目指せ水晶谷!
「よし、出来たっと。」
緑っぽい竜族を拘束してもらいつつ、作業を進めていたが、無事設置完了である。
「……グオオオ……グオオオ……」
竜族を見ればまだまだ夢の中の様子だった。
ふむ。隙だらけだな!
と、いうわけで。
スッと竜族に触れ、神力を流して……映像処理。
そしてリセット!
光に包まれた竜族さんは、あら不思議。ものすごーくデッカかったその姿はどこへやら。
そこに残されたのは卵である。
「えぇぇぇぇぇ?! レイリィきゅん? ナニソレ……?」
それを見ていたフィーネが驚きの声を上げていた。そういえばコイツに見せたことなかったっけか。
落ち着いて神能使えるような隙だらけ状態だったら、竜族にもちゃんと通じるらしいってのが分かったのも僥倖だぜ。マトモにやり合うと大変だしな、竜族……。
「んでさ、みんな。これ、設置したやつだけどさ。」
「ふむ。転移石に似ておるえの。」
「お、フウカ。さすが。察しのよろしいことで。」
フウカにはお見通しだったようだ。これも母神様作、簡易転移石だぜ!
「ちょちょちょちょっとぉ~~~?! レイリィきゅ~~~ん?! ワタシぃ~聞いてるんだけど~~~ん?!」
「繋いである場所は、エルヴァルドの創造神殿の近くだからさ。道も一本だし、迷わないと思うから、もしなんかヤバいときは各自迷わず帰還すること。神スマホの使い方は……まぁ、わからんなら帰還した後にでも、母神様に聞いてくれてもいいや。はぐれた時に使うと安否が分かって非常によろしいのだよ。」
「うむ。」 「はい。」 「はーい。」 「はいニャ。」
うんうん。みんなちゃんと小声でえらいねぇ。
「ねぇえ~~~ん? レイリィきゅ~~んてばぁ~~ん!」
うるせえ。焼鳥め。小声という技術を習得してから喋れや。
「まぁ、そんなわけで。この卵はどっか適当な所でリリースするとして……水晶谷とやらを探さないとだ。コソコソいくぞ。忍者ごっこだなー。」
「ニンジャ? とはなんぞえ。」
フウカが首を傾げていた。つられてか、ルビィも首を傾げていた。そしてさらにウィトまでつられ……なくてもいいんだよ!
「忍者は、この世界にはいないのか。まぁ、いないかもなぁー。そうだなー。隠密行動が得意な感じの存在って感じだな。アマネみたいなさ。」
「ほう……。アマネ殿はニンジャなのかえ。」
いや? 多分違うぞ? まぁ、可能性は捨てきれない部分もなくはないが……
「いえ……私は、ご主人様の忠実なる僕にございます。ニンジャではございません。」
アマネはキリッとしてそんな事を言っていた。まぁ、この感じは前と変わってない……? かな?
「まぁ、とにかくコソコソと、見つからないように移動するのだ。実は結構みんな得意だろ?」
フウカも狐。ルビィは狼。ウィトは虎なのだ。得意なはずだろ、コソ狩り。まぁ、地球の動物のイメージだけどさ。
「ちょっと~~~ん? コッソリだなんてそぉんな……」
はぁ……。
「アマネ。」 「はい。」
アマネの返事がオレの耳に届く前には、既に音も無くフィーネの喉元に添えられていた黒刀の切っ先。
「……ひょっ!?」
びくぅっと身体を跳ねさせるフィーネ。叫びそうだったけど、我慢したみたいだ。それは正解だと思うぞ。アマネは容赦ないんだ。刎ねるよ、首を。
まぁ、たとえ首が落ちても、短時間ならたぶん戻せるんだけどさ。神力めっちゃ使うからやりたくないんだよなー。だから大人しくしてくんないかなー?
という気持ちを込めて、じとーっとフィーネを見ていると、ふぁーっと羽毛が逆立ってきていた。
へー。こうなるのかぁ。
そういえば、羽毛布団とか、ダウンジャケットとかって鳥の羽だよなぁ。でもあれ、ふわふわの部分使うんだよなぁ。こんな派手派手の硬そうな風切り羽じゃなくってさ……
「コッソリ、わかったわ~~。ね? ほら、ソレ……下ろしてちょうだ~い?」
なんだよ。それなりに小声出るじゃないか。出来るんなら最初からやってくれよなー。全くよー。
アマネにこくりと頷くと、スッと刀を仕舞った。
さて、そんなこんなで探索であるな!
この、最初の拠点として設定した場所は、少し切り立った小山の中腹といった地形で、向こう側はさっぱり見えない。
オレたちは、こそこそと小山を登ると、山頂から向こう側を観察した。
まぁ、来るときにも思ったんだが、緑に青に白にと、普通に絶景、美しい景色である。
ただまぁ、今はボーっと眺めているわけにもいかないのだ。白の一族とやらを探すのが目的だしな。
谷って言うくらいだし、山間なんだろうけど……今いる場所を含めても、山っぽい地形はたくさんあるんだなぁ、これが。
ただ、山が重なっているようなところは……あまり多くはないようだな。
そういえば、フィーネは何度も来てんだよな、この島。見た事とかないんだろうか?
「なぁ、フィーネ。水晶谷……というか、水晶たくさんあるような場所って知らないか?」
「あらぁ~~ん? レイリィきゅんったらぁ~~ん。結局はワ・タ・シ・に頼っちゃうわけぇ~ん? ぐふふぅ~~」
いや、こわっ!? 何こいつ?!
アレかなぁ……何度も何度も死に戻って、壊れてしまったんだろうかなぁ……。だとすれば、悲しきバケモノだな……。
もしそうなら同情の余地も……なくはないのかもしれなくもないのかもしれないなぁ……。知らんけど。
「あらぁん? そ~~んなにじ~~っと見ちゃってぇ~~ん……欲しくなっちゃったのぉ~~……ギョピュッ!?」
あーあ。調子に乗るからぁ。音も無く近づいたルビィに首を齧られてしまったようだな。
ルビィ、鳥狩るって言ってたしなぁ。好きなのかもしれんなぁ。
「……カッ! ……カペッ?! ……キュッ!」
もはや声も出ないらしいな。まぁ、そらそうか。
「ルビィ。そろそろ離してやりなー。」
「はーい。」
うむ! おりこうさん!
ルビィをモフモフと撫でていると、フィーネが息を吹き返したらしい。
「水晶かどうかは知らないけどねぇ~。通るとキラキラ光るような場所はあったと思うわぁ~~ん。行きたい? 知りたぁい?」
うっざ。いやだから、最初っから行きたいんだって話してたろ。何を聞いてたんだっての。いや、何も聞いてなかったのか……? それも悲しきバケモノのサガなのか……?
と、ジトーっと見ていたら隣からチキッという音が聞こえた。
途端にシャキッとするフィーネ。
「つ、つれてってあげるわ~~ん。ここからだと飛ばないと無理よ~~ん? んふ」
決めポーズは要らん。
しっかし飛ぶ、かぁ……。コイツ、派手すぎて目立つんよな。
「ふむ。レイ殿や。こなたが何とかするぞえ。」
ふぇ? オレまだ何にも言ってないけど?! 心読める系なの?!
と、フウカを見たら、まぁもうほんと、いい笑顔でしたとさ。
だからオレをどこに連れてくつもりなんだってばよ!
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