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1.19話 火神様にお土産貰った!

ただひたすらにお土産に貰った刀を鑑賞している回です('A`)


目の前に並べられた、三振りの刀達。


まさかいきなり貰える事になるとは……。

火神様ってば、太っ腹だなー。ワイルド系マッチョイケメンにマッチした豪快さと気風の良さってか。

いやはや、テンション上がります。じっくり見せて頂きますか。


というわけで!


先ずは、脇差サイズの物に手を伸ばした。

小刀にも近いかというくらい一番短いはずのそれは、意外にもずしりとした感覚があった。


鞘や鍔の意匠も、中々に凝っている。

漆黒(うるしぐろ)の鞘には、流れる花弁の蒔絵が施され、鍔は桜が彫られていた。美術品としても価値がありそうだ。

桜、日本の心ですなぁー。と、思ったが、有名な刀匠の生きた時代には、桜ってあんまりメジャーじゃ無かったはずだよな?

て事は、これはソメイヨシノじゃなくて、山桜とか淡墨桜とかの古い品種なんだろうな。

そう思って見ると、益々ロマンチックですね。


さて、中身の方は……と、鯉口を切り、ゆっくりと刀身を露出させる。


身巾が、太い。そして、厚い。

刀身は、樋が彫られ、反りは浅い。素材が違うという証左なのか、棟や鎬が黄味がかっていて、黄金色に輝いている。だが、刃は白く、その刃文は、互の目尖り。ギザギザしていて攻撃的な雰囲気だ。博物館で見た、三本杉に似ている。華美な鞘と裏腹に、武骨に見える刀身は、鉈の様な印象も受ける。


脇差を抜く、といえば、今際の際かも知れない。

生死の狭間の斬り合いで、相手の刀さえ折ろうという気概が見える。

そんな素敵な脇差だ。



お次は、メインディッシュである所の、打刀にいこうか。


この普通サイズの、いわゆる日本刀。

日本人の男の子……いや、地球の男の子なら、憧れるフォルムである。

少なくとも、腰に指して学校行きたい!とか思うくらいには憧れるだろう。

擦れ違いざまに鞘当されて、喧嘩するんだ。

お前!鞘当てしたな!わざとか!とか言って。

いや、鞘当なんかされたら、これは誰だってキレちゃうよ。長州〇力でもキレちゃうよ。

これまた美しい意匠なんだもの。


数々の曲線が生み出すそれは、炎。炎の蒔絵だ。立ち昇る炎の様な図柄は、力強く、見る者を魅了する。

鍔にも炎の透かし彫りが施されていて、火神への奉納品という感じもありありと伝わってくるが、だからこその拘り具合ともいえよう。

炎がモチーフとはいえ、鞘は漆黒地。朱塗りという安直さでないのも、渋くてGoodだ。


さーて、いよいよ脱ぎ脱ぎタイムですよー。

左手で優しく柄を握り、そっと鞘を右手で包み込む。

ついっと親指を立て、くいっと鯉口を切る。


ゆっくりと顕になるその身は……照れているかの様に、真っ赤に染まっていた。


……訳じゃなく、刀身が赤かった。


脇差とは違う素材なんだろうかね。

血で染まってるとかは……まぁ、無いか。血ならこんな色じゃない。


刀身、特に棟や鎬なんかは、かなり赤味が強い。

が、脇差同様、刃文の部分は模様が分かる程度の色合いで、鋒は匂い深く、大きく尖り乱れているが、互の目が基本の様だ。

ハバキ近くは、箱乱の様になっていて、脇差よりも複雑な模様をしている。

反りは浅めだが、脇差の作風とは明らかに違う。

が、持ち主に降り掛かる厄災を斬り捨てる!という意志を感じる。

そんな素敵な刀だ。


最後に、野太刀。大太刀ともいうのかな。


明らかに腰に差すタイプでは無い。背負って持ち歩くタイプだな。

存在自体が武骨にも程がある武器だ。持ち上げると、重量もかなりある。が、柄が長い。多分、重量バランスは考えられているだろう。


だが、意匠のコンセプトは、武骨さどころか、最早風流だ。雪、月。そして、湖面に浮かぶ花。

先程迄の二刀より、碧味掛かった鞘には、螺鈿で細かく雪が表現され、空に浮かぶ雲から金色の月が覗き、湖面に浮かぶ花を照らす。


静寂さに包まれた、夜。肌を刺す寒さと、それを慰めるかのような、美しい風景。厳しい自然すら楽しむという心粋には、頭を垂れるしかないですな。


さて、いよいよその風流に包まれた中身を拝見させてもらいましょうか!


このオレの小さい身体には、背丈よりあるかという野太刀。横たえて、鯉口を切る。


顕になった刀身は――ブルーだ。目の覚めるような空色をしていた。


ていうか、ガラスか氷かという感じで、透明がかっている。

これ、金属なのか?


鞘から抜き去ると、思ってたより、かなり軽い。重かったのは、鞘だったらしい。

こんな軽いなら、ガラスでもないわな。強度的にどうなんだろうな。まぁ、それなりに使えるって話だから、大丈夫なんだろう。


この刀に関しては、刃文も判然としない。というより、刃先はより透明で、向う側が透けて見える。よく見ないと空気との境目が分からないレベルだ。

とはいえ、棟や地鉄の蒼が濃い部分からのグラデーション的に、湾れ刃っぽい感じはする。


反りが深いのも、重ねが薄いのも、斬り裂く事に重きを置いたんだろう。

……しかし、刃先が透明で分かりにくいから、うっかり手を切りそうだな。気を付けよう。

だが、この軽さ、凄く振りやすそうだ。


立ち塞がる邪魔者は、縦横無尽に一刀両断だぜ!といった強気な姿勢が見える。

そんな素敵な太刀だ。


しかし、こう来たかー。透明っぽい刀とはなぁ。これはこれで、凄くカッコいいなー。

黄金色の脇差、朱金の打刀といい、実際の日本刀とはずいぶん違うけど、素晴らしい品々だな。まさに神の御業といったところだなー。

いやー。いい物貰ったな!


「火神殿!」


「おお、正気に戻ったか。恍惚の表情で涎を垂らしておったからな、どうかしてしまったかと思ったぞ。」


「あ……、マジすか。すんません。あまりにも素晴らしい品々だったんで。」


やっべぇ。超恥ずい。いや、マジで夢中になってたらしい。人前……というか、神様の前で。気を付けよう……。


「かっはっはー!気に入ったならば、何よりである!」


「ちなみに、銘はあるんですか?刀匠の名とか。」


「あー、銘ならばお主が好きに付けたら良い。神力を込めてな。」


火神は、イタズラっぽく、口の端を持ち上げた。ニタリとした感じの、不敵な笑みだ。


「お主が神力を込めれば、神族にも通用する物になるであろうよ。」


ほほう……。なるほど。武器にも名を与えたら神力を持たせる事が出来るのか。

神族を相手にする予定は無いし、剣術なんか出来ないし、勿論三刀流も無理だけど、せっかくの品々だ。名付けて愛でるのもいいかもな。

うん。ちょっと考えてみるかー。


ありがとうございました。

またよろしくお願いします。

よろしければ、コメントやアドバイスなど頂ければ幸いです。

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