1.44話 神名
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宴は……結論、めっちゃ良かった。
牛っぽい丸焼きみたいなのは、とんでもない美味だった。
乱暴に料理したものとはとても思えない、超高級黒毛和牛ブランドなど、及びもつかないだろう、そんな代物だった。まさに神がかっていた。
部位毎に、味わいが全然違うのだが……
先ず言える事としては、全体的に、サシ(霜降り)は、無い。
無くて、美味しいの?って感じだったのだが。
一口頬張ると、その柔らかさにまず驚いた。
ただ焼いただけの肉が、何時間も圧力鍋で煮込んだかの如く、ほろりと解けてしまう。
それは、どの部分も共通していた。
地球で人気のテンダーロインのシャトーブリアン。
超高級部位なわけだが、一番の魅力は、その柔らかさだろう。
だが、宴の牛は……全ての部位で、その柔らかさを超えてしまっていたのだ。
テンダーロインに並ぶ高級部位、サーロイン。
その魅力は、柔らかさの中にある歯応えと、脂の旨みとのコラボだろう。
だが、宴の牛のサーロインは、テンダーロイン並の柔らかさを誇るので、同じ歯応えを求めるなら、バカみたいに分厚く切る事になる。
漫画ステーキだ。
この贅沢過ぎる食べ方は、初めてだった。
そして、この肉は、見た目に霜降りは無いが、どうやら脂肪分が無いわけではなく、肉自体に上質な脂分が、適量含まれているようだ。
熟成していないのに、熟成肉よりも深い旨みと、溢れ出る肉汁と脂の洪水は、口の中で暴れ回り、警報が鳴り止まない。
気付けば、オレは涙していた。
旨みが一番強かったのは、肩甲骨周りだな。
所謂ウデと呼ばれる部位だ。
この辺りは、旨みの爆薬庫といった感じで、口に入れた瞬間に起爆して連爆した。
オレの思考力は、その爆風で吹き飛んでしまった。
モモと呼ばれる部位は、細かく別けるとたくさんあるが、総じてあっさりと食べれた。
あれなら刺身にも向いているだろう。
保存が利く様ならちょっと持って行きたかったが、如何せん。
バクバクいけちゃうので、あっという間に売り切れ御免だった。
地球では主に煮込みに使う、筋ばかりの硬いスネ肉は、漫画肉にして食ってやった。
満足感が半端なかった。
筋は多かったが、焼いただけなのに、その筋がゼラチン状になり、プルプルコリコリ食感を加えていたのだ。
……悶え死にするかと思った。
メインの牛以外にも、たくさん美味い物があった。
野草らしきものも、全然青臭くないし、タケノコは柔らかいし、エグ味もない。
林檎っぽいもの、葡萄っぽいもの、桃っぽいものもあったな。
まぁ、一言で纏めると、めっちゃ良かった。
皆楽しそうにしてたしな。
そういえば、虎人が謎の踊りを披露してたな。
凄く盛り上がってた。
豹人も、アクロバティックな事していた。
中々凄かったな。
まぁ、アクロバティックな動きは、アマネやルビィが割としてるから、驚きは無かったけど、連携してのパフォーマンスは、サーカスみたいだった。
中々良い演し物だったな。
いい村だなー。
本当にそう思った。
そんな賑わいを見せた宴も終わり、今は独り、星空を眺めている。
そういえば、今は碧夜のシーズンじゃないみたいだな。
神狐の郷とは見える星がちょっと違うけど、夜の宙らしい暗闇の中で、キラキラ光っている。
樹々のドームから覗く星空は、その全体像を見渡す事は出来ないが、万華鏡を覗いているかのようで、綺麗だ。
それにしても、神名って言うのか……。
どうやら神化を促す名付けは、神族にしか出来ないようだな。
能力をイメージして名付けると、その様に成る……というのも神の奇跡って事だろうかねぇ。
日本には、名は体を表すって諺があったけどさ。
まぁ、そんな感じの強力なヤツって事なんだろうな。
名前かぁ……。
テキトーに付けていいモンじゃ無さそうな所が余計悩むんだよなぁ……。
どんなのがいいかなぁ……。
まぁ、横文字っぽいのがいいよな。
よし。
オレは、名付けをするべく、建物へと入った。
――
「ハールマーさん。最終確認だけど。」
ハールマーは、何も置かれていない部屋で、戻った身体の調子を見るべく、ゆっくりと構えを取っていた。
それは、武道の修行のようでもあるが、虎人独特のものであろう。
その身体に備わっている武器を効果的に使用する為の動きのようだった。
「おお、レイリィ様。ご覧の通り、全盛期の力を取り戻せたようです。誠に有り難い。
それで、確認とは?」
「ウィトの事だけど。
本当に連れてってもいいの?もう二度と会えなくなるかもよ?」
「なるほど……。」
ハールマーは、腕を組んで瞑目しながら、少し俯く。
暫し後、顔を上げると、眼を見開く。
そして……
「それもまた、戦士の定めかと。」
と、眼力たっぷりに答える。
……虎顔の迫力は、中々凄まじい。
「分かった。じゃ、名付け……するか!」
「では、お部屋までウィトをお連れしましょう。」
――
客室として用意してくれた部屋は、そこそこ広く、応接間とそんなに変わらない印象を受ける。
竹製の寝台に、干草の布団といった感じではあるが……まぁ、ジブ〇っぽくて、偶にはいいだろう。
「儀式をするのかえ。」
客室は、一つである。
男女別という事も無い。
当然、この神狐も居る。
ま、大丈夫さ。
いざとなれば、オレは女の子になれるのだから。
「あまり、御無理為さらぬよう……。」
アマネが心配そうに覗き込んでくる。
おそらく、アマネの時に倒れてしまったからだろう。
あの時は、完全に和風の神様的名前だったから、詰め込み過ぎたのだ。
闇御津羽天弥媛神って、長いよなぁ。
フルネームで呼んだ事無いもん。
……オレが付けたんだけどさ。
ルビィは、いつか名前欲しがったりするのだろうか?
今の所、"ルビィ"を気に入ってるっぽいし、付けるにしても先の話なんだろうけど。
と、ルビィを見ると、「すー。すー。」と、気持ち良さそうに寝ていた。
うむ。それでこそルビィだ。
「レイリィ様。」
「レイリィ様ー!」
そうこうしていると、ハールマーが、ウィトを連れてやってきた。
「よし。じゃ、始めますかね。
ウィト、ここに。」
「はいニャ!」
ウィトは小気味良く返事をすると、てちてちとオレの前に来て、お座りのポーズを取る。
オレは、ウィトの頭に手を乗せて、神力を徐々に注いでいく。
そして……
「この者に、ウィト・フレンの名を与える!」
新たな名の宣誓と共に立ち昇る無数の光の粒達は、ゆらゆらと踊る様にして、ウィトを囲む。
やがて光はその輝きを増し、白い閃光を発し――ウィトに吸い込まれるようにして、収束した。
「おお……これが……!」
ハールマーは、感動とも驚愕とも取れる表情をしながら、ワナワナと固まっていた。
まぁ、結構綺麗だよね、これ。光はね。
「ウィトは、ウィト・フレンにニャったんニャ!」
ウィトは、嬉しそうだった。
でも、虎耳虎尾の天真爛漫系全裸美少女になってっからね?
飛び跳ねてないで、早よ服着ろや……。
むう。
そういえば、そうだったなー。こうなるんだった。
フウカもグエンもアマネも違ったから、すっかり忘れてたわ。ルビィパターンだわ、これ。
ま、ご希望に応えただけなんで、オレ悪くないよね?
「んじゃ!明日からの旅に備えて、寝ますかね!」
「うむ。」
「はい。」
「はいニャ!」
おい、ウィト。
お前の寝床はここじゃない。部屋に帰れや。
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