビィの前世のお話が、蛇足譚の方にあります。
そちらも是非よろしくお願いします!
「ハッハッハッハッ。クンクンクンクン。」
うーん。
「あぁー! やっぱりボスだコレー! ハフハフ」
ベロベロベロベロベロベロベロベロ……
うーん。生暖かい……。あと、生臭い……。
ねちゃっとしてる。顔が。
ハッとして薄目を開けると、デカい犬? がヒンヒン言いながら顔を舐めまわしてる……。
えぇぇ……?
なんでこんな事になってんだ……?
えーと……。
確か……転生したんだよな。
んで、創造の女神ソールフレイヤに言われて、獣族の暮らす世界に落とされた、んだ。文字通り。そうだった。
え? あれで生きてんだ? オレ。
神族は丈夫みたいな事言ってたな、あの女神。
だからって扱い雑過ぎんかー?
ベロベロベロベロベロベロベロベロ……
ん?
てーと、ここは、獣族のエリアで、このデカい犬? は、獣族……? なのか? めっちゃ動物的な感じだが……。
ベロベロベロベロベロベロベロベロ……
「ちょ……まて!」
「はい!」
考え事をしてる間にも、全く止まない舐め回しに、つい号令を放つ。
すると、デカい犬? は良い返事をしながらピタリとお座りした。
良い返事……だと……?
「え、言葉解るのか?」
「わかるよ!」
デカい犬? は、やたらハイテンションに応える。
シッポの動きよ。
その謎のデカい犬らしき生き物だが……
雪のように真っ白い毛並みが、非常に美しい。
ピンと立った三角耳を持ち、凛々しくも何処か愛らしい顔立ちをしている。
そして瞳は、ルビーレッドとオーシャンブルーのオッドアイだ……
んん?
「まさか……、ルビィ……か?」
見覚えのある特徴に、かつての愛犬の姿が重なる。
「そうだよ! ボス! あいたかった!」
そう言うなり、またしても飛び付いてきた。やめれ。潰れるわ。
それにしても、オレ、ボスって呼ばれてたのか。知らんかった。
ご主人様ぁーとかじゃなくて……。
そこは少し残念かもな。
漢なら、ご主人様とか呼ばれたい――よな!? そうだろ?
……いや、そんな事より。
「ルビィ、お前も転生? してたのか!」
「よくわかんない!」
「そうか。分かんないか。まぁルビィだしな……。それもそうか。てか、ルビィ、そんなデカくなったのか?」
記憶の中にあるルビィは、精々60cmくらいだったはず。大型犬とはいえ、普通に持ち運び可能なサイズだった。
それが今や、もの〇け姫のモ〇くらいありそうだぞ?
「そうだよ! ルビィ、みんなよりおおきいんだ! ボスにいわれたとおり、たくさん運動したよ! ほめて!」
掌の中に頭を無理やり捩じ込む仕種。間違いなくルビィだ。
懐かしい……というより、また会えるとは。
……ちょっと泣きそうじゃないか。
一頻り撫でてやる。ムツゴ〇ウさんだ。
しばしの間、デカくなった元愛犬と、キャッキャウフフした。
……ん?
まさか、母神の言ってたいい出会いってコレか?
だとしたら、掌の上って感じだなぁ。
そういえば、白い空間でも、数年前から準備してたとかなんとか言ってたような……。
うーむ。
ま、いいか。ルビィに会えた事は、確かにいい事だわ。
うん。
「ルビィ。今どう暮らしてんだ? みんなって、仲間がいるのか?」
「なかま! いるよ! しょうかいするよ! のって!」
言われるがまま、背中に乗る。
おぉ、犬の背に乗って……とか、いいじゃん。
そんなん、めっちゃ憧れてたぞ。
「じゃ! しゅっぱーつ!」
グンっと上半身が後ろに持っていかれる。
この感じ、大型バイクの加速力だな。
……鐙と手綱欲しいかも。
ゴウッという風切り音の中、景色が飛ぶ様に移り変わる。
「ルビィ、すげーな! めっちゃ速いな!」
「うひひー。ルビィ、みんなよりはやいんだよー!」
「そうかぁ。ホントに頑張ってたんだなぁ。」
ヨシヨシ撫でくり撫でくり
ルビィの背から、また撫でてやる。
「いひひひー! もっとすごいことできるよー!」
得意気なルビィ。
何か……、ちょっと嫌な予感がした。
「ていっ」
と、ルビィは、オレを背に乗せたまま、天高く飛び上がり……
十五回転のフロント・フリップを披露した。絶〇天狼抜刀牙かよ! 奥義だな。
オレはというと……
回転の途中で逆バンジーの様に空中へと投げ出され、さらに上空へ運ばれていた。
そりゃそうなるよ。
隣には、見た事も無いカラフルな鳥達が、優雅に列を成し飛んでる。
「みたみたー? ボスー? あれ。ボスいない。どこー?」
くっ……。
ルビィめ。ドジっ子属性だったとは。やるじゃないか。
そういえば、以前……早く外に出た過ぎて、自動ドア開き切る前にガラスに突っ込んで、頭打ってフラフラしてた時あったなぁー。
喋れるからか、ドジっ子っぷりが余計に際立つんだな。
「あ、いた!」
ルビィは、キレイに放物線を描いていたオレを、フライングキャッチする。
オレはフリスビーか。
「ごめんね、ボスー。」
本日二度目の空の旅は、人形みたいにルビィに咥えられ、地上に降ろされたところで、無事幕を閉じた。
それにしても、この世界の空は、蒼が濃い気がした。
油絵具を落としたような濃紺と、白い雲とのコントラストが目に映えて、爽快さすら覚える。
「いやー。中々の体験だったぜ。ルビィ、フリスビー、キャッチ出来る様になったんだなぁ。」
「そうだよ! トリとか、つかまえるよ!」
「ほー。そりゃすごい。」
鳥って、さっきのアレとかかな? あんな高い所に居たのに。
ちゃんと自力で狩りして暮らしてたとはなぁ……。
フリスビー投げてやったら、落ちるのを見届けてから拾いに行ってた、あのルビィが。鳥をフライングキャッチとか。すっかり野生だわ。
感動した!
「あ、そうだ。ルビィ。そういえば、あんな所で何してたんだ? 狩りか?」
「んーと、みまわり!」
「見廻り……?」
「うん! そうだよ! とうばんだから!」
ふーん?
縄張り争いでもあるのかな。諍いがあるとかなんとか言ってたもんな、母神様。
ま、何にせよ、ルビィの仲間とやらにも話を聞いてみないとな。母神様の依頼だしな。
「よし、ルビィ。ぼちぼち行こうか!」
「はーい!」
再びルビィの背に跨る。
ルビィは、学習したのか、さっきよりもゆっくりと走る。
そうそう。結構賢かったんだよな。物覚えも良かったしな。愛いやつめ。
撫でくり撫でくり
「ボスのなでなですきー!」
むう……。
実はさっきからずっと思ってたんだが……
喋る犬って、めっちゃいいな!
「そうそう、ルビィ今何歳なんだ?」
「えーと、14さい?」
ああ、なるほど。
あの後すぐこっちで生まれてたんだなぁ。
母神様の計画通りってヤツなんだろうかな。
一体いつから何のために計画してたのやら。
神様ってのは暇なんですかねー。
でもまぁ、ルビィの今の姿を見る限り、ここでの十四年間は、良い過ごし方だったんだろうな。
その仲間達に感謝だな!
そんで、母神様にもだな!
その後もついつい、他愛も無い問答を繰り返してしまった。
……ルビィ。本当に良かった。
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