1.31話 猫まっしぐら
お越し頂きありがとうございます。
今回はR15指定では無いと思います。
「二ー。二ー。二ー。二ー。」
猫だ。オレは今――仔猫に囲まれている。
猫カフェで癒されているわけでは、勿論無い。
てか、前世では猫アレルギーだったから、そんな所行った事も無い。この身体は、多分大丈夫だが、この郷に、猫カフェなんぞあるわけが無い。
だが、今、まさに大量の仔猫が、足元に、頭に、背中に……身体中にまとわりついている――
それは、お師匠さんに、闇御津羽天弥媛神というクソ長い名前を付けた、その翌日。
またしても固い石台の上にて目覚め――ルビィが寝込みに舐め散らかしたであろう、ねちゃねちゃの顔を拭きながら、ふと思い出したんだ。
そういえば、大猫族のその後、見てないや……って。
何だか無責任な気がしたから、どんな事になったのかくらいは確認しようと……。
そう思って、聞いたわけだ、育児室の場所を。午前中は暇そうな、フウカに。
で、
「二ー。二ー。二ー。二ー。」
コレである。
「ふふ。随分と懐かれておるな。流石ぞえ。」
「なにが?!」
色とりどりの仔猫達が、何故かやたらとオレによじ登ろうとしている。何なんだ!
……アレかなぁー。リセットした恨みかなぁー。
だが、恨み……は、あんまり感じないんだよなぁ。齧るでも引っ掻くでもない。ひたすらに頂上を目指してくる感じだ。オレは山じゃないぞ!クライマーなら山に行け!
「神力に惹かれておるのえ。」
あぁ、そういうもんなの?釈迦が動物侍らせてる絵見た事あるけど、あんな感じなのかな。知らんけど。てか、そもそも釈迦って神なのか?……まぁ、いいや。
「で、どうする?多分ちょっと戻せる、と思うけど。」
何となくではあるが、そんな事が出来る気がするのだ。
「ふむ。では、最も幼きこの者を、少し戻してみて欲しいぞえ。」
布に乗せられた、目も開いて無い、一匹の猫。あの時のライオンという事だった。
あれから一ヶ月。神狐の民達により、神力を注がれて生き長らえた未熟児。
しかしまぁ、よく生かしたもんだな。色んな意味で。
「ん、じゃあ、子供くらいにまで戻してみるよ。」
リセットのリセット。そういうと、変な表現だな。
ロードっていう方が近いのかな。
リセット能力は、その物体が歩んできた時間の中の、任意の地点に戻せる。
だが、世界の時間は、同一に進んでいる。その一旦進んだ時間を、世界的に戻している訳では無いのだ。戻すのは、能力を行使する対象だけなのだ。……なんとも不思議な話だなぁ。
まぁ、難しい話はいい。
とにかく、元獅子人を、再度、再起点設定する。
とりあえず、無害な辺りでいいだろう。あまり戻し過ぎて、また襲いかかられたら、面倒くさいし。
「リセット!」
「おぉ……。成長……したのかえ……?」
先程まで未熟児だった仔猫は、立派とは言えないまでも、少々の鬣が目に付く小ライオンに変貌を遂げた。
「……グルゥ?あ、あ、アンタは……、何をしたんだ……!」
「ほー。子供だと話せるのか。
よし。あの時は、ちゃんと会話にならなかったからな、少し話をしようか。」
「な、なんだよ……。」
小ライオンは、明らかに怯えた様子で身を縮こまらせ、震えながら、こちらを見ている。
うーむ。物理的にダメージ与えた訳じゃないんだけどな。胎児にされたのは、流石にショックだったのかな?まぁ、そらそうか。もしオレがそんな事されたんなら、トラウマになるだろうしなぁ。
まぁでも、この方が、色々と聞き出しやすいかもな。
「お前、何で突然攻めて来たわけ?」
「……そ、それは……。」
「それは?」
「神族が……」
「……神族?」
元獅子人、大猫族の長ルーヴの話によると……
ルーキスナウロスという神族が、集落に来て、しばらく一緒に暮らしていたらしい。
ルーキスナウロスは、色々な世界を巡っていたという事で、様々な知識を持っていて、ルーヴ達に沢山の話をしてくれたという。
そして、大猫族を大変褒めたそうだ。強い、気高い、獣族の中で頭抜けている、神にも近い、と。
神狐の民などより、余程強い、と。
大猫族は、神獣となるべきだ――と。
神狐の民を殺して喰らえば、神獣になれるだろう――と。
ルーキスナウロス。大猪族の時にも出た名前だ。
一体、何なんだ?何が目的で、争い事を作ろうとしてるんだ?
……うーむ。
神スマホを取り出す。
通話アプリ的なのをポチっとな。
「あら、お久しぶりですね。どうしました?」
相変わらず、呼出音も無く、すぐ繋がるなぁ。
……暇なのかしら。
「ども。お久しぶりです。ちょっと聞きたい事がありましてね。
ルーキスナウロスって神族、分かりますか?」
「ルーキスナウロス、ですか……。
アズの者ではありませんね。何故ですか?」
「大猪族や、大猫族を焚き付けて、他部族を襲わせるように仕向けてるみたいで。」
ここ最近の経緯などを、手短に説明する。
「そうですか。そのような事が……。
獣族の諍いは、ここ数年増えていると聞いていましたが、その者が引き起こしているのかも知れませんね。
分かりました。レイリィさん。あなたも、修行が一段落したら、一度こちらに戻ってきて下さい。私の方でも調べておきますね。」
「分かりました。」
――通話終了ポチッとな。
ふーむ。母神様も知らないか。
「その板、便利そうなえ。」
考え込んでいると、フウカが神スマホを物珍しそうに覗き込んでいた。うん。まぁ、便利ですよ。写真とか撮れるしな。
てか、そんな事よりも……
「獣族ってか、テイルヘイムについて、教えてくれないかな。ちょうど、長が二人も居るしさ。」
オレ、ここの情報、未だに全然知らないんだよな。しばらく修行だけしてればいいかと思ってたけど、何かそんな感じでも無くなってきた気がしてならない。
そろそろ、ちゃんと情報を入れて、色々と考えなくては駄目なのかも知れない。
「構わぬえ。こなたの知る範囲になるがの。」
「わ、分かった。」
ありがとうございました。
またよろしくお願いします。