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即位30年記念式典 6日目 ~パレード②~

【 前回までのあらすじ 】

パレードでの王女暗殺計画が進む。ラースに暗殺計画を説明するエドヴァルド。今回は、王女が乗った馬車を『火魔術』を装って爆発させる計画。準備は順調に進むが、うまく「失敗」することができるのか。

「お前が、なんで俺と同じ馬車に乗ることになってんだよ。」

 ギオルグ王子は、イライラとした感情を隠さず、爪を噛んだ。


「仕方ないだろ?兄さん。到着が遅れてしまって馬車が用意できない、ってんだから。」

「だったら、最初の予定通り乗らなきゃいいだろ?」

「つれないなぁ、せっかく兄さんと久しぶりに語り合おうと思ったのに。」

 ユリウス王子の明るい声に、フンッとギオルグ王子は鼻を鳴らし、馬車の外を向いた。


 馬車が走り出す。

 先頭はフレデリク王、次にエミーリエ王女、そして、第2・第3王子の乗るこの馬車の順番だ。エミーリエ王女の馬車が北門を出たところで、わぁと歓声が上がった。


「さすが、姉貴は人気があるなぁ。」

 ユリウス王子も、沿道にいる見物客に手を振り、愛想を振りまいていた。


「ほら、兄さんも、そんな顔してないで、手を振ってあげなよ。」

「・・・」

「兄さんは、恥ずかしがり屋だなぁ。」

「・・・」


 しばらく笑顔を振りまくユリウス王子、しかめっ面で外を睨むギオルグ王子、という不釣り合いな光景が続いた。


 まもなく広場につくというところで、先頭にいたフレデリク王の馬車が、広場をくるりと回って、元来た道を戻り始めた。


「おっ、親父はお役御免か。初日に『休め』って言っといたんだけど、ここまでは出るとか言ったんだろ?きっと。相変わらず頑固だなぁ、親父は。」

「、、、そもそも、お前、今朝までどこ行ってたんだよ、、、」

 ギオルグ王子が、ボソッと独り言のように尋ねた。いや、本当に独り言だったのかもしれない。ユリウス王子は、しばし「うーん」と考える素振りをし、イタズラでも思いついたように「ちょっと、野暮用」と答えた。


「、、、野暮用で、出航するバカがどこにいるんだよ、、、」

「まぁ、俺にも色々あるさ。兄さんにもあるようにね。」

 ギオルグ王子は、もう会話を続けたくないとでも言うかのように、爪を噛み始めた。


 馬車は、中央広場を抜け、南門に向かって走り始めた。


◇◇◇◇◇


 広場の方から聞こえる歓声が徐々に大きくなってくる。パレードの馬車が近づいてきている。オレも段々と緊張してきた。沿道の見物客も多くなっている。衛兵の仕事だけでも結構大変だ。見るまいと思っていても、ついチラチラと仕掛けた爆薬の方を見てしまう。大丈夫だよな?動くよな?どういう仕組なのか知らないんだけど、、、


 王女の馬車が近づいてきた。

 王女は、優雅に、気品あふれる姿で、周りに手を振っていた。

 あぁ綺麗だなぁ、、、本当に。

 いかん、もうすぐ馬車が、爆薬に近づく。馬車が爆薬までの導火線のように見えてきた。


 馬車を護衛する近衛兵が通り過ぎる。

 誰も爆薬は踏んでいない。


 馬の頭が目の前を過ぎる。

 馬は爆薬を踏まなかった。


 御者が目の前。

 仕掛けと車輪は腕一本分の差。


 車輪。

 爆薬。



 、、、通り過ぎる、、、


 あれ?爆発、、、しない?

 ドユコト?

 ま、まさかの不発?いや、それはまずい。

 それじゃ『惜しい』じゃなくて『サボった』になるだろう!


 ガラガラと王女を乗せた馬車は、目の前を通り過ぎていく。まずい、まずい、どうする?


 ヒヒィーン!!!


 と、その時、列の後方から、馬のけたたましい啼き声がこだました。

 振り向くと、王子たちを乗せた馬車が、こちらに向かって暴走してきた。見物客が我先にと逃げ出している。馬車は目の前の守備兵を蹴散らし、猛スピードでこちらに向かってくる。


 第2王子は?いや、それより王女様は?


 王女を乗せた馬車は、啼き声を聞いて馬が驚き、少し先で停止していた。まずい、このままだと二つの馬車がぶつかってしまう。


 思わず、王女様を乗せた馬車に駆け寄る。

 暴走する馬たちは、王女の馬車にぶつかる寸前、避けるように沿道沿いに進行方向を変えた。王子たちを乗せた馬車は、少しスピードを落としたが、横向きで、ガリガリと音を立て、王女の馬車にぶつかった。


 衝撃。

 王女が馬車から振り落とされる。

 空中に飛び出す王女。

 目の前に王女の姿。

 王女を受け止める。

 石畳にたたきつけられる前に。

 良かった、、、


 目の前には、ぶつかった馬車同士が混ざり合うように止まっている。第2王子と第3王子は見当たらない。もう移動したのか?


「、、、あの、、、」

 透き通るような声が腕の中から聞こえてきた。見ると、目の前にエミーリエ王女の顔があった。突然の事故に驚かれたのであろう、頬を赤らめていらっしゃる。う、美しい。


「?!!えっ、あっ!も、もうしわけ、、」

 そうじゃない!と慌てて王女様を下ろし、膝をついて頭を垂れた。


(わたくし)めのようなものが、、申し訳も、、」

「助けてくれたのですね、、名はなんと?」

 何をどう言っていいのか分からず、しどろもどろになっているオレに、王女様は優しく問いかけてきてくれた。


「は、はい、、エドヴァルドと申します。」

「エドヴァルドとやら、後で褒美をとらす。王宮まで来るといい。」

「は、ありがたき、、、恐悦至極にございます。」

 オレは下げたままの頭を、地面につけるように更に下げた。


 近衛兵が「王女様、こちらへ」と促す声が聞こえた。

 王女が立ち去るのを感じて、頭を上げた。

 あぁ王女様が、あの王女様が、、、給仕として近づいた時とは違う、、王女様のぬくもりがまだ手に感じられる、、、


「おい!こっちだ!怪我人がいるぞ!」

 少し離れた場所から聞こえた声で我に返った。そうだ、事故があったのだ。大事故が。衛兵としての仕事をせねば。オレは力強く踏み込み、怪我人がいるであろう場所に走り出した。


 カチリ!


 足元で何か小さく音がした。

 ん?ここは、、、この場所は!!


 ゴンっという鈍い音と衝撃。

 それを最後にオレは気を失った。

【お知らせ】

本日も筋肉の出演はございませんでした。

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