第1回選択希望の親
僕らは、『恋愛』を始めるどころか、『恋愛』や『敵』『スポーツ』などという言葉の意味すら教えてもらえないまま、幼くして命を落とした。だから、このサーラという女は、そんな幼子たちに新たな人生を歩ませたい、と思って、親をドラフト会議で選ばせるなどということを思い付いたのだろう。
ドラフト会議が始まった。
サーラ「第1回選択希望の親。」
サーラは淡々と口にする。まさにドラフト会議だ。
あれ?気がつくと、ドラフト会議という言葉を、そして言葉の意味を、いつの間にか認識しているではないか。
サーラ「衆議院議員、ロイド・ジョージとその妻、エレン。」
この人物が一番人気か。さっそくアランも、この人物に指名した。
ロイド・ジョージは、いろんな超党派議員連盟の会長なども勤める大物議員であるようだ。
指名の結果やいかに。ほかにも指名対象となる候補者や、くじ引き指名など、まだまだあるようだか、今回はここまで。
次の人生では幸せな人生が待っていることを願いたい。
待ち時間には、子どもたちに本を読ませているようだ。一番人気があるのは漫画かと思いきゃ、なんと小説であるようだ。
アランは、小松左京の『日本沈没』や、架空戦記の『帝国陸海軍、中東の地でナチスと、かく戦えり』などといった本に興味を示したようだ。
すると、えりながアランの読んでいる本を、のぞき見した。
えりな「小松左京の『日本沈没』だって。
アラン君、そんな難しい本を読んでいるんだ。」
アラン「うちじゃ、本すら読ませてもらえなかったんだ。」
えりな「うちは、少しは読ませてもらっていたかな。だけど、私はスマホとかの方が興味があったかな。」
えりなを見て、不思議な感情に襲われるアラン。これが『恋愛』という感情なのか…?
えりな「あの酔っぱらい運転のクソ野郎が!この先、花も実もある人生が待っていたのに。」
えりなの話を聞いて、アランもまた怒りが再燃した。
えりなの場合は赤の他人だが、アランの場合は実の親、といっても父親は再婚相手だったのだが、実の親に殺されるという異常性。
虐待という言葉も無くなってしまえ、そんな中で、アランはなぜか、小松左京の『日本沈没』を手にとった。
えりな「アラン君って、もしかして世界を動かすような、そんな大人物とかになりたいの?
だから、今ある世界を一度ぶっ壊して世界を創り直したいとか、そんなこと考えているんでしょ。」
えりなは顔は可愛いが、言ってることは結構過激な、ぶっ飛んだ発言をすることがある。
だから俺のため、いや、できればあの2人の子たち、ゆいと、こころにも幸せな人生を歩ませたい、だから俺はロイド・ジョージの養子になる、と心に決めたアランだった。