1.33話 南半球調査隊!
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大猫族が帰路についてから、一週間が過ぎた。
今日は修行休み……つまり休日だ。
前世でもそうだったが、休日は好きなようにダラダラと過ごしたものだったが、今日は違う。
オレがテイルヘイムに来てから、約二ヶ月間で、既に二度、争いに遭遇した。随分ときな臭い話である。
その両方で名前が出た、謎の神族。今日は、その事について話し合っていた――
「ルーキスナウロスってさ、北の大猪族の所から、南下して大猫族の所に行ったって事だよな?」
その問に対して、フウカは、「おそらく……そうであろうな。」と、溜息混じりに答える。神狐の民は、何となく標的にされている様な感があるからな……。まぁ、そうなるよね。
だが、このメッシュ入り狐耳銀髪美女は、そんな仕草ですら艶めかしいから困る。
「もし、まだ他の世界に渡って無いのなら、もしかしたら、南半球に居たりするのかな?」
じっと黙っていると、お人形さんの様な黒髪鬼美少女アマネは、何かを考え込む様にして答える。
「そう……かも知れませんね。」
ロリクールビューティという、ちょっとニッチな?この美少女も、なんとも可憐で儚げだ。憂い気な表情が良く似合う。
まぁ、オレとしては、笑ってて欲しいんだが。
とはいえ、楽しくないのに笑えるか!という人種もいるだろうからな。楽しいと思えるような事、いつか見付けてくれるといいなーとか思ってる。
その為もあり、世話になった郷の平和の為もあり……
まぁ、そんな話し合いなのだ。
「フウカはさ、南半球の獣族とは繋がりは無いんだっけ?」
「こなたには無いぞえ。」
まぁ、そう言ってたもんなぁ。
「ルビィー!ルビィは、南半球行った事あるか?」
少し離れた所で、気持ち良さそうにお昼寝をしているルビィに声を掛ける。
「えっ?なに?ルビィたべてないよ!」
……何の夢見てたんだ。まぁ、いいや。多分無いだろうしな。この郷にも来た事無かったらしいからな。
「アマネは?」
「……私は、火の星より出た事は、ございませんでした。」
うーむ。まぁ、ずっとグエンに仕えてたんだし、そうなんだろうなぁ。
……情報が無い。と、来れば、調査するしかないな!
「じゃあ、ちょっと南半球に行ってみようと思う。」
オレとしては、母神様に頼まれたって事もあるけど、ルビィを育てた大狼の皆や、世話になってる神狐の民が、平和に暮らしてくれたらなって思いもある。
だからまぁ、調査くらいはね、という所なのだが……
フウカからは、即座に鋭いツッコミが入る。
「ちょっと、という距離では無いぞえ。」
まぁ、そうだよねー。そんな気はしてたー。
「転移石は……」
便利なアレ、使えたりしたら話は早いんだが……と、聞いてみるも……
「この郷の物は、神泉の森、火の山、エルヴァルドの火の社のみぞえ。
神泉の森の物は、何処に繋がっておるのか、全ては知らぬぞえ。
であるから、使えぬぞえ。」
予想はしてたが、無理らしい。
そんなわけで、徒歩決定ですねー。
まぁ、いいさ。それも悪くない。それこそが、旅ってもんだろ!
「私も、勿論お供致します。今度こそ、必ずやお護りいたします。」
アマネってば、相変わらず……硬い感じだなぁ。と思うけど、心強くはある。たくさんの意味を込めて付けた名前は、能力が恐ろしい事になってたしなぁ……。
ただ、この忠誠心というか、献身って、何処からきてるんだろうなぁ。出会った初日からだもんな。ちょっとオレの感覚では分からないな。不思議だ。
まぁ、ありがたいけどさ。
「ふむ。では、こなたも同行しようかえ。」
「え?」
この神狐、また何か言い出したよ!
「族長を訪ねるのであろ?其の方が、何かと都合も良かろうえ。」
「長旅……だけど?大丈夫なの?」
「リンコに任せておけば良かろうえ。」
フウカは、妖艶な笑みでもって、そんな事を言う。
かなり酷い事言ってる気がするのだが、何故か背景が輝いて見えてしまう。もう花弁とか舞ってそう。
相変わらず、目の毒だわぁー。巫女服もなぁ、谷間が気になるのよ。谷間が。まぁさ、着てるだけマシだけどな!
てか、リンコはこの場に居ないけど、そんな簡単に決めちゃって良いわけ?……良いんだろうなぁ。
「ルビィは……」
むにゃむにゃ夢の中でした。
まぁ、来るわな。てか、置いてったら後が怖い。修行は途中ではあるが、生活に支障は無い程度にはなったしな。道中にも、出来る事はあるだろう。
「んじゃ、四人で行きますか。」
――
旅の準備は、実にスピーディに完了した。
今回のメンバーである、アマネ、フウカ、ルビィ、レイリィ君(オレ。)あいうえお順。は、神食さえあればいい身体になってしまったわけで。嵩張る荷物はあんまり要らないという……便利だが、悲しい事になっているからな。
とはいえ、味噌は持ってきたぞ。要るだろ、味噌は。あと、醤油もある。ぐふふ。
大事な癒しの風呂は……まぁ、適当に作れたら作ればいいし、流石に旅だから最悪我慢する。
布団はルビィ(狼)に頼むか、フウカ(狐)に頼めばいいかなって感じ。獣化したら、二人ともデカいしな。
という事で、かなりの軽装なのだ。
一先ずは、大猫族のエリアを目指す事にした。
話に拠ると、クコの森を南下して、二日程らしい。ただ、想像の範囲内ではあったが、その二日というのが……
「ルビィー!飛ばし過ぎじゃないかー?木が!枝が!」
徒歩というか、"走って"なのだ。しかも、獣族のスピードで、だ。
「えー?なにー?」
「枝が……めっちゃ当たる!」
クコの森は、鬱蒼としている。
現在……デカいルビィの背に、オレ、アマネ、フウカの順に跨っているのだが……
木々の隙間を縫う様にして、ルビィは器用に疾走する。すると、低目の位置にある枝が、大体オレにヒットするわけだ。
丈夫な身体だからいいようなものの……普通の人間だったら、今頃血達磨だぞ!
母神さん!丈夫な身体に生んでくれてありがとう!ってやつだなー。
「ご主人様。代わりましょう。全ての枝を払ってみせます。」
オレが弱音を吐くと、アマネが何か物騒な事言い出した。
「いやいや、いいよ。」
「ならば、燃やすかえ?」
「いやいや、ダメっしょ。」
そして、フウカがもっと物騒な事言い出した。
何なの君達。環境破壊はダメよ!まさか、その後リセットしたらいいじゃない的に思ってないよね?ないよね?!そんな広範囲リセットするとか、オレ南半球じゃなくて、冥界逝っちゃうからな?!
とかなんとか考えてる間にも、バシバシと枝が……
「ルビィ!一旦ストップ!」
「えー?はーい。」
出発してから、まだ二時間しか進んでないけど、ちょっと休憩する事にした。だって痛いんだもん。
ありがとうございました。
またよろしくお願いします。