1.43話 大虎の宴
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少し気持ちを落ち着けて、ここ最近の事を思い出してみる。
オレは、なんでだか転生して、神族になった。
それも、リセット能力を与えられて。
で、母神様からは好きに生きろと言われたが、思い出したように獣族の問題も解決して欲しいと、テイルヘイムに落とされたわけだ。
まぁ、正直、転生したかったかと言われたら、別にしたくも無かったんだけど。
でも、ルビィにまた会えたのは、素直に嬉しかったんだよな。
おそらくだが、これは母神様の計らいなんだと思う。
準備してたとか何とか言ってたしな。
だから、ってワケじゃないけど、割り切って現状を受け入れる事は簡単だった。
綺麗な風景見たりとかも、感動したしな。
んで、フウカたち神狐の民に、随分お世話になった。
火神グエンにも、装備ももらった。アマネもだが。
フウカは、オレやルビィに親切にしてくれたが、打算もちゃんとあると言っていた。衰えた力を強化したい、と。
ルビィはまぁ、元飼い犬だからな。そりゃ懐くだろう。
てか、懐いてたから、まぁ、あんなもんだろ。
アマネは、なんだろうな、あの忠誠心というか……執着心……?迫害されてた過去が、影響してるんだろうか?
まぁ、オレも、アマネ程ではないけど、そこそこイジメは受けた。
縋りたくなる気持ちは分からんでもないな。
オレは、縋る相手が居なかったけど……。
いや、縋ったら、普通に騙されたんだっけ。
まぁ、それはいいや。
大猪族に、ルーキスナウロスの話を聞いて。
ルーヴからも聞いて。大猫の冠にも呪いが掛けられてて。
流れで、ティグリやウィトを助けて、ここまで来た。
うーむ。行き当たりばったり感半端ないな!
まぁプラプラ旅したいくらいの感覚だったし、そんなもんかも知れないが……。
ルーキスナウロスは、どんな奴だかは分からないが、あの呪いの感じ、かなり危険な気がするんだよな。
何だか……放っておいたら、オレの平和な幸せライフが来ない気がするんだよなぁ。
だからなのか、何とか解決しなきゃいけない……今はそんな気がしている。
……南半球で捕まえられなかったら、エルヴァルドに一度戻るとしよう。
で、神族の情報を入れつつ、味方も作らないとだな……。
ふむ。
やっぱり普通にハードな旅になるんじゃない?これ。
ウィトに懐かれる覚えも無いし、断るべきだよな。
「ボスー?ねてるのー?」
「寝てないよ。」
瞑目して考え込んでいたら、おねむを疑われた。
大人数が集まる会場は、そこそこガヤついている。
ここでいきなり寝れるほど眠くはないし、大物でも無い。
オレは、昔読んだ物語に出てくる様な、英雄でもなければ、大会社の社長だったわけでもない。
不運で無能な、理屈っぽい、冴えない中年だった。
それが、狼(美少女)、鬼美少女、狐(美女)と旅してるんだもんな。
で、白虎を妾にって、何プレイなんだ。
そりゃ、オレは人間辞めちゃったみたいだけどさ。
感性は人間なんだぞ?!別に石仮面被ってねーっての!
つーか、まだ本妻も居ないっての!
よし!決まり!
「皆、良く集まってくれた!」
考えが纏まった所で、ハールマーが現れて挨拶を始めた。
「「「ハールマー様!」」」
「「「長!!!」」」
「腕が……あるぞ!」「目が……」「若くニャってるニャ!」
ハールマーの登場により、会場はザワついた。
まぁ、そりゃ……治ってるからなぁ。
「今宵の宴は、こちらの、レイリィ様方への感謝の宴である!レイリィ様は、我が娘ウィトを救い、この身体をも治して下さった!」
「「「おおー!」」」
森一帯に谺する歓声が轟いた。
「レイリィ様方への感謝を!!」
「「「レイリィ様方への感謝を!!!!!」」」
その大音響と共に、宴が始まった。
思えば、こんな大規模な宴とか、初体験だ。
皆が皆、楽しそうに笑い、美味しそうに飲み食いしている。
某大人気海賊漫画で、よく宴のシーンが出てきてたけど、当時のオレにはイマイチ良さが解って無かった。
でも、この光景はどうだ……。
無事に帰して良かったと、本当にそう思う。
思えば、家族も無くて、友達も居なくて、独りだった頃に、実感なんて持てるわけが無かったんだ。
だからこそ。
「ハールマーさん、ちょっといいかな?」
「レイリィ様。お楽しみ頂けておりますか?」
「ああ、素晴らしいよ。
……だから、ウィトは連れて行けない。
危険な目には、遭わせたくないからな。
せっかく無事だったんだ。ここで平和に暮らした方がいいよ。」
すると、ハールマーはすっと立ち上がり、木製のコップを二つ手に取ると、
「レイリィ様。確かに一方的なお話でしたね。詳しくお話致しますので、少々御付き合い下さい。」
と、頭を下げた。
ハールマーと二人連れ立って、喧騒から少し離れた場所に移動した。
そこには竹製のベンチがあり、樹のドーム屋根の隙間から、ちょうど星空が少し覗いている。
野郎二人でってのも、たまには悪くない。
「どうぞ。」
「ああ、ありがとう。」
コップの中身はブドウ味の炭酸だった。
これまた深い味わいがして、とてつもなく素晴らしい品だ。持って帰りたい。
「レイリィ様。ウィトの事なのですが……
ウィトは、虎人の中でも、あの通り、白虎なのですよ。」
「ああ、白いね。それが?」
「大猫族も、少ないながらも獣神の血を残しているのですが……。
それを色濃く持つ者が稀に現われるのです。いえ、稀にしか現われないと言うべきでしょうか……。
先祖返りとでも言いましょうか。
獣神に近しい者……それは、虎人の場合は、白虎です。獅子人は、紫黒のはずですが……今はおりませんね。豹人も、今はおりません。」
「へー。先祖返り……。」
ルビィもそんな感じなんだろうか?
……いや、まぁ、ルビィは前世の色のままか。
「とはいえ、自力で神化は難しいのです。精々が、少し強い虎人という程度になります。
ですが、神族のお力を借りられるならば、神化に到ります。
……我らは、戦士の一族なのです。そこには、男も女も関係ありません。
レイリィ様が、ウィトを神化して下されば、足手まといにはならないでしょう。いえ、お役に立てるはずです!
それには、娶って頂くか、妾にして頂くのが、一番レイリィ様の御負担にならないかと思いましたので。
そういう形の御礼なのです。」
「そうなのか……。神化か……。」
そういえば、中国だかに四聖獣だったか四神だとかいう話もあったっけ。
霊獣白虎だっけ?あれも、獣神に関わる話なんだろうかね?まぁ、それはどうでもいいんだけど。
強い味方が増える、のはいいんだけど……
冒険物のパーティって、あんまりたくさん居るイメージは無いなぁー。
あ、戦闘は3人でも、控えにたくさんってパターンもあったかー。
そう考えたらまぁ、普通か。
「んー、ルビィはさ、神食与えただけで神化したんだけど、ウィトはいけるかな?」
「おそらくは、あまり力を得る事は難しいかと……」
ふーん。ルビィの潜在能力、相当なモンだったんだなぁ。
まぁ母神様もそんな感じの事言ってたしなぁ。
「んじゃ、名付けでもしようか……」
「な!神名を頂けるのですか?!」
なんだ?ずいぶん驚くねぇ。
「へ……?フウカもアマネもそうだよ?」
「なんと……。それでよろしいのでしたら、後ほどお願い致します。」
「ん、分かった。ウィトって名前は残した方がいい?」
「お任せ致します。さ、宴に戻りましょう。」
また流された気がしなくもないが……
神獣の仲間なら、増えた方がいいと思うしな。
宴を楽しみつつ、名前を考える事にした。
ありがとうございました。
新作もゆっくり投稿すると思いますので、よろしければ、そちらもご覧いただけると嬉しいです。