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1.38話 その噴水芸はちょっと違うと思う

R15指定だと思われます。ご注意ください!


「では、誓いの杯を!」


リオダーリが、高らかに宣言すると、獅子人の給仕係たちの手により、丼のような土器に順次、飲み物がなみなみと注がれていった。

なんだろうな、あれ。酒……なのかな。


会場て回っている給仕係とは別の獅子人か、オレたちの席を回って、謎の液体を杯に注いで行った。

ペコリと頭を下げ、獅子人は……自分の席だろう場所に戻ったようだ。


ふむ。

目の前の杯を手に取る。


神力を少し込めてみると……


あー……。黒っすね。


フウカの杯にも、意識を向けてみる。


……やっぱり黒だった。

アマネのも、ルビィのも、ティグリの分まで……真っ黒だった。


どうやら盛られているのは遅効性の毒で、半日後くらいに効果を発揮する様だ。中々にエグい事をするな。


まぁ……予想の範囲内だけどさ。


まぁでも、そんな感じの効果なら、多分飲んでもリセット出来る気がするけど……。


と、思いつつも。余計な被害は受けない方がいいやな。

という事で、皆に目線でNOのサインを出す。

((((こくり))))


うん。全員に伝わったようだな。よしよし。


さーて。どうしてやろうか……。


「皆様、行き渡りましたかな?」


リオダーリは、広場を見渡しながら、周囲全てに問いかけた。


中々演技派じゃないか。

下手くそな笑顔を頑張って作っているままだ。


いや、オレ達を始末出来るのが、普通に嬉しいのかな?


……何にせよ、タイミング的には、今だな。よし。


「ちょっといいかな?」


「どうされましたか?」


不意にオレが話し掛けた事でなのか、リオダーリは、ピクりとし、真顔になっていた。


「杯を交換しよう。オレと、リオダーリさんで。」


「……んな?!何故でしょう?」


そして、続く台詞の声を裏返した。


……こらこら。

明らかに動揺してんじゃあないですよ。


そんな感じだと、明らかに怪しい物入れてますよーって丸分かりだろ。

腹黒いけど、そんなに賢くは無いのかな?コイツ。


「ん?オレの知ってる作法だと、そうなんだよ。」


勿論でまかせだけどな!知らねぇよ!作法なんてさ!

この世界に生まれて、まだ三ヶ月くらいだかんな!


前世含めても、杯を酌み交わすとか、経験無いわ!そんなのヤ〇ザ映画くらいでしか見た事無いぜ!


でもまぁコレで押し切るぜ!種族も違うし、バレないだろ。


「……な?!……い、いや、ここは我々の作法で……」


「え?協定を締結する相手の作法も尊重出来ないって?そういう話?」


ちょっと圧を出すためにでも、頑張って悪そうな笑顔を作るんだぜ!くくく……


「い……いや、ですが!御希望通り、森の大猫はお渡ししましたが?!」


「そうだねぇ。そこは呑めるのに、コレは飲め無いって話かい?」


そう言ってグイッと杯を突き出してやる。

すると、


「……っ!」


リオダーリは、言葉に詰まってしまった。

そして、ギリギリと悔しそうに歯を食いしばり、杯を持っていない左手を握り締めている。


あらあら。もう何か、言い逃れする気無い感じ?


「……くっ!くっそガアァアァァァァァ!!!!」


リオダーリは、咆哮と共に、ガバッと立ち上がると、手に持っていた杯を地面に叩きつけた。


紳士風は終わりの様だ。

まぁ、何か胡散臭い感じだったもんなぁ。取って付けたようなさ。


「こいつらを生かして帰すなァァァ!!!……あア??!」


次の台詞を放った刹那。


リオダーリの首が――激しく吹き出る噴水のような自身の血液に押し上げられ、くるくると宙を舞っていた……。


「……汚い口を閉じなさい。痴れ者め。ご主人様に対して"こいつ"とは……。身の程を弁えるがよろしい。」


いつの間にか……本当にいつの間にか、アマネはリオダーリの横にいて、更には抜刀していた様で、オレが気付いた時には、ビュンと刀に付いた血糊を払って納刀する所だった……。

えぇ……。なにそれ……。



――ドンッ

と、リオダーリの首が地面に落ちると同時に、激しく血の噴水を上げていた胴体も、ドサッと倒れた。


アマネちゃん……。怖いッス……。


その余りの早業に、恐怖を感じたのはオレだけでは無かった様で、会場中の時が止まったかのように、獅子人達は固まっていた。


……あ、いかんいかん。呆けてる場合じゃない。


オレは杯を掲げると、普段より大声を上げた。


「この杯には毒が盛られていた!明らかにオレ達の生命を狙った行為だ!不戦協定締結の為の宴と偽り、生命を狙うなど、赦されない事だ!拠って、裁きを下した!異議のある者はいるか!大猫族は、敵対を望むのか!」


本来、こんな偉そうな物言いは好きじゃないんだが、空気を読まないとなぁ……。


食欲の無くなりそうなスプラッタシーンを見せられて、ちょっと気も滅入っているが、頑張り時である。


会場中を見渡すも、皆一様に倒れたリオダーリを凝視している。


つられて見れば、リオダーリの胴体は、びゅっびゅっと、血を吹きながら、ビクンビクンと痙攣していた。グロい。


顔はもっとアレなので、チラ見して諦めた。


水を打ったように静まり返ったままの宴会場。

……オレの言葉は届いてるんだろうか?これ。


その時だった。静寂を破る者が現れたのは。


「うぁあぁああぁぁぁぁぁ!!!とーちゃーぁぁあぁぁん!!!」


子ライオンがリオダーリの首に駆け寄り、縋り付いた。


どうやらリオダーリの子の様だ。……マジかぁー。


瞬間的に逡巡するも、いい答えでは無かったかも知れない。


でも、動いてしまった。


オレはリオダーリの胸に手を置き、集中し神力を込めた。


「リセット!」


ぐいぐいと力を吸われていく感覚と共に、リオダーリの身体は激しい光に包まれていく。


光が収束すると、リオダーリの泣き別れていた首と胴は繋がっていた。


ふぅ……。


「と……とーちゃーぁぁあぁぁん!!!」


そこに、子ライオンが飛び付いていった。


つ……疲れたぁ……!


今回は、三分程戻してみたのだ。

恐らくだが、後少しでも遅かったら、間に合わなかっただろうな。魂が霧散するか、冥界に逝くかしていただろう。


何となくだが、冥界に逝ってしまった魂は、戻せない気がする。


「……ご主人様、何故(なにゆえ)この様な?」


「ああ、子供が悲しむのはさ、ちょっと嫌だなーと。」


「……あまり、御無理為さらないで下さいまし。」


確かにもう、神力切れかけですな。出来て軽いのが後一回って所か。


うーむ。だいぶ持っていかれたな。あの状態だと、かなり大変らしい。

MP残量見れるわけじゃないし、気を付けないとなぁ……。


ま、それはそれとして。


「リオダーリ。お前、どういうつもりなんだ?何でオレ達を殺そうとした?」


せっかく治したんだし、聞く事は聞いておかないとな!

ありがとうございました。

またよろしくお願いします。

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