0.4 目が覚めて謎世界~さようなら人生~
作中に宗教観的なお話もありますが、特定の宗教や信仰を貶めたり、否定する意図はございません。
ご承知おきくださいますよう。
https://ncode.syosetu.com/n0039hp/
↑こちらに簡易版プロローグがあります。
サクサク楽しみたい方は、そちらをお読みの上、テイルヘイム編からお楽しみ頂ければ幸いです!
いつの間に寝てたっけ?
あれ? ……寝てたんだっけ?
うーん?
ん?
うっすらと、何だか凄く強い衝撃を受けた記憶があるような……気がするぞ。
うーん?
頭の中がボヤけてる。
えーっと。何してたっけ?
いや、そもそも、ここ、どこだ?
夢?
……を見てるにしたら、やたらリアルな感覚だし、布団もない。
低血圧と言えど、毎朝ここまで寝ぼけないけどなぁ?
うーん。
おぉ……、これが混乱ってやつ?
などと自問自答しながら、ゆっくりと立ち上がり周囲を見渡してみる。
んー……?
白い……部屋……? ……でもないような?
広いのか、狭いのかすら、分からない。
暑くも寒くもない。
明るくも暗くもない。何なんだ。
ただ白い空間って感じだ。
とりあえず、思考も纏まらないし、座るか。
なんだか疲れてる気がするし。ちょっと休憩だな!
「お疲れ様でしたね。」
突如背後から、声がした。
優しげで温かみのある声だ。女の人かな?
「お疲れ様です。」
反射的に立ち上がり、声だけで応える。リーマンの悲しいサガ。
サボってませんよ? ちょっと休憩してただけです!
……あれ? 会社じゃない……よな?
いやいや、会社なんか辞めてるわ。だいぶ前に。んん?
「あぁ、お会い出来るとは。僥倖ですね。」
背後では、なぜか感動? されている。
うん。わけが分からない。知り合いか?
いや、こんな不思議空間にか?
そんなわけない。そもそも、聞き覚えの無い声だし。
でも、人が居たんだ。丁度良かった。ちょっと聞いてみよう。
と、声のした方へ向き直り、視線を送る。
目に入ったのは、一人の女性。
やはり初対面だ。
金髪碧眼、ゆるふわロング。若そうな、それでいて貫禄もあり、母性的な印象を受ける。ゆったりとした白い布を巻いた様な、不思議な服を着ている。
シーツ? なわけないよな。
「すいません。ちょっといいですか?」
しかし、やたら美人だな? スタイルもいいし。色白だし。何気に露出度高いよなぁ。眼福。
「えぇっと、ここ、どこですかね? 何か記憶がハッキリしなくて。」
とりあえず、疑問を投げてみた。
そういえば、日本人っぽくないけど、日本語通じるんだな。
美女は、大きな目を殊更に丸くしながら、口をパクパクした。
なぜだ。
そんな変な事言ってないだろ。
しかし、睫毛長いなぁ。瞬きする度に音が聞こえそうだ。
桜色の唇もいいなぁ。少し上がった口角といい、理想的な形だし。
すらっと伸びた首筋といい、綺麗に浮いてる鎖骨といい、中々……。
それに、形の良さそうな巨乳だしなぁ。
こんな美女、初めて見たかも。いや、素晴らしい。神々しいまであるな。
心の中で、拍手喝采!
スタンディング・オベーションですわ。
そして返答を待つ事、数秒。
「あなた……やっぱりマイペースなんですね。」
はぁ、そうですか。
いやいや、初対面でやっぱりってなんだよ。
質問の回答じゃなく、よく分からない感想もらっちゃったよ。
「まぁ、たまに言われたりしますね。」
と、一応返答しておく。
「まず、一番重要な事をお伝えしますね。」
おぉ? 急に話が噛み合い出したぞ。
「あなたは今、魂の状態です。
ですから、思考している事も、口に出した事も、同じ様に伝わってきます。」
はい?! なんですと?!
え……ダダ漏れ? っすか!?
Oh Noだぜ! なんてこったい! unbelievable!
えぇぇぇぇぇぇ! 待って待って! ちょっと恥ずかしいです!
色々アレな事考えてたじゃないか!
「大丈夫ですよ。あなたの事、よく見てましたから。」
フォローになってねーぜー! 見てたってなにー?!
いや、ある意味フォローされてたってか?
はぁ?!
SNSなんかやって無いけどな!! なんなんだその笑顔!?
「私、あなた方のいうところの、神ですから。見たりもしますよ。」
女神降臨ー! リアルにー! どゆことー?
てか、居たんだ?神。
へー。神、いたんだぁ……。
ふーん。コレがねぇー。
はー。神てのはやっぱ、美形なんだなぁー。ほー。
「ちょっと、コレとは失礼ですね。」
おっと、そうだった。全部伝わるんでしたっけ。
いやいや、急にそんな事いわれましてもね?
思考と言動って、普通の人って違う事多いでしょうよ。
本音と建前は社会人の必須スキルでしょうよ。
本音だけで上手く語るなんて、慣れてないんですから。
大目に見てくださいよ。
「まぁいいでしょう。ここがどこか、なぜあなたがここにいるのか、でしたね。」
そうそう、それですよ。
「どこまで覚えていますか?」
えぇぇっと…?
確か……
店舗がもぬけの殻で……
銀行に行こうとして……?
子供が……いた?
「そうですね。あなたは、子供を助けたのです。」
あぁー! そうだったかも。
「ビル用の大型鉄骨がたくさん倒れてきて、あなたは子供を助け、下敷きになりました。更に、ダンプに轢かれ、倒れたクレーンにも潰されました。」
マジか。だいぶ酷そうだぞ?
「はい。原形は留めませんでした。あれは遺体というより、残骸。血溜まりと肉片ですね。」
はぁー。そうかぁー。肉片かぁー。身元照会やら掃除やら、大変そうだなぁ。何だか申し訳ない。
すまぬ警察の皆さん。どうせもう、身寄りは無いから、テキトーに処理しといて下さい……。
で、まぁ、それはそれとして、結論。
死んだ、と。
そういう事ですか。ふーん。なるほどなるほど。
と、すると?
ここはあの世的なところなんだろうか?
「……あなた、動じませんね。
普通、死んだと聞かされたら、焦ったりすると思うのですが……。」
そりゃまぁ……
おお、勇者よ。死んでしまうとは、情けない。
って復活の儀式があるワケでもなし。
むしろ、苦しむ間も無く死ねて、ラッキーてなもんですよ。
別に誉められた人生でもなし。未練も、まぁ特には無いし。
「そうですか。まあいいでしょう。」
女神は、少し呆れたような、残念そうな、なんとも言えない複雑な表情をした。
「この場所についてですが。ここは、あなた方の考えるあの世とは、少し違います。
あなた方風に説明しますと、ここは私の別荘ですね。」
別荘……。殺風景過ぎない?
「そんな事もないんですよ? たまに、あなたのような面白い方を見たりしていますから。」
面白い……。まぁ……いいですけど。
「あなた、今まで色々なお仕事されてましたよね。」
そうですね。マジで見てたんすね。モニターとか、あるんですかね。
「いつも冷遇されたり、努力が認められなかったりしましたよね。手柄も横取りされたり。」
あぁ、そうだったかも。
「よく、リセットしたい、と思ってましたよね。女性との事とかでも。」
……抉るなぁー。思いましたよ。事ある毎に。
てか、見過ぎだろ!
「あなたは、あなたの生きた地球において、正しく評価される事はありませんでした。
なぜなら、他人にはあなたの役割や能力が理解出来なかったからです。」
役割……? ですか。そんなものが……あったんだ?
「はい。あなたには、あなたの運気を使って、周りの運気を高める力がありました。
その力は、特に近しい下の世代や、所属する組織に強く働きます。
しかし、代償として、あなた自身の運気、そして、あなたの上の世代の親族の運気は減ります。
ですから、あなたが幸せになれるだけの運気は残らなかったのです。」
なぬっ!
え? 自動でなの? 酷くない?
役割ってか、損な役回りってやつじゃねーか!
ふーむ。
所属組織の運気を上げる、ねぇ……。
……んん?
なんかそれ、座敷わらし的な話だな。
「あ、そうですね。あなたの国にはそのようなお話がありますね。
あなたは、消耗する座敷わらしですね。」
酷い言われようだ。
めちゃくちゃ鞭打つな、この女神様。
死体蹴り甚だしいぜ。
まぁ、そんな役割を勝手に押し付けるんだし、そんなもんかねぇ。
「ちなみに、あなたは、他人から見て、不幸な目に遭う事が多かったと思いますが、自殺は考えませんでしたよね。」
そうですね。自分でわざわざ痛い事したくなかったので。
「あなたの様な増幅者は、自殺出来ない様になっているので、そのような考えに自然となるのです。早々に死なれてしまうと、役目を果たしてもらえませんからね。」
えぇー……。マジかよー……。
オレが自殺を選ばなかったのは、プログラムに操られてた的な話だったのか……。
……酷過ぎないか?
「もう少し詳しくお話しましょうか――」
そう言って、女神様は詳しくオレの人生を振り返らせてくれました。
が!
もうね、それらは過ぎた事ですんでね。
蛇足もいいとこだっての。
女神は、慈愛に満ちた表情で
「本当に、お疲れ様でしたね。」
と、労う。
それが――人間が想像する、慈愛という概念と一致するのかは、甚だ謎ではあるが。
でも――確かに、疲れた。
いや、常に疲れてた。
何というか、多分……ずっと無理しっ放しの人生だった気がする。
ずっと、リセットしたいと思ってた。
普通の人みたいに、生きたかった。
色々辛かったけど、漸く終わったみたいだ……。
しかし、他人にエネルギーを吸われるだけの人生だったとはなぁ……。
会社なんかでは散々、寄生虫だの、給料泥棒だの言われたけど、盗まれてたの、オレだったってか……。
本当にろくでもない人生だったわけだ。
まぁ、息子にエネルギーをたくさん注げたというなら、それは良かったのかな。
いやー。なんにしても、だ。
やっと! 終わった! 終わったぞ! オレはやり切った!
夏休みのラスト一日で宿題を全部終わらせるよりも、ずっとハードな人生をやり切ったんだ!
だから、心の底からこう言おう!
お 疲 れ 様 で し た !
そして、さようなら!!
――[完]――
「……あ!」
いかんいかん。~完~じゃないかもだ。
変なテンションになってたわ。
まだ一つ、重要確認事項……あるな。
「生まれ変わりって、あるんですか?」
Resetなのか、THE ENDなのか。どっちなんだろうか。気になるところだ。
そもそも、ずっと死後の世界否定派だったのに、魂なんてのになってしまっている。
こんなろくでもない人生なんかに、特に未練は無いし、来世にも希望なんてない。
おなかいっぱいってやつだ。
むしろ、終わって欲しいんだが。
まぁ、前世とか覚えて無いって事は、どちらにせよ、おそらくだが記憶は無くなるんだろう。
生まれ変わりがあったとしても、記憶が無くなるなら、別にいいのか……?
気分的には、非常に嫌だけど。
「そうですね……。」
女神は、少し眉をひそめた。
「説明が長くなるので、簡潔にお伝えします。」
はい。お願いします。
「この地球の生物は、分かり易く伝えるなら、運良く生きている、という状態です。」
あぁ、それは思った事あるな。
「ですので、運が完全に枯渇してしまったら、死にます。
あなたも、今回は運気の回復が間に合わず、死んでしまいました。」
そんな感じね。まぁ分かる。
「かつては、地球の生物は、短命でした。特に人類は顕著でしたね。」
みたいですね。
歴史の授業とかで習った事が、合ってるのであれば、ね。
「そこで、ある計画が進められました。
あなたのような、周りの運気を上げる存在の投入です。」
……なるほど。
「そしてそれは、生物、特に人類の寿命を著しく伸ばしました。計画は成功したのです。」
ふむふむ。計画通り! ニヤリってやつですか。
で、なぜ寿命を伸ばさないといけなかったんです?
「はい。それは、魂に蓄積された経験が、我々神のエネルギー源になるからです。
ですので、通常ですと、あなた方の考える生まれ変わりは、ありません。」
なるほど。食われてTHE ENDなのか。
地球の皆は、神の食糧だったと。
社畜の経験もあったけど、そもそも家畜だったのね。
「ですが。
あなたのような存在、増幅者は、再利用されます。」
リサイクルですか。まぁ、環境に配慮してる訳じゃ無さそうだがな。神的にはSDGsかもしれんがな。
「増幅者の場合は、通常通りですと、魂が消えない限界までエネルギーを抽出して、機能だけ残し、受精卵に戻すのですが……」
散々他人に吸われて、死んだら更に神々のエサかぁ……。
「あなたは今回、だいぶ面白く出来上がりました。
ですので、私の――神々の住む世界へ、連れて行こうと思います。」
……え?
「あなたがあちらに行ったらどうするのか、どんな風に生きるのか、見てみたいのです。
ですので、今回限りで、役目から解放します。
実は、数年前から準備を進めていたのです。ですから、今日、首尾よくお会い出来て僥倖でした。
私も、常にこちらに居るわけではないので。」
へー。なるほど。いつも居るわけじゃないんだ。
だから、別荘と。
いやいや、そうじゃない!
決定事項なんですか?!
選択権とかもらえないんすか?!
「ふふ。」
女神は優しげに微笑んだ。
「こちらへいらして。」
なぜか逆らえない。
言われるがまま、吸い寄せられるように女神の眼前に。
「これは、ご褒美です。」
ふわりと胸元へ引き寄せられ、抱きしめられる。
柔らかい。そして、温かい。身体はもう無い筈なのに……。
無い筈の全身の力が、緩く抜けていくような、何かが溶けていくような、いや、何かに溶けて揺蕩うような、不思議な感覚に包まれる。
何だか眠くなってきた……よう……な……。
「私は、ソールフレイヤ。創造の神能を持っています。」
「今、あなたが生前強く望んだ力を創造しています。」
「そして、あなたがその神能を使えるように、身体も新たに神族として創造します。」
夢現――微睡む意識の中――薄らと聞こえる――。
「さあ、いきましょう。」
お読みいただけまして、ありがとうございました!
今回のお話はいかがでしたか?
並行連載作品がある都合上、不定期連載となっている現状です。ぜひページ左上にございますブックマーク機能をご活用ください!
また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!
ご意見ご要望もお待ちしておりますので、お気軽にご感想コメントをいただけますと幸いです!