1.36話 威を借る
PV1500超え、更にブクマ数が増えておりました!
ありがとうございます!この御礼を書きたいが為に、本日頑張って仕上げました!
海で少し海産物を採った後、そこから東に向かって草原を移動する事、二時間。
出発してからの移動は、計六時間。移動距離的には、東京大阪間程度だろうか。
……一言だけ添えるならば、ルビィくっそ速いな。悪路も、ものともしない感じだしな……。
この世界に、メカ的な物……車とか、無いけど……純粋に要らないんだろうなぁ。
ルビィはおそらく特別製だとは思うけど、獣族全般、身体能力ヤバいものな。
とはいえだ。未だルビィに疲れた様子は無いけど、そろそろ夕方にも差し掛かる。夜営の準備でもした方がいいかもな。
ちょうど良さげな木と岩がある。
「ルビィ!ストップ!休憩するかー。」
「はーい!」
この辺りは、広々とした草原に、所々木が生えている。見た感じは、サバンナ。だが、気候としては、神狐の郷や、神泉の森と変わらない。不思議な事だ。多分、そう設計されてるんだろうな。
オレは、小さめの岩が近くにある木の下を休憩所にする事にした。
見晴らしも悪くないし……といっても、襲撃される様な心配は、あまり無さそうなんだが。
「んじゃ、今日はここまでにしようか。」
「はい。」
「うむ。」
「はーい!」
「んニャ。」
海で採ってきた、海老や海藻の味噌鍋を夕食に摂り、その日は早目に就寝した。
ちなみに、海老丸ごとの出汁&味噌のコンビの破壊力は半端なかった。
――
翌日。
休憩所にした辺りから、更に二時間程進むと、遠くに柵が見えた。
「あれニャ。しかし、ルビィっち速いニャー。海に寄っててこれニャんて。」
「ふひひー」
どうやら、大猫族的には、神狐の郷からここまで、直線距離の移動で、二日という事らしかった。
川に沿って海に出て……という遠回りをして、実質8時間で踏破したルビィは、やはり、かなり異常らしい。まぁ、風切り音凄いからなぁー。景色も飛んで行くし。そんな感じはしてた。オレも初めてルビィに乗った時は飛んだしなぁ、空に。
まぁ、今回は飛ばされたりしない様に、フウカが風を操ったりしていたみたいだ。おかげで安全安心だったな。音の割に風圧も感じなかったしな。
……風を操れるって、便利そうだな。オレもいつか練習しようかしら。今は自力では治癒しか出来ないからなぁ。
ふーむ。しかし、昨晩の"狼モフり布団"は中々良かった。
旅は長いから、またお世話になるだろう。九尾布団にありつける日も来るのかなぁー?フウカはあんまり狐にならないからなぁ……。むぅ……。
そうこうしていたら、柵の切れ目が見えた。一旦ルビィから降り、徒歩で向かう。
「む、誰だァお前らァ!」
柵が開いている所には、門番が立っていた。鬣が立派な獅子人である。
……門番、大体居るな。てか、今まで行った所、全部居たわ。
「ティグリだニャー」
ティグリが一歩前に出て、門番と話し始める。
「あん?お前も、子供になったのカァ。
で、森のモンが、何の用だァ?」
「ふふん。見て分からんかニャ?
神狼、神狐、鬼神、神族の方々がお目見えニャー!
族長はどーしたニャ!帰ってるはずニャ!」
おお……?何煽ってんのコイツ……?嫌いとか言ってたからなぁ。仕方ないのかな……?
全く。虎のクセに、神の威を借りんなよ……。
「な、なんで神族が……!報復か?!」
「あー、いやいや。そういうわけじゃないんだ。
な、フウカ。」
「そうぞえ。こなたは、神狐の長、フウカぞえ。
大猫の長、ルーヴ殿はおるかえ?」
「ルーヴ様……いや、ルーヴはいるガァ……、アイツはもう族長じゃあない。リオダーリ様に代わった。」
「ニャんだとー!」
「リオダーリ?」
「ちょっと、こっちニャ。」
ティグリに裾を齧られ、離れた場所に連れて行かれ、耳打ちされる。
「リオダーリは、人質の発案者らしいニャ。
でもルーヴとはあんまり仲良くニャくて、今回の襲撃にも、反対してニャ、参加しニャかったのニャ。」
「そうなのか。」
「負けて子供にニャって帰ってきたルーヴなんて、楽にやっつけられたんニャろ。」
うーむ。聞いてる感じ、何だか腹黒そうなヤツだなぁ。
「まぁ、とにかく、そいつと話してみないとな。」
「ん、頼むニャ。」
門番の所に戻り、取次を頼む事にする。
「オレは、レイリィ・セトリィアス・ミデニスティース。創造の女神ソールフレイヤのニルヴァだ。
族長と話がしたい。取り次いでくれ。」
おそらくだが、大仰な感じの方がいいだろうと思い、敢えてそうしてみたところ……
「そ……創造の……!お、お待ち下さい!直ぐに!直ぐに呼んできます!」
効果覿面だった。
えぇー……。
母神様、やっぱヤバい感じなんだなぁー。グエンさんの言ってた通りか。
「フウカ。」
「うむ?」
「ルーヴが失脚したんなら、不戦協定が微妙だからさ、しっかりここで宣言しないとだな。」
「うむ。であるな。有難いえ。」
程なくして、先程の門番と一緒に、少し小さ目の獅子人が小走りで現れた。
「これはこれは。ようこそおいで下さいましたな。
何でも創造の女神様のご関係者とか。
族長をしております、リオダーリと申します。」
「レイリィ・セトリィアス・ミデニスティースだ。
ルーヴが族長じゃなかったのか?」
「ああ、ルーヴめはですな、独断で他部族に攻め入り、被害を出しましたので、責任を取りましてな。」
……獅子だが、狸っぽいな。責任を取ったんじゃなくて、責任を取らせたんじゃないのか?
まぁ、いいけどさ。
「ま、それはいいんだがな。
ルーヴと神狐の民は、戦闘後に、今後の不戦協定を結んだんだが、それは知っているか?」
リオダーリは、一瞬ではあったが、動揺した様子を見せた。知らなかったんだろうか。
「は、はい。勿論です。」
取り繕う様に肯定したリオダーリに、フウカが畳み掛けた。
「そうかえ。ならば、そなたの所に虎がおるであろ?森の大猫よ。貰い受けるぞえ。それをもって約定の成立と致そうぞえ。」
「な……!」
フウカの言葉に、リオダーリは、ギリギリと歯を食いしばった。
「くっ……!今、連れてこさせます……。
おい。」
リオダーリは、先程の門番に顎で指示を出した。
そして、
「ま……まぁ、皆様。長旅でお疲れでしょう。歓待の宴を催しますので、是非お寛ぎ下され。」
と、気前の良さそうな顔をした。
「お、それは有難いね。オレ達は、これから南半球に行こうと思ってるんだ。誰か詳しい者はいないか?話してくれると助かるよ。」
「ああ、確か、おりましたとも。宴の際には呼びますので、どうぞこちらへ。」
そうして、空き家だという藁葺き屋根の小屋に通された。その小屋も、扉は無かった。
ありがとうございました。
またよろしくお願いします。
少しづつではありますが、数字が増えて嬉しく思っています。
ご意見やご指摘などでも構いませんので、コメントなど頂ければ、もっと頑張れそうです。