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第十二話 ゴーレムの恩返し

鉄格子に腹部を打ち、朝昼に食べたものを吐き出す寸前だったがこんな女子の姿で吐くわけにはいかない。我は腹部を力ませ立ち上がる。


「逃げて! ノーネさん! ゴーレムソルジャーよ!」


鉄格子越しから叫ぶシンフォニーの言葉に我は疑問を持つ。ゴーレムソルジャーとはなんだ。まさか我を吹き飛ばした弱者の事であろうか。


「オマエ、ナンデシンデナイ?」


ゴーレムの特徴である片言を使い、手にはハンマーを持った鉄の鎧で身を包んでいるゴーレムがシンフォニーの鉄格子前から我を見ている。どうやらあれがゴーレムソルジャーらしい。


「ゴーレムのくせに人間の装備を着て真似事とはな。貴様もマースター島に送り返してやる」

「いえ、彼はマースター島出身のゴーレムではなく、ログフ島のゴーレムですね!」


カッコよく敵に向かって渾身の台詞を吐けた! しかしチャチャが入った……。

リリアが透明のまま話しかけてきたのだ。


「リリア。そんな事はどうでも良いのだ」

「よくありません。魔王様だって第一魔界じゃなくて第十二魔界の魔族と言われたら怒りますよね?」

「え、あ? そ、そうだな。我があんな下級の十二級魔族と同じと思われては溜まらん」

「そういう事です」

「え? ゴーレムって出身地で格が違うの我初耳なんだけど……ってうおっ!?」


今度は岩が飛んできた。直撃しても問題は一切無い。なんなら我が演技力で本当に痛がる演技をしてやろう。


「とにかくさっさと倒してください。でも勇者にバレないようにですよ」

「そんなのは簡単だな! あ、天上崩れかけてる! しかもちょうどゴーレムの真上!」


と言いつつ、ヒビも何もない天井を小爆発魔法で破壊する。


「グウウウアアア!? テ、テンジョウガア!」


天井の瓦礫が直撃するゴーレムは鎧を着ている事が仇をなし、瓦礫に挟まれ動けなくなっている。この間にシンフォニーを助けよう。


「シンフォニー! 大丈夫ですか!」

「ええ! 牢屋は半壊したけど私は平気! それにしても運良い! 凄いよ! ノーネさん!」

「あはは、それほどでも……あ、瓦礫の破片で錠前壊れてるから……はい! 開いたよ!」

「ノーネさん! 命の恩人だね!」


牢屋の門を開けシンフォニーがウキウキな様子で割れに抱き着いてきた……ってえ!?


「あ、あああの! シンフォニー!?」

「本当にあなたは不思議ね。こんなに心躍ったのは魔王を倒した時以来だから……最近ね!」


何度も我がシンフォニーの心を躍らせているとは! 素晴らしい!


「いや、一度、殺されて……」

「シンフォニー! 他の皆さんは!?」

「ええ……」


勢いでリリアのチャチャは無視だ。我は今、非常に気分が良い。


「みんなは別の場所に連れていかれちゃったわ」

「なら探しに行こう!」

「マ、マッテクレ」


瓦礫を背に急いで地下から脱出しようと歩き出そうとした瞬間、声を掛けられる。あのゴーレムソルジャーだ。


「な、まだ生きていたのか!?」

「ゴーレムは硬いですからね。止めを刺しますか?」

「ヤ、ヤメロ。オレ、デカセギ。デモ、タスケテクレタラオレイスル」


なるほどゴーレムが出稼ぎをする時代になったのか。そんなことあるか?


「で、出稼ぎ!? なら家族が居るの!?」

「ア、アア」

「助けよう! ね、ノーネさん!」

「え? あ、う、うん。シンフォニーが良ければ」

「当たり前よ! 出稼ぎするなんて偉い! それに彼には家族が居るのよ! ここで死んだらゴーレム一家はどうなるの!?」

「あ、ええ。そうね」


正直、出稼ぎの話は怪しいがシンフォニーが決めた事だ。どうなろうと勇者のせいだからな! それにしてもシンフォニーは家族という言葉に執着を持っている気がする。

シンフォニーと共に瓦礫を退かしていくと、自由の身になると同時にゴーレムソルジャーは兜を脱いで腰を降ろした。


「アリガトウ。オレ、オマエノナカマ、バショシッテル」

「教えてくれないかな?」

「イイゾ。タシカ、オウジョウ、マエノショケイダイ」

「嘘……そんな! みんなを助けなきゃ!」


処刑!? そんな即処刑なんて野蛮すぎないか!? 我の演じた悲劇でももう会えない二人の鉄格子越しの最期の一夜シーンはあったぞ!?


「急いだ方が良いですね! ありがとうございます! ゴーレム!」

「う、うん!」

「待て! 貴様ら! そこを止まれ!」


地下牢にやってきたのは振り切ってきた衛兵だった。急がねばならんのに……! さすがに渡り廊下で使った魔法を使うのは正体がバレてしまうだろう。どうする。シンフォニーも装備を取られているようだし。


「ウゴオオオオオオ!! オマエラ! イケ! オレ、ココマカサレタ!」


な、なんて漢気溢れるゴーレムなんだ! 我は感動してしまった。


「あ、ありがとう! ゴーレムさん!」

「すまない。ゴーレム。生きてまた会えば良い役職に就かせてやる」


小声でそう言うがゴーレムは理解出来ていないのか、いるのか、雄たけびを上げて目の前の道をこじ開けてくれていった。


「ウゴオオオオオオ!」

「ひぃ!? 貴様! うらぎ――ぐはぁ!?」

「ぎゃああ?!」


さすがだ。巨大なハンマーで前に居た衛兵をなぎ倒してくれた! 我の城にはこんなゴーレム部隊が数百は居たはずなんだがなあ! マースター島に帰っちゃったからなぁ!

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