トイレの神 -2-
山を登りきると目の前に端が欠けた鳥居が現れた。
二人共、静かに頭を垂れ中に入る。
境内には至る所に雑草が生えており、横の手水舎は枯れ葉で満たされ、神社の注連縄は端が切れ左側に垂れていた。
「ここまで芝が生い茂っていては、青く見えぬものじゃな」
神社のゆっくりと周り確認するように見渡す。神社自体は既に荒れ果てておりカビや蜘蛛の巣が目立ち獣もいるのか畳や腐り落ちそうな本殿にひどい匂いのするシミが幾つかある。
神社自体はかなり立派だ。これがこのような有様になっている思うと少々心がざわつく
「人から見ていくら荒れ果てていようとも、小さき者にとってはそこは住処じゃ。変な気を起こしてあまり荒らさぬようにな」
釘を刺された。そういうわけではないのだが、これから神様を探す上でこの住処を荒らすことになるし、それをヨシと少し思っている。
「それで良いんですかね?」
「良いも悪いも家賃を取る家主が居ない以上は部外者である我らからは文句は言えんからのう」
「………」
それでも複雑そうな顔をしていたのだろう。
「少し勘違いして居るようじゃから訂正するが。そこの神社の神様は既に退去済みじゃ、人の世と神の世を繋ぐ境界もしっかり閉じられておる。そこは優秀な者に頼んだようじゃな。」
「問題のある方はこっちじゃ」
そう言って、神社の外れにあるトイレを指す。自分もつい薄汚れたトイレを指す。
「トイレ?」
確認は大事だと思う。
「うむ、厠じゃ」
「なんでトイレなんかに神様が……」
背中を強く叩かれ深い溜め息を吐かれる。「なんかとは、なんじゃなんかとは」と言いたげな表情をされた。
「はーやれやれ。八百万ゆえに覚えることが多いとはいえ流石にその言葉は無いぞ?神はどこにでもいると思え。よいな?」
「はい。」
「ま、この神は一度見たら忘れられないから安心するといい。」
「ま!最も見たことはお主もあるから今回はそう言った仕事もしている事を知らんだけかもしれんな」
そう言って、トイレに入っていく
「境界は無し。濃ゆい穢も無し、この時期まで自力で保っておったのは流石と言うかやはりと言うか」
何か納得したように、感心する。
こちらも何か気づくことが無いかよく観察してみる。本当に人一人来ていないのか落書きすら無い。隅っこの方に落ち葉が溜まっており、時折古びた窓から外の森の空気によってカラカラと音を立てる。
ふと気になり、男子トイレの方に言ってみる。水は切れているのか乾燥しきっている。所謂普通のトイレだ。
ただ・・・
「お主も、全てを感じ取れんとは言えなんとなく他の場所と雰囲気が違うのは気づかんか?」
「そうですね、これは普通のトイレですね。」
「ただ、不自然に感じるのはこれだけ人の手が入ってないのに、今も使えそうな所ですかね。使われてないトイレ特有の嫌な匂いや感じがしないです」
「うむ、概ね当たりじゃ。トイレという場所でありながら穢が少ないんじゃ。野生動物すらここを住処としておらん。」
満足したように頷く。こちらもこの辺は共通項として勉強したかいがある。
「御託はここまでじゃ。夜には最低でも麓には降りたい。速く仕事を始めるとしようかのう。」
「はい。」