最高は世襲議員、最悪は?
彼女は他の子どもたちにもいろんな事情を聞いていた。すると、大人たちに対する不信感を口にする子どもたちが多かった。
大人が運転する車の事故に子どもが巻き込まれる、いじめられて自殺をしても、学校の大人たちは何もしてくれないどころか、むしろそれを隠蔽しようと画策する。そちらの方に熱心になる。
そんな大人たちばかりであるならば、子どもたちはそんな大人たちに反乱を起こして、これを殲滅するべきだと主張する者もいた。
戦争でも仕掛けて、悪い大人を皆殺しにして、子どもだけの国をつくろうかと、そいつは言っていた。
またある子どもは、今の大人たちは勤勉さが足りないので、ただ年をとっただけの子どもだ、自分たちの躾もなっていないのだから、子どもに対してまともな躾などできるわけがない、と大人顔負けの主張をする者もいた。
アランはドラフト会議の会場の席に一人座っていた。他には誰もいない。
トイレに行きたくなったアラン。
「すみません、トイレに行っていいですか。」
アランはトイレに行く。
トイレから戻ってくると、3人の女の子たちがいた。もしかしてドラフト会議の参加者なのだろうか?
1人は、『えりな』といった。あと2人は、『ゆい』と、『こころ』といった。
えりな「最高は、国会議員、世襲議員とかがいいわね。この国で一番お金と権力があって、何不自由無く暮らせると思うから。」
えりなは言った。
アラン「僕は、虐待さえしなければ、別にどんな身分でもいい。どんな身分でも、虐待する親だけは嫌だ。」
えりなは、ガードレールも無い通学路で、飲酒運転の暴走車に跳ねられ、命を落とした。
ゆいは、わずか5歳で親の虐待で殺され、こころも、10歳で親の虐待で、冷水シャワーを浴びせられ、殺された。性的虐待も受けていたという。
それからまもなく、子どもたちが50人ほど集まってきた。みんな、アランたちのように何らかの事情を抱えた子どもたちだった。
「それでは、皆さん集まったようですね。
ドラフト会議を始めます。ちなみに私の名前は、サーラといいます。」
サーラと名乗った女は、ドラフト会議のルール説明を始めた。
「ドラフト会議では、皆さんが親にしたい人を指名するのです。競合した場合は、くじ引きを行い、当たりくじを引いたお子さんが、晴れて養子縁組みを行うことができます。」
はずれの場合は2回目の指名を行う。なお、その後もはずれが続いたり、指名を行わずに棄権した場合は、児童養護施設に送られるというルールのようだ。