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1.17話 火の山

方言は、何となく雰囲気で考えているので、ちょっとおかしいかも知れません。ご了承下さい。

 

 フウカの後を追い、石だらけの坂を登る。


 草履っぽい靴は、意外と丈夫なのか、足の裏は痛くないし、滑らない。思ってたより高性能らしい。


 もしかして、この腰布も凄くいいものだったりして。

 見た目はタダの布だけど。一応は神族の品物って感じなんだろうかね?見た目はタダの草履と布なんだけどさ!


 坂を登り切り、振り返ると、非常に見晴らしがよかった。転移石のある場所は、どうやら山の中腹といった位置らしい。


 岩山は、目測でかなり大きそうだ。……富士山くらいあるかも。

 ただ、見下ろした風景……平野部というか、裾野というか……この世界、かなりヤバい景色が広がってる。

 ちょっとした地獄絵図というか……。


 そこら中に広がる、マグマらしき海。そこから時折立ち昇る炎の柱。その炎は、まるで生き物の様に捻れて躍る。腕の良いサーファーなら喜びそうな、中々の荒れ具合だ。ま、普通の海ならだけど。あんなとこに喜んで入る奴はいねぇ。いたら自殺志願者だな。


 何にせよ、こんな景色は、見た事が無い。が、感動より、恐怖を覚えるぞ……。あんな所には、ちょっと近寄れん。オレは自殺志願者じゃないからな。


「珍しいかえ?」


 振り返り立ち止まって、眼下の風景に戦慄していると、いつの間にかフウカが覗き込む様な仕草をして、話しかけてきた。


「ああ、うん。ちょっとびっくりする風景だった。」


「ここは火の世界の一角であるからの。」


「あー、獣族の世界じゃないんだ?」


「うむ。火の神が創った世界と云われておるぞえ。」


 ふーん。まぁ、見た感じそんな気がするな。火だらけだしな。納得。


 しかけたところで……


 ――ゴゴゴゴゴ


 と、地鳴りのような音と振動が……


 そう思ったのも束の間。


 ――ゴボォ!


 と、炎の柱……というか、溶岩らしきものが、荒れた火の海から激しく立ち昇って、ものすごい速度で凄まじい熱気を携えながら、渦を巻きつつ――眼前に迫って来ていた。


 え。嘘だろ……これ、死……


「呆けておると、危ないえ」


 前方には、オレを丸ごと焼き尽くさんかというとめどない熱気。背後からフウカの声。そして、一陣の冷たい風が吹き抜けていった。


 ――パキパキパキ……パリーン!!


 それは次第に空気までをも凍りつかすような、凄まじい冷気になっていった。

 眼前まで迫って来ていた溶岩の渦は一瞬でその姿を変え、少しグロテスクなオブジェになっていた。


「さ、参ろうかえ。」


 え、いやいや……あっさりし過ぎでしょ……。

 ちょっと地形変わってるじゃないか。

 これ、オレの"命名"で得た力なのか……。


 しばし茫然としてしまったが、気を取り直してフウカの後を追った。


 ――


「おぉ……。」


 岩が剥き出しの茶褐色をした山の中程。転移石のクレーター?から500mといった所だろうか。ぽっかりと、横穴がある。

 それは、神泉の泉の洞窟の様な、自然に出来た感じの裂け目という感じでは無く、しっかりと石組みがしてある。入口の両サイドには、強そうで人相のあまり良くない石像があった。身体は中々筋骨隆々といったマッチョマン風。

 大きさは2mくらいだろうか。手の部分に、槍の様な棒状の何かが握らされている造りになっていて、先端は、何故か燃えている。どうなってんだろ……。


「お?珍しいやんけ。客か?」


 入口で圧倒されていたら、中からひょこっと……毛皮っぽい服を着て、変な帽子を被った、小人?が出てきた。

 背丈は120cmくらいだろうか。


 尖った耳。鋭い鷲鼻。裂けたかのように大きな口からは、牙らしき犬歯が覗く。周りの岩よりも少し暗い茶褐色の肌をして、それなりに筋肉質だ。

 ゲーム的な感覚だと、ゴブリンに近いだろうか。いや、ゴブリンは、もっとヒョロいイメージだな。色も……なんかイメージと違うし。


 そいつが、ギョロっとした目で訝しげに見ていた。

 門番的な感じだろうか。


「火神様はおわすかえ。」


 落ち着いた様子でフウカが尋ねる。


「ん?あんた、神狐かいな。何やあったんか?そっちの、童は……貢モンかいな?」


「いや、オレは……見学というか。一応神族なんだけどさ。」


「ほーん。まぁ、よう分からんけど。火神様な、ワイら土のモンはあんま会えへんからな、よう分からんわ。ほんでも帰ったっちゅう話は聞いてへんでな。中で火のモンにでも聞いたらええんちゃうか?多分おらはるやろ。」


「うむ。では、通してもらうぞえ。」


「あいよ」


 フウカは終始慣れた様子だった。


 ――


 洞窟の中は、熱気が凄かった。

 外も暑かったが、中はそれ以上だ。


 所々壁が燃えていて、火の光で暗くはないのだ。

 そして、リズミカルな金属音が、奥の方から小さく(あられ)のように響いてくる。それがこの熱気を生む原因の一助を担っていると見た。

 ……あるな、鍛冶屋。


 洞窟は、入口から数メートルくらいはそんなに広くない――トンネルといった様相だったが、すぐにぽっかりと拓けた空間があった。

 そこから各方面へ、また穴が続いている。


 その広場は、一つの村くらいのサイズ感があり、それなりの喧騒に包まれていた。


 先程の門番の様な種族やら、二足歩行の猫やら、背の低いズングリした体型の髭モジャやらが、各々で何かしらしている。


 ズングリした髭モジャは、ドワーフってやつかな。そうであれば、わりとイメージ通りなんだが……。なんか得体の知れないものを飲みながら、騒いでる。


 草っぽい物を二足歩行の猫が、育ててるのだろうか?なんかシュールだな。誰かに恩返しでもするのかしら。


 よく見ると、神殿で見たような光る玉が結構いる。

 色が、ちょっと赤っぽい。


「フウカ先生」


「なんぞえ。先生ではないが。」


 先生と言われて気に食わなかったのか、フウカは眉根を少し寄せた。何故だ。色々教えてくれてるんだから、先生でいいじゃないか。あと、多分……オレよりだいぶ歳上だよね?言わないけどさ!


「ちょっと、この辺りに居る種族、教えてくれないかな?」


「ああ、そうかえ。そなた、やはり知らぬかえ。」


 やれやれだぜ、という台詞が聞こえてきそうな表情をしないで下さい……。

 どうやらこの世界の母は、そういう部分は放任主義のようでして。

 てか、いきなり旅立たされたというか……?空にいましたからねー。

 多分、神スマホで撮って送れば、教えてくれるんだろうけどさ……。


「門番をしておったのは、土の民、ノームぞえ。

 あ奴等がこの穴を掘ったといわれておるぞえ。」


「ノーム……。」


 土の精霊みたいなヤツだっけ?

 んー。実物は、なんというか、精霊って感じでは無いな。肉感が凄かった。あの筋肉で、穴を掘るのな。最早、土方やないですか。


「そこで火酒をあおっておるのが、火の民、ドワーフぞえ。」


 おお、合ってた。ドワーフ。ファンタジーでお馴染みのアレだな。飛空挺とか造ってたりするかな?眠くなる呪文みたいな挨拶するのかしら。


「鍛冶を得手とする者が多いぞえ。ノームが素材を調達し、ドワーフが加工をしておるという事ぞえ。火神様の成した事ぞえ。」


「なるほど。」


 なんか、普通だな。普通の街っぽい話だな。ノームが使うツルハシとかスコップも、ドワーフが作るとか、そんな話だろ?ちゃんと機能した街って感じだ。


「その、畑におる猫精も、火神様が集められたそうぞえ。この地の暑さに耐え能いつつ、植物に長けた者達ぞえ。」


「へー。暑さに強いのか、猫。寒さに弱そうなイメージはあったけど……。」


 食料担当も居ましたね。まぁ、植物ってなら、食料だけでは無いかも知れんが。薬草的なのもありそうだよな。


「あ、そうそう。あの光る玉は何?」


「ああ、あれはフェアリーぞえ。火の力を持ったものであるな。赤いであろ?」


「フェアリー……。色で見分ける感じなのね。」


 ミエリッキとか呼ばれてたあの神殿にいたアレは、フェアリーだったんだな。何の種類なんかね?LEDみたいな色してたが……。

 てか、フェアリーって、人型で虫羽ってイメージなんだが、光ってて形があんまり分からんな。握った感触は柔らかい感じだったから、外骨格タイプではなさそうだ。


 まぁ、何にせよ、不思議な世界だな。街は普通に機能してるのに。不思議種族だらけで、前世的感覚では、神話って感じだ。あぁ、そういや、神の居る世界だっけ。


「うん、とりあえず種族は分かった。ありがとう。

 で、鍛冶屋はどこかな?」


「うむ。鍛冶の品を所望するのであれば、火神様の御許しが要るぞえ。鍛冶の品は、全て火神様への献上品であるからの。」


「そうなんだ?売り物とかそういう事じゃないんだ?」


「売り物?とは、なんぞえな?」


 おっと?まさか……売買の概念が無いのか?

 だから、オレ……無一文で放り出されたのか。


「んーと、売り買い、ってのは……

 物や奉仕を対価と交換する事かな。」


「ふむ?そうかえ。」


 フウカは、分かったような分からんような、微妙な反応だった。すまん。あんまり説明上手くないかも。


「売り物、は良く分からぬが、火神様にお伺いに参ろうかえ。」


 やっぱり分からんかったか。すんません。

 そんなこんなで、フウカの案内にて火神のもとへと向かうことになった。


ありがとうございました。

またよろしくお願いします。

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