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1.45話 伝来の首飾り

いいねありがとうございます!


――てっててっててって


朝から元気な足音が近付いてくる気がする。

ルビィは村を探険して来るとか言って、少し前に外に行ったばかりだ。

ルビィでは無いだろう。


てか、軽い感じの四足の音だな……

まぁいいか。別にこの部屋に用と限った話ではないだろ。


昨晩は名付けもしたりで、中々に疲れたのだが……しっかり休息した事で、大体快復したように思う。


そんなワケでオレも現在、アマネに倣って愛刀達のお手入れ中である。


淡墨(うすずみ)煉華(れんげ)雪月花(せつげっか)

やはり、コヤツらは愛いやつらなのである。


素晴らしい輝き、そして造形美なのだ。

名付けで神具化じゃなくて、神化してたら……

どれほどの美女になってたんだろうなぁー。

恐ろしいなぁー。


え?男かも知れないって?


いやいや、何を浪漫の無い事を……

美女に決まってるだろー?こんなに美しいんだぜー?


何なら性別リセットという奥の手も……


ん?あのワザ、他人に使えるんだろうか?

試した事ないから分からんな……。


まぁ、試さないけどな!アレはお風呂用だからな!


「おはようニャ!」


そんな感じの時に、ウィトが上機嫌でやってきたのだった。

やたらと声が明るい。若いっていいよね。元気があってさ。

え?オレ?ま、肉体的には若いってかお子様だったね。

でもあんな元気はもうないのよねー。

と、振り返ってみると。


「お?ウィト、虎に戻ってるな。」


ウィトは、名付けにより、昨晩神化して人型に変身してしまったのだが、今朝は何だか虎に戻っていた。


ルビィは中々苦労していたというのに、どういうこった?と、思ったのだが。


なんでも、先祖代々伝わる首飾りを、母であるウーズさんに貰ったそうで。


「かーちゃんに、これもらったニャ!

そしたら、変身出来るようになったニャ!」


それは、タイガーズアイみたいな、デカい宝石?の付いた首飾りだった。中々に派手だ。


「神具かえ。中々に良き物であるな。」


とは、フウカ先生談。


まぁ、デッカイ宝石ってだけでも、地球での価値は計り知れないけどね。宝石ならね。


まぁ、何にせよ。

神力を高めたり安定させる神具があるってのはいい事だ。

ルビィは何にも無くて、慣れるまでにも苦労したからなぁ。


ま、それはそれとして。


「ウィト。オレたちは、もう少ししたら出発するけど、本当に着いて来るのか?」


「ニャ!いくニャ!楽しそうニャ!」


楽し……い旅になればいいけどね。

それはオレだって思う。


けど、あんまりいい予感はしていない。

そもそも南へ行った事のあるメンバー居ないし、ルーキスナウロスを探しに行くんだしなぁ……。


居るかは分からんが、居たとして、穏便に終わる気がしないし、居なくても、大猫族みたいな事にされてるかもだしな。

何処か別の星にでも行ってるんなら、何も無いかもだけどな。


「まぁ、来るんなら、準備あるならしとくんだぞ。」


「はいニャ!」


――てっててっててっててって


いい返事をして、ウィトは部屋を出ていった。


え?見せびらかしに来ただけ……?


まぁ、確かに重要な事だからいいんだけどさ。

捕らえた鼠を見せに来たんじゃなくて良かったぜ。


あ。そういえば、ちゃんと神能使えるようになったのか、後で聞かないとだな。


――


「さ、これもどうぞ。」


朝から豪勢な食事である。

ハールマーが元気に動けるようになったので、早朝から張り切って狩りに行っていたようだ。


まぁ、ウィトの旅立ちって事もあると思うけどね。


あれもこれもと並べられた食料達。

鳥っぽい物、鹿っぽい物、宴にもあった果物達……。


ちょっとひと狩りでコレとは、腕もあろうが、豊かな自然の恵である。


とはいえ、魚は生息地が遠いらしく、普段はあまり食べないそうだ。

だから、今日も無い。


しかし、このハールマーに勧められた鳥っぽいのは、凄まじく美味いな。


鴨に似た味だが……


表面がパリッと仕上がった皮の下からは、トロリとした濃厚な脂が潤沢に流れ、モッチリとした肉に絡み付いて……。


そして何より、食欲を強引なまでに引き出そうとするこの芳しき香りよ……。


一品でクァルテットのようにハーモニーを織り成してやがる。


驚愕の美味さだ。


ローストっぽく仕上げられているが……これは、生ハムにでもしたら、魂が抜けるんじゃあなかろうか。


「いやー。朝から凄い豪勢だねぇー。めちゃくちゃ美味いよー。ありがとうね。」


「何の。この程度の事で御恩を返せたなどとは、とても……。」


「いやいや、何言ってんのさ。そりゃ、確かにオレ達は、ちょっと食わないくらいじゃ死なないよ。

でもさ、食事ってのは、そもそもが生命を繋ぐ行為だろ?もう二回もご馳走になったんだ。

それって、場合に拠ったら二回も生命を救われたって事じゃない?

ウィトとティグリの件は完全におあいこでしょ。

それにまぁ、オレとしては、こんな美味い物を教えてもらった、体験させてもらったっていう恩義もあるわけだよ。この体験ってのは、物より価値がある場合があるのさ。」


遊園地なんかは、結構高い割に人気だったんじゃないかな。

千葉にある東京のヤツとか、物凄く高いイメージだった。

オレはまぁ、遠かったから、一回しか行った事無いけど……。


ともかく、体験の価値化ってのは、人間特有の考え方かも知れないが、前世の記憶がある分、オレとしてはどうしても引っ張られてしまう。


ま、前世で禄な体験をしてないからなぁ……。


「ふむ?体験に、価値ですか。なるほど……。ウィトが神名を授けて頂いた事や、この腕や眼を治して頂いた事もでしょうか。」


いやー。それは実益があるから、ちょっと違うんだけどなぁ……。

もうちょっとこう……気分の話なんだよなぁ。


「なんと言うか、それとはちょっと違うんだ。」


「……そうですか。」


やはりオレは説明が下手な様だった……。

概念的なものを上手く伝えるって、難しいなぁ。


「さ、これもどうぞ。」


ハールマーに差し出された鹿っぽい肉を咀嚼しながら、異文化交流の難しさを少し考えたのだが……


例の如くめっちゃ美味かったので、すぐに吹き飛んだ。


――


「じゃ、皆忘れ物は無いかな?」


「はい。」

「うむ。」

「ないよー」

「ニャ!」


朝食後、各々旅の準備を整え……といっても、最初っから荷物は少ないのだが。


オレは、お土産に鴨っぽい肉を一羽分持たせてもらったので、ちょっと増えたけど。


下処理を施した後、今は、味噌漬けにしてある。

ビニールやプラスチックがないから、石の容器なんで、重いんだけど、ウチの面子は力持ちばかりなんで、何ともない。


簡素な鞄的な物には、オレの調味料一式が入っているのだが、そこに、石製の容器に入った鴨が、風呂敷で参戦した。

が、すぐ居なくなるだろう。


長宅を出ると、ハールマーとウーズ、そしてティグリが待っていた。


「ウィト……。貴女は、数百年ぶりに神化の叶った白虎です。必ずやレイリィ様のお役に立つのですよ。」


「かーちゃん!分かったニャ!」


「ウィト。お前は戦士だ。誇り高く生きるんだ。授かった力に驕る事の無い様にな。」


「とーちゃん!分かったニャ!」


……本来なら、感動のシーンな気がしなくもないが、ウィトの様子がそう見せてくれない。

一々ピョンピョン飛び跳ねるウィトが見せるそれは、ギャグシーンの様である。


まぁ、それはそれで、いいのかもな。

湿っぽいのは苦手だ。オレはきっと泣いちゃうから。


そんなシーンだったら、ウィトは置いてく事になっただろう。


「オイラが森の出口まで案内するニャ!上手く行かニャいと、通れニャいからニャ!」


そうして、オレ達は虎人の村を後にした。

ありがとうございました!

またよろしくお願いします!

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