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1.37話 獅子人の宴


「あー、皆にちょっと注意事項ね。」


扉の無い藁葺き屋根の小屋に通された後、人気(ひとけ)が無い事を確認して、コソッと話を切り出す。


「宴とか言ってたけどさ、限りなく怪しいと思うんだよ。

だから、出された飲食物は、オレより先に手を付けたらダメだぞ。臭いで判らない毒だと困るからな。」


「はい。」

「うむ。」

「はーい。」

「わかったニャ。」


オレの言葉に、四人それぞれ素直に返事をする。


「ま、正直……人質解放されたら、別に逃げたっていいんだけどさ。宴とか別に要らんしさ。」


なるべくなら面倒事は避けたい。攻撃されたのなら、それなりの対処もしなくちゃいけなくなる。

それは普通に面倒事だ。


だったら、人質だけ解放したら、さっさと南を目指した方が無難な気がする。


と、思ったのだが、どうもティグリは納得出来ない様子だった。


「それはダメニャ!オイラだけじゃ護りきれないニャ!森に戻れニャいニャ!」


「えぇー、なにー?森に送るのー……?」


「いいじゃニャいか!森に着いたらちゃんとした宴やってやるから!ニャ!

あ!そうニャ!嫁もやるニャ!虎人も、豹人も、選り取り見取りニャ!神族ニャから、女好きニャろ?」


えぇー……?神族ってそんな感じ……あ、最高神か!

グエンさんにそんな話聞いたなー。やっぱ有名なのかー。

まぁ、オレだって女好きか嫌いかって言われたら、そりゃ見てる分には好きだが……。

ん?でも、獣族の男女、オレ……ぱっと見で見分けれない……ぞ?

てか、言葉を話す二足歩行の動物って感じにしか思えないんだが……?

オレにそんな特殊な趣味があるとでも……?


「や、オレまだ嫁はいいよ……。」


そもそもだ。オレまだ10歳ですからねぇ。


てか、そういう感じで結婚ってどうなのよ。ちょっと感覚的に分からんなぁ。お見合いですらないじゃん。


……ん?


てか……オレ、結婚ってあんまりいいイメージ無かったわ!大失敗な記憶がある!

うわぁ……ちょっと怖くなってきた……。


あ、何か嫌な記憶が沸々と……


「ねーねーフウカさまー?ヨメってなにー?」


「ふむ。(つがい)の事ぞえ。」


「えー?ボス、つがいつくるのー?」


「ふふ。どうであろうな。」


ちょっ……そこ!何言ってんだ!はぁ?!しねーよ!オレ、結婚とかしねー!しねーから!


「ご主人様……。出来る事ならばで構いませぬが、私をお見限りなさいませぬよう……。この生命尽きるまで、お仕えさせて頂きたく……。」


ちょっ……?何言っちゃってんの?!この鬼娘(ひと)?!!なんの話?!!


「いや!しないから!結婚とか!嫁とか、要らんから!まだ!全然!」


あぁ……クラクラする。神力使ってないのにな!


くそう……ティグリめ!変な事言いやがって!こんな幼気な少年に向かって!中身中年だけど!


「ニャんでニャ?変な神族だニャー?」


くっ……こ、コイツ……!グーパンしてやろーか……!

何で話が通じねーんだ……!おかしい……同じ言語で話してるとは思えねー……!


「オレはまだまだ嫁とか要らねーの!旅とかするの!自由に暮らすの!」


「ふーん。そうかニャ。じゃ、森まで旅しに来るといいニャ!今なら案内付きニャ!お得ニャ!」


はぁ……。コイツは商売人かも知れんなぁ……。ただ必死なだけかも知れんけど。


「あー、もー。分かったよ……。分かった。送るよ。

皆もそれでいい?」


「構わぬえ。」

「勿論でございます。」

「だいじょぶー!」


本当、こいつらいい奴らだなぁ。

って、嫌がってるオレが悪者みたいじゃないか!

いやいや、オレは普通。普通の筈だ!……だよな?


ま、まぁ、ほら、急がないとルーキスナウロスがさぁ、悪さしてるかもだしー?そっちもかなり重要だと思うしー?時間勝負のとこあるしー?


と、自分に言い訳をしていたところに


「神族様方、失礼致します!宴の準備が整いました!おいで下さい!」


と、小屋の外から声がした。


「お?お呼びみたいね。よし。行こうか。」



――


獅子人達の拠点は、中央に広場があり、その周囲に藁葺き屋根の建物が建てられていて、それらをぐるりと柵で囲った造りになっていた。


あんまり馴染みはないけど、アフリカの部族とかの伝統的な造りって感じだろうかな?


宴はその中央広場で催される様だ。

既に広場には、獅子人達が多数集まっている様だった。


広場の中心には、キャンプファイヤーのような櫓が組まれていて、火も点けられていた。……まだ昼なんだけどな。


そして、少し離れた所に、それを囲む様にして石製の丸型テーブルが設置してあった。

どうやら立食用らしく、背が高い。


キャンプファイヤーかぁ……。


キャンプファイヤーといえば、小学生位の頃、そんな学校行事あったなぁ。林間学校っていうのかな。


確か……ダンスがあったっけなぁ。

背が小さかった当時のオレは、女子の列に並ばされ、ずっと男子と踊ったんだっけ。足も踏まれて怪我したしな。酷い話だ。


まぁ、今日はダンスはさせられないだろ。……ないよな?あれ?オレ、今ってチビッ子じゃねーか!え?ないよな?



オレ達は、拠点出入口から遠い方――前世でいうところの上座方向に案内された。


「ささ、どうぞこちらへ!」


この村?は、地面は舗装などはされておらず、土と草といったところだが、案内されたその辺りだけ、石畳のように整備されていた。


更に奥には、小さ目のステージらしき石段がある。

儀式や集会の時にでも、族長が使うんだろう。


オレ達に用意されていた、テーブルも石製だったのだが……。

背が低く、椅子も無い為、法事なんかで行く仕出し屋に有りそうな、正座するタイプのテーブル……みたいな感覚だな。


その上に、ゴソッと――丸焼きな感じの肉や、野菜などの食料が並べられている。


お椀に近い形の……土器……?も、あるが、空っぽなので、飲料でも入れるんだろうか?


「ささ、お座り下さい!族長も間もなく参ります!」


「ああ、ありがとう。」


言われるまま、胡座をかいて、席に着く。


まぁ、なんというか、立ってる奴らの中で、オレ達だけ座ってるという構図……。いやぁ、怪し過ぎだよなぁ。


程無くして、リオダーリが現れた。


先程と違い、茶色い毛皮のマントみたいなものを羽織り、頭には冠らしき輪っかを乗せている。

正装なんだろうか?……あんまりカッコ良くは無いな。なんかくすんだ色してるし。


「神族の皆様方。改めまして、大猫族長リオダーリでございます。ようこそおいで下さいました。細やかながらではありますが、歓待の宴を設けさせて頂きました。どうかお寛ぎ下さいますと、幸いです。」


リオダーリは、オレ達の対面に座ると、柔らかいトーンで話し始めた。

表情は、笑顔を作ろうと努めていそうではあるのだが、獅子の顔だからか、あんまり得意では無いようだ。


「では、早速ではありますが、先程申されました、不戦の誓いの締結、及び、先日の戦のお詫びの印と致しまして、森の大猫をお渡し致します。

ここへ!」


リオダーリがパンパンと二回手を叩き合図をすると、獅子人に子虎が連れてこられた。

その子虎は、白虎だった。


「ウィト様!」


「えっ……ティグリ?!ニャんでちっちゃくニャってるニャ?!」


ウィトと呼ばれた白虎は、ティグリの姿を見て大層驚いていた。


「……色々あったんですニャ。とにかく、無事で良かったですニャ!」


あー、それはオレの仕業です。はい。

そういえば、戻してなかったね。すまん。


「では、誓いの杯を!」

ありがとうございました。

またよろしくお願いします。

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